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法理的立法と道徳的立法

自由の法則である道徳法則は、ただたんに外的行為に関わる「法理的」法則と、道徳法則がその法則自体、行為の規定根拠となるべきことを要求する「道徳的」法則に区別される。

法理的法則との合致が行為の「適法性」であり、道徳的法則との合致が行為の「道徳性」である。この区別は、外的強制を許容する法理的立法と、自由な選択意志に基づく意志の自律としての道徳的立法という、立法の在り方に関する区別である。

カントによれば、「すべての義務は、それが義務であるというそれだけの理由で、倫理学に属する。」田中成明によれば、道徳的義務は、道徳的立法による直接的義務だけでなく、法理的立法による外的な間接的義務も含め、一切の義務における選択意志の規定根拠となる。

ただし、私の理解するかぎりでは、現実においては、行為の「適法性」が、道徳的義務を選択意志の規定根拠とせずに、認められうるというのが、法的義務の特質でもある。法のこの性質において、法における外的強制が、法的効力と矛盾することなく、可能なのである。

ただし、私見によれば、行為の「適法性」と「合法性」は区別される。カントの法論は、法を評価する理性法の見地であった。すなわち、「適法性」は「正当性」として理解できる。それに対し、「合法性」は道徳法則によって基礎づけられた実定法の諸規範と、行為の合致を意味している。

<参考文献>田中成明『カントにおける法と道徳と政治』

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