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1214冬の流れゆく

忙しいタイミングと忙しいタイミングの合間を持て余して、勝手に花を生け、勝手に寄せ植えを作った。勝手に腕の折れた天使の小さい石膏人形を乗せたり、数年売れ残った偏光の人形を刺したりしながら、花屋に少しの賑わいを作る。

月末に配るためのカレンダーを200部、封筒に入れていく。店名は入っているけれど、写真は知らない人が撮ったわんさと花の使われた豪勢なものばかりで、いつかこんな風に花を生けたいと思いながらぱらぱらと眺めながら、どのぐらいの金額がかかっているのかを頭の中で軽く試算する。

普段なら1枚で十分だと思えるパーカーですら、風の強さにめくれ1つも役に立たず、少し作業をするには適してない厚手の上着を着込んで、やっと寒さしのぎになる程度だった。

クリスマス・ソングが店内にエンドレスリピートして、本気で好きになったことも無いくせに、と、勝手に敵を作って勝手に憤って、一瞬の救済にしか自分はなれないとか考えながら、店先に生えているでかいいちごを口につめた。

休憩時間にApple Musicに適当に、気になった曲を入れてっていくなかで、自分が好きな曲って結構バラバラだなと思いながらオルタナティヴロックとパンクロックとフォークが隣接するプレイリストを作る。

生えてきた草をしぱしぱ抜く最中、でかい根が土から出てると思ってよく見たらナメクジで、一人で変な笑い声を上げた。

同じピアノ教室に通っていたおじさんが、私が居ると聞いてわざわざ仕事を抜けて会いに来てくれた。そういう人が何人か居て、私はなんだかんだ好かれているという自信がある。

届いた切り花を静かに水切りしていって、薔薇の花束を作る。素直になれなくてごめんね、というカードをつけてください、と言われて、彼女の年齢の数の花。素直になれなくてごめんね、って言葉が自分から出てきたら、多分もう見切りをつけてしまうかもしれない。

泣かないで、泣かないで。本当に素直になれなかったの?素直ってなんだろう。

静かに流れゆく冬の中で、当てはめたであろう感情に動かされて私は、本当を見つめ直さねばならない。