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「顧客本位の業務運営に関する原則」のルール移行が俎上に。どこまでが既定路線か?【金融当局主要会合傍聴録】2022/10/24顧客本位タスクフォース

10月24日に金融庁で開かれた「顧客本位タスクフォース」の第2回会合。当日取り上げられた広範な議題のうち、今回はプリンシプルベースとルールベースの組み合わせをめぐる議論に焦点を当てます。

法令化に向け、金融庁側が議論を促す

この日、金融庁の事務局側は、現状では金融機関の行動規範として位置づけられている「顧客本位の業務運営に関する原則」(以下、「原則」)を法令化するとの案について、議論の前進を専門家委員らに促しました。

これに対し、委員側からは法令化に賛同する声が相次ぎ、ルール移行の範囲についても具体論に踏み込んだ意見が上がりました。A委員の発言です。

「(「原則」を)一律的に法令上の義務にすることには反対だが、採択していない業者が多い状況を踏まえると、(「原則」に紐づけられている共通書面である)重要情報シートだけで対応を求めるのが限界があるので、利益相反関連情報の開示など、最低限必要な、ルールになじみやすい事項は法令化を検討していただきたい」

(傍聴メモより)

ほとんど話題になっていませんが、これは当局の業背運営における基本スタンスが変化する前触れとも受け取れる重要な出来事です。ここで「原則」をめぐるこれまでの経緯を簡単に振り返りましょう。

金融庁は近年、「金融処分庁」とも揶揄される高圧的な印象を払拭しようとイメージチェンジに努めてきました。当局のイメチェン戦略の根幹を成すのが、細かな規則(ルール)やペナルティを振りかざして強権的に事業者を律する旧来型の「ルールベースアプローチ」から、おおまかな規範(プリンシプル)のみを示して金融事業者の主体的な自己改善を促す「プリンシプルベースアプローチ」への転換です。

「顧客本位の業務運営に関する原則」は、このプリンシプルアプローチへの転換を象徴する規範として2017年に打ち立てられました。「顧客本位の業務運営」とは、金融事業者が自らの利益を優先することなく、顧客の立場に寄り添って商品やサービスを提供するビジネスの姿勢を意味し、これ自体はプリンシプルでもルールでもない、1つの理念のようなものです。当局は、7つの項目から構成される「原則」を規範として提示することで、この理念をプリンシプルの力で実現し、金融業界に定着させようとしたのです。

「仕組債」を槍玉に

それではなぜ今になって、プリンシプルベース行政の象徴である「原則」の「ルール移行」が俎上にのぼったのでしょうか。

9月に開かれた前回の会合では、「原則」の定着を目指す当局側の取組状況について、事務局担当者が以下のように説明しました。

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