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傷が、あるからこそ。――金継ぎによせて

陶器の割れや欠けなどを修復する日本の伝統的な修復技法、「金継ぎ」。

傷跡を「景色」として捉え、継ぎ目を金や銀などの金属粉で装飾することで傷を美しく目立たせるという、世界で唯一の修復法。

傷を隠すのではなく、大切に愛でる。
完璧じゃないところにこそ、
傷があるところにこそ、
唯一無二の美しさを見出す。

金継ぎされた陶器を「美しい」と感じるときに不思議な感動と安らぎを覚えるのは、
「完璧じゃなくていいんだよ」
「傷があるからこそ美しいんだよ」

と、わたし自身が言われているように感じるから、なのかもしれない。

* * * *

「完璧じゃない自分を愛でる」。

傷がなければもっとよかったけど、という諦めの境地から受け容れ愛でるのではなく、傷があるからこそもっといい、という心持ち。

体じゅうから力が抜けていくような、それは安心感だ。
生きてきた時間ごと肯定されるような、溜息とともに涙がこぼれるような、本物の愛だ。

金継ぎが教えてくれる、言葉のない教え。
それは静かに、かつ力強く、わたしを支えてくれる。




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