【創作】 殺し屋2

俺は殺し屋。俺自身は俺のことを殺し屋だとは考えていないが、人は俺を殺し屋と呼ぶ。人が俺を殺し屋と呼ぶ以上俺は殺し屋を名乗らざるを得ない。

そもそも、肩書なんてものはとてつもなくあいまいだ。自分自身がどう思っているかに関わらず、人は人をあるきまった肩書に落とし込もうとするのである。先日、ある恋愛サバイバルに出演した女は肩書がパン講師であった。そんなもんは存在しない。パン教室の先生だけで食えるわけがないだろ。そんな奴はたいてい親の金で暮らし誰かから譲り受けたキッチンで道楽のようにパン教室を開講し、おおよそパン以外を目当てにした、男しかいないような教室で調理器具などまともに握らず、適当な話を2時間ほどして、その教室を2週間に1回ほど行い、月謝として2万を要求するだろう。

許せない。俺はそう思った。人は俺を殺し屋と呼ぶが、俺は「殺し」の部分はずいぶん納得しているが、「屋」の部分においては、納得していない。俺は殺しはするが、それを生業として金品を受け取ってなどいない。完全に自分の都合で殺しているのだ。今まで数えきれないほどの人を殺してきた。たまには豚や牛も殺した。まあ、普通の人だって豚や牛を食べるのだし、その辺は普通の人と変わらないであろう。俺はいろいろな殺し方で人を殺してきた。絞殺、刺殺のありふれている殺し方だけではなく、ウィットにとんだ殺し方も披露してきた。俺が殺すターゲットの決め方はただ一つ。俺が嫌いな奴は必ず殺す。動機はそれぞれによって異なる。

食い方がきたねえ奴は殺してやる。くちゃくちゃ音を立てて食うやつがおれば、全く名前の知らないような奴でも必ず殺す。

そうやって殺しを続けてきた俺は、いつしか命の価値を知らなくなっていた。毎日、肉を食べる。好きだから。肉は殺さないだろう。しかし、肉は肉になった時点で死んでいるのだから、俺には殺すとか殺さないとかの選択はできない。俺は選択ができないのが嫌いだ。究極の二択というものも嫌いだ。限られた選択肢しかないのが嫌だ。トロッコ問題なるものが、広まっているが俺にしてみるとあれほど苦痛なものは、ない。なぜ俺が人を助ける前提なのだ。どちらのレールに立っているものも全部殺してやりたい。危険がつきものの場所で、ぼーっとしているからそんな奴は馬鹿だ。いらん。この世界には馬鹿が多すぎる。神がこの世を作ったのであれば、相当な好きものだ。昔、俺がまだ3桁くらいの人しか殺していなかった小学生の頃、ポケモンをした。手持ちポケモンをすべて伝説にしていた。なぜならば、強いからだ。しかし、同級生の斎藤はしょうもないポケモンを育てるのが好きだった。人気のないようなポケモンを育て上げて、バトルしていた。俺は、じわれで斉藤のポケモンを粉砕した。そのたびに斉藤は悔しがった。俺はなぜ斎藤がじわれや冷凍ビームを使わないのか分からなかった。つまりだな、何が言いたいかというと神は斉藤なんだ。どうしようもない奴を勝たせるためにどうしようもない奴を多くこの世に存在させたのではないだろうか。尤も、俺は神などというものは全く肯定していない。大学まで出たからだ。神学というものは学べば学ぶほど、そもそものうさん臭さが露見してくる。

まあ、ここまでの俺を心を書きなぐったこの文章を見てくれればわかるだろうが、俺は常に何かにいら立っている。思春期だ。

思春期の殺し屋だ。

今日も300人殺した。日に日に日本の人口は減少を続けている。警察は俺を捕まえることができない。なぜならば、おれには動機がないからだ。

厳密に言えばあるが、うるさいとか、顔が嫌いとか、臭いとかなんかいやとかそういうものなので、警察には動機として取り上げられないのである。

そもそも警察組織というもののほとんどを俺が殺したので、今現在警察が機能しているかどうかもわからないのである。街には犯罪がはびこっているだろうか、いや、そんなこともない。人間というのはすでに欲を失てしまった生き物なのだ。食べたかったら、奪って食う。犯したかったら、犯す。そういった根本的欲求もなくなってしまったのである。そんな奴らは面白くないよな。でも、自分の欲に従って生きるだけのやつもきもいから殺した。だからいなくなった。

その結果秩序に従う人間だけが残った。だがそれもきもいので殺した。

そもそも外に出ないやつだけが残った。寂しくさせられてムカつき殺した。

そして誰もいなくなった日本に外国人がいっぱい来た。日本に来る外国人は全員、日本人をなめているので、来るたび殺した。日本に動物が増えた。ヒグマも増えた。ヒグマには怖いから近寄らない。でも嫌いだから、食物連鎖をたどり、原点となる生き物を殺しまくった。食べ物がなくなったヒグマは全滅した。

俺以外の生き物が日本にいるのが許せなかったから、殺した。

柴犬だけ残した。好きだからだ。

あと実は新垣結衣も残している。かわいいからだ。

でもアメリカに逃げたから、許せない。

虫はきもいから全部殺した。

そしたら、柴犬も全滅した。食べ物がなくなったからだ。

俺は泣いた。

申し訳なくなって死んだ。

自殺した。




日本から何もなくなった。その瞬間地球が大爆発して、すべての生物が滅んだ。


しかし、そのことはほかのどの銀河系の知的生命体も知らないままだった。

辛うじて、太陽系から、6億光年離れた地のジジという超能力を持つ少年がそれを知った。しかし、その話を誰にしても誰も信じてくれなかった。

怒ったジジは持てる力を使ってすべての惑星を破壊した。宇宙がなくなった。何もなくなった。

そして、そこにあるものは。

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