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学生最後の春休み,帰省に際して思い入れの美容師さんに会う

3月も中頃,大学に入学してからそのまま大学院に進学して6年が経ち,学生最後の春休みを迎えている.なかなか学業が忙しかったり,遊び歩いていたりとゆっくりと実家に帰ることができていなかったが,久しぶりに1週間ほどの実家帰省の時間を作ることができた.都会よりもコロナにセンシティブな田舎には帰りづらく,1年以上ぶりの地元である.就職してからもまた忙しくなるだろうからと,できるだけ家族や親戚と時間をともにし,母親の手料理に舌鼓を打つ.年間10日実家に帰れたとして,3食母親の料理を食べれたとして,1年で30回.母親が後30年生きれたとして,後900回.きっと外食したり,友人と飲みに行ったりもするだろうから実際はもっと食べれる機会は少ないかもしれない.そんなことを気にしながら,「母親よボケる前に私が好きだった料理の作り方をメモで残しておいてくれ.」と思う.そのためなら,ipadでもなんでも買ってあげるから.メモを残して欲しいなんて話を他人にしたら,「将来の嫁にでも作らせるのか.」と言われたものだが、そんなつもりは毛頭なくていつか自分で作ってみるつもりだ.そろそろ,その旨を本人にも伝えたいものである.

帰省前にやりたいこととして掲げたものの1つに「美容院に行く」があった.その美容院は,私が高校生の頃にいつも切ってもらっていた美容師さんが,結婚して開いた個人経営のお店だ.大学に入ってから機会は減ったものの,引き続き帰省の際にはその人に散髪をお願いしていたのだが,ある時,その人の後輩の美容師さん(この人も,この時には私が高校時代から勤務していて知っている数少ない美容師さんの一人になっていた.)から,「〇〇さんなら△△町の方でやっているよ.」と言われた.もうすぐ結婚されるということは聞いていたが,どうやら,結婚して夫妻で引越しそこで美容院を構えているらしい.この話を聞いたのが2年ほど前だが,地元に残っているわけでもなく,帰省したとていつも散髪の必要があるわけでもない故,一度も店に足を運べずにいた.そんな,美容院に遂に本日行ってきた話をここに記す.

予約の際の電話番号は携帯の番号らしく,いかにも個人で細々とやっているのだなと感じながら,google mapの案内を頼りに向かうと,畑に囲まれて到底美容院の存在を想像できない場所まで来てしまった.私の地元の隣町なのである程度の田舎度合いはわかっていたものの,さすがにと思い,一度車から降りてあたりを見回した.すると,案内は間違っていた訳ではなく少し後ろに小さな看板と入り道を見つけた.通り過ぎてしまったらしい.予約の時間も少し回っており急いで車を引き返して道に入っていくと,一般的な一戸建てを少し改築したような家があった.

中に入ると,見覚えのあるような少し格好が変わったような〇〇さんが出迎えてくれた.「もしかして(私の名前)くんですか.」と聞かれ,覚えててくれてたことに嬉しさを感じながら店内を進むと,散髪のための鏡と椅子が1つと,すぐ近くには家庭でよく使われるようなストーブが1つ.「あぁ本当に1人ずつ対応していく感じなんだ.これだと,1日にお客さんは多くても2,3人くらいではないか.」という印象だ.通常の美容院と異なり他のお客さんがいるわけでもなく,対応してくれる美容師が変わるわけでもないため,〇〇さんも次の施術に追われることなく,ゆっくりと昔の頃の話や近況の話をしながら,私の髪に触れ始めた.

切る場所が変わっても離れた場所で生活していても,またこの人に切ってもらいたいなと思う理由に〇〇さんの人柄や醸し出す雰囲気がある.とてもおっとりとしていて,施術の際の一つ一つの動作が繊細で私への触れ方も少しか弱い.そんな〇〇さんは話す声も小さめでゆっくりで,山に囲まれた美容室の窓から自然を眺めながら時間がゆっくり流れているような気になる.私は,元来,美容院にはリラクゼーション的な意味合いで行くことが多いので,あまり積極的に話しかけてきたり私自身の話をしなければならないのは苦手だが,〇〇さんのトーク量は多過ぎず少な過ぎず絶妙なのも非常に私が気に入っているところだ.

先に,シャンプーからということで場所を変え体を倒される.シャンプーの時はあまり美容師さんと話さなかったり,過去の記憶では〇〇さんともあまり話していたことはなかったが,今回は話しながらシャンプーされる.〇〇さんに初めてお願いした時にとても印象的で,その後もお願いすることにした最大の理由はシャンプーだと思う.素人目にはカットの良し悪しはあまりわからないし,変にならなければいいだろうくらいなものなので,特に比較することもないのだが,シャンプーに関しては今まで色々な美容師さんにやってもらったが,〇〇さんのシャンプーが一番心地よい.美容院に行って癒された気持ちになったのは〇〇さんの施術が初めてであり,それ以降そう言うものを美容院に求めて行くようになった気がする.相変わらず少し弱々しいような力でゆっくりとマッサージされるその刺激を感じながら,昔より長めにやってもらった気がして喜びを感じていた.(昔はシャンプーの時だけ他の美容師さんに変わってもらったりすると少しテンションが下がったものだ.)

シャンプーが終わり,ドライヤーで髪を乾かし始める.〇〇さんの声はそんなに大きくはないので,会話が聞き取れないこともあって,そんなことさえも懐かしいなと感じていた.そして,相変わらず髪を乾かす時の手つきも優しい.ドラマや漫画などで彼女が彼氏に髪を乾かしてもらって気持ちよさそうにしているのはこう言うことなのでしょうか,と少し気持ち悪いことを考えてしまった.

初めて散髪をお願いしたのが16の頃だから約8年は経っており,「私ももう32だよ.」と話す〇〇さんに「ちょうど,その頃の〇〇さん歳くらいになっちゃいました.」と私は返すと,たいそう驚いていた.私も時間の流れる早さに驚くとともに,あの頃の〇〇さんも十分に大人びて見えたななんて思っていた.

かなりゆっくりと切ってもらっていたなと思ったが,実際には1時間ほどしか経っていなくてとても素敵な時間が過ごせたなと満足しながら会計を済ませた.思いのほか価格が安かったので思わず聞き返してしまったが,「学生料金だからね」と言われてしまった.社会人になってからもまた来ます.

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