見出し画像

コロナウイルスとラブマシーン

はい。ブルーバレーことBlue Valleyです。


今回も時事ネタ回ですが、ちょっと時事ネタとは離れた内容となるかもしれません。

先日、NHKの番組でタモリさんと山中伸弥教授が共演する、「人体 vs ウイルス」という番組が放映されました。

この番組はコロナウイルスの騒動以前からシリーズとして放映されていたものですが、今回図らずながらタイムリーな話題となった番組内容となっています。

私もこのシリーズを楽しく拝見しているのですが、前回の番組の中で山中教授が興味深いお話をされていたので、その際ふっと思ったことを今回書いていきたいと思います。


山中教授の語るウイルス

先日の番組では、コロナウイルスの持つ特性や、それに対抗する人体の免疫システム(番組内では免疫ネットワークと形容されていた)について紹介されていました。

この番組を見て、改めて人体の免疫システムという、あまりに完成された仕組みに驚かされました。

と同時に、番組の解説で「ウイルス」という存在についても改めて考えさせられることになりました。ここでは詳しい内容については触れませんが、非常に面白く分かり易い内容でしたので、興味のある方はぜひ一度調べられると良いかもしれません。


山中教授は番組内で、「増えること。それがウイルスにとって唯一にして最大の目的である。」といった趣旨の発言をされています。

これは山中教授の考えでもなんでもなく、事実としてウイルスがそういう存在であることを示しています。

ウイルスは、元々人間を殺すことが目的ではなく、ただ増えることを目的として活動しているのです。その「増える」という唯一の目的の達成のために、ウイルスは数十億年もかけて人体の免疫システムにも負けずとも劣らないシステムを獲得していったのです。ウイルスにとって人体に及ぼす悪影響というのは、「増える」ことの副産物でしかないわけです。

人間の行動で例えてみましょう。「文字を読む」ことを目的として活動している人がいたとします。この人は、たくさんの文字を読むために、文字の集合体である本を読むことにします。そうして目的である「文字を読む」ことを続けた結果、この人は母国中のあらゆる難解な文献を読破することになりました。しかしここでこの人の行動目的は、「文字を読む」ことであり、「何冊もの文献を読破した」ことは、単なる副産物にしか過ぎないのです。さらにこの人は、文字を効率的に読むために「速読」を身に付け、「斜め読み」を身に付けました。読めない言語にぶつかったらその言語の学習を行いました。自分が手に入れられないような高価な本は、強盗をして入手しました。世界で一人しか持っていない文献は、その人を殺して手に入れました。

どうでしょう?実際に人間はもっと複雑に作られているのでこのようなことにはなりません。行動一つ一つに様々な思案を行いますし、その思案の結果強盗や殺人のような行動には至らないことがほとんどです。しかしウイルスは、本当にただ一つの「増える」という目的のために、いくらでも自分を進化・変形させることができるのです。上記の例で言うところの「速読」を身に付けたことや、「文字を読む」ために強盗を犯したことが、目的達成のための進化に当たります。「文字を読む」ためには手段を選ばないように、「増える」ためにはいくらでも自分を変えることができるのが、ウイルスという存在なのです。



ラブマシーン

さて、「サマーウォーズ」と言えば、ご存じ細田守監督の映画作品で、夏を舞台にしたアニメ作品の中でも高い人気を誇る不動の名作です。私ももれなくこの作品のファンで、特に最後の「よろしくお願いしまーーーす!」のシーンは何度見返したか分かりませんね笑。

そんな「サマーウォーズ」の中でボスキャラとして登場するのが、侘助という天才エンジニアが作り出したAI「ラブマシーン」です。

今回はサマーウォーズ紹介回ではないので、皆さんがサマーウォーズの内容を少なからずご存じであるという前提で話を進めます。サマーウォーズをご存じない方は、諦めて今すぐ当映画を視聴なさってください。

とは言っても、もちろんサマーウォーズをご存じない方にも分かるように説明しますね笑。


サマーウォーズの中盤から後半にかけて、仮想現実の世界から何度も現実世界の平和を脅かすラブマシーン。劇中であんなに複雑かつ狡猾な行動を繰り返すラブマシーンですが、実は侘助がラブマシーンに与えたものは一つだけで、それが知識欲です。新しい何かを知りたいとする欲望を、侘助はAIに与えたのです。

その結果、アバターと戦って勝利することで、相手と相手が持つ情報を吸収し、さらに知識を増してまた新たなアバターと戦う…といった行動を繰り返し行うのです。この知識欲アルゴリズムに関しては、サマーウォーズファンにはよく理解頂けるかと思います。

ラブマシーンもまた、たった一つの目的のために動いています。

「新しいことを知る」というのが、ラブマシーンの行動の唯一の目的であり、人間やアバター側に引き起こされる被害というのは、ラブマシーンの目的達成のための副産物でしかないのです。(まぁ、ラブマシーンに関しては最後の衛星落としとか絶対個人的恨みだろって思いますが…)




両者の共通点

ここまで、ウイルスとラブマシーンの持つ「唯一の目的達成」という行動様式について考察してきました。

こうした考察の結果、どちらともに言えることは、ひとかけらの悪意もなく行動していることです。

ウイルスは増えるため、ラブマシーンは新たな知識を得るために行動をしており、その目標達成の障害となるものに対抗する手段を、この二つの存在は生み出して、その対抗手段が結果的に人間側に被害を及ぼすこととなったのです。


こうした両者の行動に際して、人間側はと言えば、かなり愚かな行動を起こしています。

人が次々と死んでいくような状況下で、その原因を生み出すウイルス自体を憎むならまだしも、ウイルスとは直接関係のない「人間」に敵意を向けたり、罵倒罵声を浴びせたりしています。

ラブマシーンが原因で日本中に混乱が巻き起こった際も、陣内家の人たちはラブマシーンを「作った」侘助を責めますし、ラブマシーンが引き起こしたサマーウォーズ騒動後は、侘助が悪いのかアメリカ政府が悪いのかという論争がなされています。

どちらのケースも、人間は最初こそウイルスやラブマシーンと同じく一つの目的達成のために動いているはずが、その後自己成長のために自らをグレードアップさせるウイルスとラブマシーンに対して、むしろ人間は自らをグレードダウンさせているのではないでしょうか。スタート地点はウイルス・ラブマシーンと人間で差はないはずなのに、行動が始まってから目的を見失わないという点にかけては、人間はそうとう前者より劣っているように感じます。


しかし、少なくともサマーウォーズでは、ラブマシーンの1回目の騒動の時には、ばあちゃんが「被害の拡大を抑える」という唯一の目的のために全力を尽くしていましたし、ばあちゃんが亡くなった後の2回目の騒動でも、家族は誰も侘助を責めるようなことはせず、「ラブマシーンを倒す」という唯一の目標のために一致団結しています。

結果として、どちらの騒動も最小の被害で抑えることができました。


こうした映画の結果を、ただアニメだから、といって済ませるわけにはいかないと私は思います。

もしどちらかの騒動で、誰かが互いの足を引っ張り合うようなことをしていたとしら、この物語はラブマシーンの勝利で終わっていたでしょう。

ばあちゃんが事態の収束より健二への責任追及を優先していたり、陣内家のみんなが、花札でミスした先輩をけなしたり、勝負に参加していなかったとしたら、どうなっていたでしょうか。


そして、現実世界の人間に目を移した時、私たちは本当に事態の収束に向けて行動しているのでしょうか?

自分たちの仕事を唯一の目的としているエッセンシャルワーカーをけなし、世代間で責任を押し付け合い、やっと打たれたウイルスへのいくつかの手立てはことごとく非難の嵐。果ては中国だアメリカだWHOだ事務局長だとどんどんウイルスから離れ、そうしている間にも人は感染し、そして亡くなっている。

もはや、「事態を収束」させるという唯一の目的から遠く離れ、「犯人を捜す」こと、「責任の所在を明らかにする」ことに、人類の目的が移っているのではないでしょうか。


ラブマシーンは強敵でした。それはもう仲間割れをしているような暇もない、一刻を争う事態でした。

ウイルスは、実害という点ではラブマシーンより強敵です。それはもう仲間割れをしているような暇もない、一刻を争う事態です。


「知識を得る」ために行動する敵には、先輩がしたように「知識で上回り」、そして起こってしまった「被害を最小限に抑える」ために人間は行動すべきでしょうし、「増える」ために行動する敵には、「増加を止め、適応する」ために尽力し、起こってしまった「被害を最小限に抑える」ために人間は行動すべきでしょう。

私たちも陣内家も、相手が唯一の目的のために行動するのであれば、こちらも唯一の目的のために行動しなければ、勝つことはできないのです。


最後にもう一点。

ウイルスとラブマシーンは、共に目的達成のためには手段を選ばず、冷酷で、感情を持たない存在です。

対して人間は、複雑な感情を持ち、冷酷にもなり切れず、常に道徳や自制心が行動に制限をかけます。

現在の解決策は二つ。一つは人間がウイルスの如く冷徹になることです。全ての判断をコンピューターに任せ、手段を選ばず、徹底した統制の下事態の収束を目指すのです。

もう一つが、人間の元来持つ「団結力」を生かすことです。人間は、ウイルスのように完璧に目標達成のために行動を揃えることはできません。しかし、「事態の収束」という唯一の目標が全員の心で共有された時、人間はウイルスは遥かに凌駕する力を発揮します。ウイルス対策のためのあらゆる手を尽くせば、感染が拡大しなかったり重症化しないことは事実ですし、その行動が広がれば広がるほど、人間の勝利は近づくのです。

どちらの手段を選ぶかは、今後の世界の選択次第でしょうが、皆さんはどちらの方が勝利への近道だと思いますか?



今回はここまでとなります。

陣内家は、全員が対ラブマシーン戦を自分の事と思って戦いました。唯一の目的達成のために全員が全員の持てる能力を結集して戦いました。

人類は今、陣内家と同じように、対ウイルス戦を自分のことと自覚し、持てる力を結集して戦うべきなのだと私は思います。

持てる能力なんて、手洗いうがい、ステイホームにマスク、リモートワークと適度な運動、そして健康的な食事と睡眠サイクル。これだけでウイルスにとっては脅威の武器となるのです。

感情のない相手に怒り喚き散らすことはもうやめて、むしろその相手と同じように、「事態の収束」という唯一の目的達成のために行動を起こし、そのために自らをグレードアップすることを目指してはいかがでしょうか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?