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返校 言葉が消えた日【2021/11/06】

先日、映画「返校 言葉が消えた日」を観てきました。
原作の同名ホラーゲームは非常に傑作で以前からのファンです。数年前に台湾に行ったとき、台湾国内で映画化されるというニュースや広告が街中のあちこちにあり、一緒にいた台湾人の友達にハイテンションで感激を伝えたものでした。

この映画は台湾の白色テロの時代を舞台に、台湾の宗教観、死生観、家庭文化などを
色濃く反映させた世界となっています。
言論統制、集会結社も禁止されるなか、禁書を水面下でこっそりと読み自由主義を学ぶ学校内のサークルが行われ、自由を諦めない、熱心な学生や教員がいました。
主人公の少女レイシンはとてもまっすぐで純朴な女性。彼女の純粋さと幼さによる小さな誤解が、周囲の人の秩序を崩壊させてしまい、現実と深いトラウマの狭間で地獄のような精神世界を彼女がさ迷うことになってしまうというストーリーです。
己のせいで人を死に追いやった自己嫌悪、国家の憲兵という怪物、家庭環境などのトラウマ、そういった全てが複合的にレイシンのもとに精神世界の悪夢として降りかかってきているのです。まさに地獄です。

ネタバレはしませんが、ホラー映画のあり方と、ストーリーの納得感という面では原作を知らないとついていけないところの多い映画です。
逆に、原作を知っている人ならば、一級品でしょう。(裏エンドのほうがいいとか、細かい要望はあるでしょうが)
この物語はレイシンは決して悪くないし、誰も悪くない。こういう国家が誤った時代だったからこそ起きた、悲劇の一つが、偶然彼女のもとに降りかかってきてしまっただけです。

こういう映画をきっかけに、あの時代が台湾にとってどんな日々であったのか、そして人々は何を奪われ、何を助けとして日々を生きていたのか、それを我々は知っておかないといけない。
本当に最近といっても間違えではないような、手の届く過去の話ですから、歴史ではないのです。

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