現場調査の話③-参与観察で何を見る?-
今回のお話は、参与観察で”どのような事象や物事を観察し、記録するのか”についてです。前回は参与観察の概要についてしかお話できなかったので、前回の記事の補足的な位置づけで閲覧していただけると幸いです。
参与観察を実施する上での前提
調査をする上で前提となることがあります。それは、調査者が抱えている問いを明確にしておくことです。調査者は現場に入る前に、人に聞いたり、本や記事を読んだりして、調査をしようとする現場のことを把握すると思います(事前調査)。事前調査を行い、自分の中の問いをしっかり持った上で、現場での参与観察に臨むことが重要です。基本的には"how","why" の形で問いを作ればいいと思います。
下記に問いの例を列挙します。
というのも、事前調査を十分にせずに現場調査を行う場合、「そもそも何を知りたかったのか?」という疑問に苛まれることが往々にしてあります。疑問を抱えたまま調査をしても、現場の実態を掴むことは難しいのではないかと思います。というわけで、現場調査の前には自分なりの問いを必ず持っておきましょう!
参与観察で見るもの、記録するもの
調査初期
調査の初期は、自分の見たもの、聞いたもの全てをありのままに記録を取り、フィールドノーツを作成することをお勧めします。調査の初期段階において、自分の問いは一般的に広く、浅いものであることが多いです。そのため、ありのままに記録し、調査後にフィールドノーツを見直すことで、現場ではどのような事象が多いのか、どのような人々の行動が多いのか、など把握することが可能になります(オープンコーディング)。
※ここではコーディングなど、フィールドノーツを使った分析方法については言及できないため、関心のある方は成書をご一読すると理解が深まると思います。
調査後期
この時期になると、フィールドノーツの分析が進んでいるため、ある程度自分の問いを具体的かつ深いものになっています。
問いが具体的になると、研究設問(リサーチクエスチョン)と呼べるものになっていることが多いです。ここまで来ると、学術的にも意味のある問いに昇華されています。この段階では具体的な問いを明らかにしてくれる対象の行動、現場のマネジメント方法などに焦点を絞った観察をして、フィールドノーツの記録をとると良いです。
(参考)
今回扱っている研究手法は質的研究と呼ばれています。質的研究は仮説形成型の研究であり、現場調査を重ねる度に、"問いから新しい問いへ"渡り歩いて行くようなイメージを持っておくといいと思います。
以上、実際に参与観察で見るもの、記録することを中心に記載させていただきました。この記事が、現場調査をされる誰かのお役に立てたら嬉しいです。
参考文献
1)佐藤郁哉.質的データ分析法-原理・方法・実践-.新曜社.2013
2)佐藤郁哉.フィールドワークの技法-問いを育てる、仮説をきたえる.新曜社.2007
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