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55.続けるため

夢のような1日から、また通常通りの毎日へ。
毎日のおはよう、おやすみ、そして日中や夜の電話。全てがいつも通り。これが私たちのスタイル。一年経つと習慣になるものだ。

飽きてもないし、慣れてもない。逢えないと恋しい、逢うと愛しい。

穏やかな日々。


彼が美容室に行った日があった。私と同じ美容室で私と同じ担当の人だということは前にもここに記したと思う。

髪を染めたらどうですか?せっかく綺麗な白髪だから色を入れたら素敵だと思う。と美容師さんにずっと言われていた彼。その日、思い切ってカラーをした。
でも本人的にはイマイチだったようで、もうしなくていいかな。と美容室帰りの電話で言っていた。

夜電話が来た時に、ご家族の反応はどうだったか聞いてみた。笑われた。子どもらには前の方がいいと言われたと。奥さんは?と聞いたら、特にコメント無しだったと。


7年ぶりにいきなり髪なんて染めて、なにか怪しまれるかなと私は勝手にビクビクしていたが、笑われたくらいならよかったと安心した。


私が彼のNew hairを見たのは翌日。

髪の色より、かなり短髪になったことに驚いた。

でも髪の色がアッシュグレーでめちゃくちゃ似合っていて、いい色!かっこいい!とすぐに言葉が出た。
髪が短くて、綺麗なくっきり二重がよく見えて、外国人みたいだよ。すごいかっこいい!と絶賛してたら、彼は嬉しそうにしていた。きっとまた白髪に戻すのだろうけど、違った彼が見れて嬉しかった。


その日の夜に、もう一度、「髪の色似合ってた!外国人みたいでカッコよかった!すぐに見せてくれてありがとう。」とLINEをした。彼は外国人は言い過ぎだけどありがとう。と返事をしてきた。

翌週は、抱きたいと言われホテルに行った。

彼のSEXは毎回違う。だからよくあるワンパターンで次何されるかわかるというのがない。

私も毎回同じにはしない。完全受け身の日もあればこちらが主導権を握る日も。

どんな日も満たし合えていると思う。

終わった後、彼に包まれてる時間が最高に幸せだ。いろんな話をした。

その中でこんなエピソードを話した。

10日ほど前、スーパーに行ったら同期の男性に会った。立ち話をしていたら、同期が指を差し、あの人奥さんだよ。と言った。彼の奥さんを初めて見た。おしゃれなグレイヘアーで、カジュアルめな服装。全体的におしゃれな服装。ただ私とは違う系統だった。

顔も見た。買い物してる姿も。

私が何を思ったかというと、何も思わなかった。

勝った、も。負けた、も。あの人のご飯を作るんだろうな、羨ましい、も。憎い、も。そして、申し訳ないことをしてる、とも、全く思わなかった。

そして何も思わない私は嫌な女だと思ってしまった。なんて非道な人間なんだろうと。

彼に話した。

すると彼が、俺も思わないよ。練習場で旦那さんに会ったと言ったじゃん。なんとも思わなかった。何も思わないようにしてるのかも。そこ考えると落ち込むし。だから何も思わないってのは一緒だと思う。と言った。

本当になんも思わなかったんだよねー。何かしら思うかと思ってたのに。と私が言ったら、だってそこは別物じゃん。と彼が言った。

その時は一旦スルーしたが、少し気になって、

さっきの別物ってどういう意味?と聞いた。


すると彼が「恋愛とそうじゃないか。言い方合ってるかわからないけど、そんな感じの別物。」と言った。

私はこの言葉が嬉しかった。

嬉しくてキスをしたら、可愛いなぁーと言ってくれた。

確かに恋愛だ。
逢えなければ恋しい。逢えたら愛しい。

この感情が私だけに向けられているものだと思うと、さらに私は満たされた。


何も心配に思うことはない。


彼がいつも私が寂しく思わないように毎日マメに連絡をくれ、週に1度は必ず顔を見にきてくれる。月に2回は抱いてくれる。


お互いに家庭がある身で、立場的に他に会食やゴルフや色々な予定がある中で、1年間ずっと変わらず時間を作ってくれる。

何も不安に思うことはないのだ。奥さんがいたって、夫がいたって、私達はお互いを必要としている。そう思う。


彼の奥さんを見ても何も思わなかったことを親友に話した。
すると親友はこう言った。

「私も同じ状況になった事あるけどなんとも思わなかったよ。へー、もやし買うんだ。くらいにしか思わなかった。左手の薬指を見てもなんとも。その後自己分析したら、当時の彼のことを誰かの夫だという認識がなくて1人の男性として見てたからじゃないかと思ったよ。だからきっと、あなたもそう。彼という人間と付き合ってるんであって、あの日スーパーで見た女性の旦那さんと付き合ってるんじゃないのよ。」と。

確かにそうかもしれない。私と一緒にいる彼は私の彼なのだ。あの人の夫ではない。

私も、家で母や妻をやっている時の私と、彼の前での私は違う。
彼もきっと違うだろうと思う。


翌週も、その翌週も彼は私に逢いに来てくれた。

温泉の話を彼がした。
「色々調べたけど日帰り温泉って部屋にいれるの3時間くらいなんだね。短いよねー。」と。
「部屋に露天風呂ついてたら最高なんだけどなぁー。」と。

もっと長く一緒にいられるところないか探してみるらしい。

私は彼と一緒なら、どこでもいいなと思ってニコニコしていた。


今回のSEXはついつい私が求めてしまい、対面座位でしがみつきながら2人で同時に果てた。全身の力が抜けてしまい、全体重をかけてしまい、重いよね、ごめんね。でも力が入らなくて…と言ったら、いいよ全然軽いしもっと体重かけていいから。と支えてくれた。

終わった後に、ちゅーしてとおねだりしてくる彼が可愛くて仕方がない。


やっと力が入るようになり、ベッドに横になった。私とのえっちつまらなくない?と聞くと、何言ってるの、むしろつまってつまって水が詰まって流れない。とよくわからないことを言っていた。

終わった後のベッドの上でのお話はとても幸せで、いつも私が彼の肩に頭を乗せ、彼が足を絡ませ、ずっとくっついている。

少しでも離れようとすると嫌がり、どこいくの?と聞いてくる。

どうしてこんなにも愛おしいのだろう。


ただ、翌日から週末だと思うとまたげんなりする。


12月は年末年始で彼は家族と帰省。嫌なことがどんどん近づいてくる。

愛しい気持ちと嫌になる気持ちが交互に訪れる。

好きになるって苦しいことだと痛感する。


もっと大人に、もっとドライになりたい。

そう思い土日の連絡は最小限にしていた。すると彼は私の連絡がなくても何回も「今このドラマを見たよ」とか「次はこのドラマを見るよ」とか「ゴルフ練習行ってくるね」とか、LINEをしてきてくれる。

夜は必ず電話をくれる。

また愛しさが増す。


けど、私の隣にずっとはいてくれない。
私も彼の隣にずっとはいられない。


これが不倫というものかと日増しに、好きになればなるほど、私を苦しめる。


例えば私が、逢いたい。もっと一緒にいたい。と言えば彼はそうしてくれる。何も言わなかったとしても次はいつ逢えるかと聞いてきてくれる。

土日が終わって月曜日が来ると、彼は何度も電話をくれて、その度に大好きだよと言ってくれる。

いつもいつも、彼ができる最大限のことをしてくれている。

不安に思うことはないのだと思う。お互い家庭でうまくやらなきゃなのは、私たちが逢えなくなるから。だからうまくやらなきゃいけない。それがどうしても嫌で仕方ない時がある。

どうしても悲しくなってしまう時がある。

どうにもならないこと。

1年続いたということは、彼も私も、普段と変わらず家で夫と妻をきちんとやってるから。

秘密の恋愛を続けるには、家庭をきちんと隠れ蓑にしなくてはならない。


このちぐはぐな行為に私は少し心が弱ってきている。


どうしたらいいかわからないまま、それでもまた逢える日には逢っている。抜け出せない。


どうもできない。どうにもならない。


定期的に訪れるこの感情。
関係をやめないことには、一生付きまとう感情。


彼との関係は穏やかで問題は全くない。


お互い結婚してるという問題は最初からわかっていたこと。

そのことで心が疲弊するのはお門違いなのだが、してしまうのはしょうがない。

小さな幸せを感じて、打ち勝っていくしかない。


今日はゴルフに行ってる彼が夕方電話をくれたけど揚げ物をしていてタイミングが合わず出られなかった。


そのうちに我が家は夕飯の時間となってしまい、彼にレスポンスができなかった。


片付けをして、ジムに行くために車に乗った。彼から1時間前くらいに「電話まずかった?」とLINEが来ていた。

もうさすがに家に帰ってしまっただろうなと思いながら、「2回も電話くれてたんだね!ごめんね」とLINEをした。

すると送信と同時に既読がついた。


すぐに電話が来た。


彼はそうは言わないけど、気にして待っていてくれたんではないかと思った。


20分ほど話してからジムに行った。


大好きだよ、と彼が何度も言ってくれた。


小さな幸せを武器に、どうにもならないことに打ち勝つ。
私の目標にしよう。


彼は1日に必ず一個は幸せを感じさせてくれるから、それを集めて集めて、心を強くしよう。



今日は祝日。早朝ゴルフに出かけた彼が、終わったよと電話をくれたのはお昼過ぎだった。


休みの日でも時間を見つけて連絡をくれる。またひとつ幸せを感じる。

明日は逢える。またひとつ。


不倫。事実は変えられない。見ないふりもできない。気付かないふりも。

2人のことと家庭のことをどれだけ切り離して考えられるか。そこにこれから続けていけるかがかかっているように思う。


ちょっと火遊びの2、3回寝るだけの関係ではないのだから。





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