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【映画監督】Spike Lee /Creative Sources

ブルックリン美術館へ。
映画監督でもあり、NBAのニックス狂でも知られるスパイク・リーの展示を観てきた。
以下は、特に印象的だったものを幾つか。


1.Black History & Culture


展示は全部で7つのテーマに分かれる。


最初に出てくるのは、ブラック・ヒストリー、ブラック・カルチャーのコーナー。
前者には今も続く闘いの歴史が、後者には先人や同胞へのリスペクトが、多くの視覚に訴えかける資料にて展示される。

脈々と続く人種差別。それを象徴するような、そして時に抵抗するようなアート、風刺画、写真が壁一面に飾られる。
中央には、あのお決まりの出立ちの彼。
このチャーミングなスーツは、調べてみたらヴァージル・アブローのデザインとのこと。

2.Family

家族との関係。

時々彼のInstagramのポストにも出てくる彼の父、ビル・リーはベーシストで、ジャズミュージシャン。ドゥザライトシングを始め、彼の映画音楽にも携わっている。
そして彼の母親と祖母の姿も。彼女達が通ったスペルマン大学は、名門女子大学で、Historically Black Colleges & Universities、歴史的黒人大学)の1つとのこと。


自分とその周りの物語、ナラティブを自分の作品で表現していく。
こうした家族の愛情とバックグラウンドがあってのスパイク・リーなのだと気付かされる。
展示はそのまま、ブルックリンのコーナーへ続く。

3.Brooklyn

日本で生まれた自分にとっては、今でこそブルックリンは流行の先端で、インテリアに代表されるようにオシャレなイメージが先行している。

ただ歴史的には、今のように脚光が当たるようになるまでは、様々な要因があるようで、こちらについては以下の記事が分かりやすく、勉強になりました。

ドゥザライトシングが公開された当時のコントロバーシャルな様子が記事を持って伝えられる。
今季から大谷選手が加入するドジャースも元々はブルックリンの球団で、1957年にロスアンゼルスに本拠地が移ったことを知る。そして、近代メジャーリーグで初めて黒人選手としてプレーしたジャッキー・ロビンソンもこの球団出身だという。
個人的にノース・カロライナのイメージが強いマイケル・ジョーダンも生まれはブルックリン。

4.Photography

次は、写真。
こちらも魅力的なコレクションが幾つもあったのだけど、この辺りで一緒に観に行った子供達も我慢の限界(そりゃそうだ)で、ゆっくり鑑賞出来ず。

フランク・シナトラとマーロン・ブランドの写真。

5.Cinema History


続いては、映画のコーナー。
ただ彼自身のものではなく、彼が影響を受けた作品や監督がメイン。

黒澤明、マーティン・スコセッシの写真を皮切りに、彼の創作の源であったろうフイルムの数々が展示されている。


故コービー・ブライアントをオマージュして、2020年のオスカー授章式で彼が身に纏っていた衣装も。コービーも自身とバスケットボールとのアニメーションの物語を制作していた。

6.Music

いよいよ終盤。次は音楽。

Public EnemyのFight The Powerが大音量で流れる。これでもかと踊り続けるドゥザライトシングの冒頭シーン。思わず体が動いてしまう。子供達も少し回復。
The Notorious B.I.G。カッコよすぎ。


左からDavid Byrne(Talking Heads)、
Verdine White(Earth, Wind & Fire)、
Princeからの寄贈品。こちらも贅沢過ぎて圧倒。

7.Sports

最後はスポーツ。
ただ、そこに辿り着く前に、テーマの3、4、7が交差する部分がやや開けた空間になっていて、そこにはNew York Knicksを中心としたバスケットボール愛に溢れた展示になっている。

パトリック・ユーイングの絵も。言わずもがな、スラムダンクの赤木剛憲のモデルと言われている名選手。ニックスの魂。今でもホームアリーナであるMadison Square Gardenに行くと、ユニフォームを着ている人が多いスタークスやオークリーのコレクションもあり。ニックスファンは興奮必至。
数々の舌戦を繰り広げたレジー・ミラーのユニフォーム。
ニックス・ファンにとっては悪夢だったろうに。
マイケル・ジョーダンとスパイク・リーを中心に、広がるブラック・カルチャーを形成してきた人々のサークル。中には彼の映画の中の登場人物も。

8.感想

展示の途中には、BlacKkKlansmanの最後に描かれるあの事件、ショッキングで暴力的なシーンもスクリーンに映し出される。

同様の演出は、デビッド・バーンのアメリカンユートピアでも挿入される。
決して虚構の世界ではなくて、現実と地続きなんだと思い知らされる。
思えば、Do The Right Thingだってそうで、公開から何年も経った今も同じ事が繰り返されている。

2019年のオスカーの授章式では、彼はBlacKkKlansmanで脚色賞を受賞し、前掲の祖母についても語っていた。
その年はプリンスをオマージュしたパープルのスーツ姿で、2020年に来たる大統領選に向けたスピーチをしていた。

それから5年が経った今年も大統領選。
残念ながら、その後のパンデミックを経てもなお、分断の震源が変わったようにしか思えない。

いつの時代もDo The Right Thing。
じゃあ何が出来るといったら、出来る事も正直限られるけど、連帯する事は出来るはず。

そんな事を考えていた際に、以下のnoteを読んで、昨年10月頃から続く無力感から少し解放されたのだ。
自分と自分達を、何層にもレイヤリングされた社会構造の中でどこにいるのか、どことなら繋がりを保てるかぐらいの想像力は働かせられる。そうでないと、余りにも粗暴な世の中になってしまう。そして、それは現在の世界(ヨコ)との繋がりだけじゃなく、未来と過去(タテ)も一緒だと思う。

最後に。
展示全体を通して、ジャンルがクロスオーバーしているけど、根っこは繋がっている感じ自分の好きなものには正直でいいし、欲張っていいよと背中を押された気がする。

多様性とエネルギー。
自然の中だけでなく、目を向ければきっと街の中にもある。
その美しさを知る。
それ自体が自分にとっての(特にニューヨークという街に感じる)魅力なんだと再確認するような展示でした。

展示は2/11(日)まで。
ちょうど今月はBLACK HISTORY MONTHです。

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