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親父は親父でいて欲しい

親父が老いていく。
ここ数ヶ月で急激に老いた。

様々な不調を抱えながらも、未だに40代くらいの時の自分と比べているのだ。腕がしわしわになってきた、だとか、いつも探し物をする、とか、すぐ疲れちゃう、とか、彼の自分に対する不平不満は枚挙に遑がない。

時々テレビに出てくるようなマッチョ老人になろうとなんて努力のかけらもしてこなかったんだから、体力が落ちたりちょっとした記憶の抜け落ちなんて起きても仕方がない、と娘としては思っている。

だが、本人はいたって大真面目に凹んだり情けなく思ったりしている。

そんな父親を見て、どうしたらいいのかが分からなくなっていた。

そして、去年末。
年末進行、何それ美味しいの?っていう感じで、バタバタとホントに年末までオフライン試写のスケジュールが入っていたので、山梨のねーちゃんとこ遊びに行くーって言って、一人でリュック背負って出かけているはずの親父の事はねーちゃんにお任せしまくっていた。

クライアント試写が終わって、携帯を見たらねーちゃんからの着信、親父からのメール。
何事か?と思えば、どうも違和感があるんだよねーなんて言ってた左腰がとても痛みだし、歩くのに支障が出てきたから、年末年始で病院閉まる前に東京帰ってきた!という話だった。

癌持ちである事を分かっていながら目を背けていた親父。
病気持ちだけど病人にはならない!と言って、好きなものを食べ、好きな事をし、友人たちと遊び、癌告知からの8年、大きな問題もなくやりたいように過ごしてきた。
去年夏に腎臓の数値も悪くなり、もともとの場所とは違う場所にも癌が発生していることがわかり、本当は不本意なんだけどー、というのを顔に出しながらではあるけど、秋に8週間の放射線治療を受けたところだった。

仕事を全部終わらせて、冬の冷たい風が吹く原宿の街を歩きながら本人に急ぎ電話。

痛いんだよー。なんだろーねえ。。。と弱った声を出しながらも、ガンの疼痛が始まったかも?という知識も検索力も想像もしていない様子。
とりあえず明日の朝そっち行くからね!良い子にしてんのよ!と言えば
いつも良い子だ!と偉そうに言う。

老いては子に従え、とは到底思わないうちの親父だ。

でも、ここからはホントにもっともっと急激に早かった。





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