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初恋という狂気の日々 第十九章

第十九章 理解者

冬休み直前にもなると 委員会やらテストやらで忙しくなる  
そうした日々を過ごしていると、冬休み前日の朝
登中に時刻表くん(第十章登場)が私に近づいてきてからある話を聞いた 
絢辻さん 前のクラス委員ミーティングで詰められて泣かされた 

※時刻表くんもクラス委員

私は頭が真っ白になった すぐさま 教室に駆け込み
隣席の絢辻さんを待った

絢辻さんが登校してくる 体調はみるからに悪そうだった 私は心配する様に声をかけた「クラス委員の件 時刻表くんから聞いたんだが……大丈夫じゃないのはわかってる 抱え込まないでいたほうが良いよ」
絢辻さんはゆっくり応答する  「無駄な心配をして偽善者ぶらなくていい あなたには関係ないから」そっけない態度 

私は「確かに関係ないかもしれないけど、大切な人の辛い姿は見たくない」と反論する 
そうすると彼女がキムヨジョンの様な眼光で

「どうせ他人事だと思っているんでしょ? あたしの苦労も知らないくせに あんたはさぞ苦労も努力もしてない天才だから幸せな人生ですよね 」

と冷たく話し、私が否定しようとすると
「あのさ この際だからはっきりと言うんだけど、アンタ私のストレス要因なのわかってる? 要するにストレッサー どうせこのあとアンタ謝るんだろうけど、それもストレスだからね?」 と続けて強い口調で話した 

私は そんなつもりはなかったけど……と謝ることしか出来なかったが、彼女の逆鱗に触れたのか 脇腹に右ストレートが飛んできた
女の子の右ストレートなので あまり身体的には痛くはない

しかし心の痛みは計り知れなかった

この頃になると、絢辻さんのことは神様くらいの絶対的な存在になっていたので、あぁ神様から嫌われた と絶望の淵に立たされ、私の愚かな罪を偉大なる絢辻様にどうしたら 償えるのかと必死に考えたが、土下座して謝罪するしか思い浮かばなかった

その日はそれで終わるかと思ったが、帰りがけに絢辻さんに呼び止められた 「明日…暇なら… 今日は体調悪いから…」私は首を縦に振る 
 そうして帰宅してから まず最初に 改めて謝罪メールと集合場所 時間調整を行うことにした 

絢辻さんから返信がくる “今日の朝言ったことは 全く気にしなくて良い ストレスは自分で解決するモノ 集合場所は絢辻宅前 明日は✗✗時で了解…”とだけだった

次の日

 絢辻さんの体調は少し良さげだ そして開口一番 「昨日はごめんなさい アナタがストレス要因だなんて意味不明なこと言い出して…」と謝りだす 

私も謝る 「実際 偽善者の様に見えて不快にさせたのなら申し訳ないし、自分は気配りできてない」

そうすると彼女は
「いや…偽善者なんかじゃなくて本心で私を心配してくれてるのはわかってる
私が未熟だからアナタに八つ当たりをして あんな言葉や行動をしたの…… でも私を理解してくれてるのはアナタだけ  そんなアナタに八つ当たりした私が恥ずかしい ごめんなさい
昨日のキムヨジョンの眼光とは打って変わる様にか弱い女の子らしい表情で話す  

やはりこのギャップがたまらない しかもこのギャップを知っているのは私だけなのである
優越感 そして絢辻さんを私がなんとかしてあげたい と思わせる愛らしさがある
しかも好きな人から “私を理解してくれてるのはアナタしかいない” なんて言われたら たまらないのだ
まして自分の中では神の様な存在になっている方なので、これは神からの施しに違いないという認識になる 


よく この話をするとDV彼女やモラハラ彼女等と批判的な意見を述べる方がいるが、私はそう感じていない 思春期特有の情緒不安定さが故だという認識で、やはり当時は好きだから謝られたら許してしまうのである なので恨み等は今でも全く無いのだ

そうして流れからか、絢辻宅の中に初めてお邪魔することになった  ご両親にも挨拶をする  

絢辻さんのお母様は私を認知していたようで「娘が世話になっています」と挨拶をした後に 「この前も支えになってくれたみたいでありがとう」 と感謝をされた

この前とは何のことだろうと考えながら 部屋に上がらせてもらった 
 そうすると彼女が お母さんが言っていたのは、クラス委員決めの時のこと と教えてくれた
絢辻さん本人からも「あの時 アナタが話しかけてきたり、メールを送ってくれたのは本心の支えとなれたし、助かってる さっきも話したけど、アナタは私の良き理解者」と改めて感謝し 絢辻さんは質問した 
「テラバドは辛くないの?私みたいな情緒不安定な人を相手にしていて…また八つ当たりするかもしれない わたしはそれが申し訳ないからやめたい」
二つ返事で自分は返した「辛くない むしろ私で八つ当たりして発散されるなら良いと思う 君がそれで少しでも辛さが緩和するなら」 
絢辻さんは驚きながらも遠慮する 
「じゃあ……八つ当たりはやめるよう努力するけど、アナタには遠慮なくするわね 頼らせていただきます」 こうして 仲直りを済まし、一緒にゲームをしたり 親御さんと話したり ふざけて手を繋いだりして その日は楽しく終わった

そして もうこの頃になると 完全に絢辻詞さんという存在自体が私の中でアイデンティティとなっており 生きる意味になりつつあった

この記事時点での時系列 中学1年生 冬 出会って3年以上

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