(日々雑感)苦い薬と甘い毒 ~情シス時代

今はフリーランスですが、4年前まで真面目に会社員していました。
(今も生きることには真面目です)
ITエンジニアといいつつも、顧客企業に派遣される業態でした。
情報システム部員(情シス)として長く企業で働きましたが、その時よく感じていたこと(ジレンマ)を書きたいと思います。

(目次)

  1. 「情シス」のお仕事とは

  2. 当時の自分のスタンス

  3. 最大公約数と最小公倍数

  4. そして、苦い薬と甘い毒

  5. 最後に自分が出した結論

1.「情シス」のお仕事とは

世の中には様々な企業があります。
農林水産業、製造業、サービス業などなど…。
そして、ある程度の企業にはたいてい「情報システム部」と呼ばれるIT部門があります。
呼び名は企業によって様々ですが、「ITに関する業務を担う部門」です。
ITなんでも屋さんの「オールインワン」レベルから、システムを作る「開発」、作ったシステムを正常に稼働させる「運用」、特定の目的を持った「技術開発」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「ガバナンス・統括」「クラウド」「カスタマーサービス」などに分かれている場合もあります。
私の業務はどちらかというと「ITなんでも屋さん」に近かったと思います。
すでに稼働しているシステムを見守りながら、新しいシステムを導入したり、刷新したり。会社全体に関わるものから、イチ社員のPCの困り事までやっていました。

2.当時の自分のスタンス

「優先順位は自分で決める」…困り事や相談など、人から受ける仕事が7割、自分でコントロールできる仕事が3割くらいでした。
最初は受ける仕事を最優先にしてしまい、キャパオーバーしてしまいました。自分の仕事も当然できなくなります。
そして、その「自分の仕事」は部外者が見ると「何をやっているか分からない」仕事なので、「なんで私が頼んだ仕事が終わってないの?」という印象を与えることが多かったと思います。
それでも優先順位を間違えないと、信念をもっていました。
理由は以下。

「自分はゴールキーパー」…自分の仕事で一番大事だったこと。稼働しているシステムを決して止めないこと。こまめにシステムの状態を監視し、障害を予測し、未然に防ぐ。仮に起きてしまったら最短で復旧させる。
これは自分の立場でしかできない、替わりが利かない仕事だったので、「自分はゴールキーパー。自分が取れなかったボールは失点になる。」そんな感覚でした。

例え理解されなくても、自分が手綱を緩めたらシステムが止まる。
それが、お客様に一番与えてはいけない損害だ。というスタンスです。
こちらの考えや実情を広報してみたこともあるのですが、理解ある人がいる一方、そうでない人たちもいました。

3.最大公約数と最小公倍数

どの部門にも予算があります。
それを踏まえて、人へのサービスは全部門できるだけ平等に、を心がけていました。
予算の最適化という視点を持っていたので、どの部門の課題に対してもできるだけ平等に割く、「最大公約数」的なやり方を取っていました。
一方で、社員さんの視点から見ると、「IT絡みの問題は全部やってほしい」という視点が大きく、結果としてどの部門の課題に対しても満額回答で答えるという「最小公倍数」的な(当然実現不可能な)要望が多かったと思います。
もちろん知恵と工夫でできるだけやりましたが、お金がかかることは物理的な限界があります。
ひどいところになると、自分たちの業務のITチックな部分を持ってきて「(ずっと)代わりにやって」という要望もチラホラありました。
これって、会社内での「かくれ業務委託」だな、と感じていました。
自部門の業務をIT部門の人間にやらせる。
「自部門の業務をIT化してほしい」なら分かるのですが、代行ってなに…

4.そして、苦い薬と甘い毒

大きなシステムを刷新する時、機能の取捨選択が生まれます。
数年前主流だったものが廃れ、新しい時代にあったシステムに生まれ変わるためです。
最新の時代に生まれたリスクに対応するためだったり、最新の技術を活用して会社の競争力を高めるためだったりします。
それに伴って、システムを使う業務のあり方や個人の働き方に変容が生まれます。
社員レベルで見ると、「今までのやり方ができるなくなる」わけです。
これに反発する人が多い会社さんもいます。
システムに対して保守的、という感じでしょうか。
どんなに丁寧に説明しても、部門毎に調整しても、拒否反応を示す人が多い場合があります。
ひどい人になると独自にPCをカスタマイズして働いているのに、システムが変わってもそれを維持しろ、という要求を出してきます。
穏便に済まそうとして、(見かけ上は)使い方が変わらないシステムが生まれます。
結果、新しい時代に対応していない、過去と同じ使い勝手のシステムが生まれます。
この手の刷新プロジェクトを手掛けるたびに「苦い薬と甘い毒」だな、と思っていました。
将来のために健康になるために苦い薬を飲んでいかないといけない。
そうしないと、将来、大変なことになる。
でも患者さんは苦い薬は飲んでくれない。毒でもいいから甘いものを取りたがる。
そのジレンマがずっとありました。
「甘い薬」があればよいのですが、それは一時しのぎで未来につけを回すやり方です。
少しなら良いのでしょうが、毎日摂取してはいけませんよね(汗)
環境問題のようにも感じます。

5.最後に自分が出した結論

会社全体で将来を見て動くのか、現状維持なのか、コミットメント(約束)を取ることだと思います。
自分は派遣されてる身だったので、それは適いませんでしたが、
自分は、現状維持を望む企業さんには向かなかったのだと思います。
力不足でもあり、ミスマッチでもあると思います。
どちらかが0:10の事柄ではないですね。
自分は上手くやれなくてNoを言って、辞めましたが、後悔はないです。
むしろ、もっと早く…とさえ思っています。

こんなことがあって、自分が無条件にサービスする働き方と決別しました。
自分を差し出す仕事と相手は、自分で決める。
どうか、自分を幸せにするコンパスを手放さないで。


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