ハラスメント・ワンピース①

かつて海賊王ゴール・D・ロジャーは自身の宝(ワンピース)についてこう述べた。
「欲しけりゃくれてやる、探せ!この世の全てをそこにおいてきた!」

この言葉は多くの老若男女を海へ駆り立てた。主人公モンキー・D・ルフィもその一人である。物語は現在佳境に差し掛かり、多くの読者はその動向に虜になっている。

もし私が、ゴール・D・ロジャーならこういう。
「ハラスメントか..…。欲しけりゃくれてやる、探せ!この世の全てのハラスメントをそこにおいてきた!」
押して、その場所とは..…!?

この結末を知りたくないよという読者はここでブラウザを閉じるのが良いだろう。糞の役にも立たない海外のライフハック動画でも見ているのがいいだろう。もしくは、「ALEXANDROS」の「閃光」に合わせて勢いのある映像が流れる奴でも見てるのがいい。あれは面白いからな。

さて残った諸君。君らにはネタバレをしよう。ハラスメント・ワンピースの正体は...…

「北海道」なのである。

ここにはすべてのハラスメントが存在する。
私がこちらに転勤によって強制的に連行されてからすでに3か月がたっているが、私はすべてのハラスメントを網羅した。もし、ハラスメントビンゴ大会なるものが存在するのであれば、私は間違いなくかなり上位に食い込むであろう。ここで注目するべきなのは、パワハラがあるとか、セクハラがあるとかではない。
すべてがまんべんなく存在するということである。

これはかなりレアなケースであろう。それこそがハラスメントビンゴ大会において、私が、上位に食い込むだろうという自信を裏付けるものなのである。
申し訳ない。存在しない大会のシミュレーションに没頭してしまっていた。
私が受けたハラスメントの一つを紹介する。
なぜかエロくてエモい春の話である。

その日はやけに風が強かった。ドアを室内に運ぶというカスみたいな仕事に3時間を費やし、体も心もへとへとになってしまった。そんなカスみたいな仕事をやる会社にはもちろん俺を含めてカスしか集まらない。鼻くそや目くそ歯糞はCHINカスにも劣るような奴らがそこには存在する。そして別にそこには私も含まれているのである。

まだ、気温は10度にもならないというのに、タバコばかり吸って体温調節すらできなくなった年配のカスどもが黄ばんだ汗を光らせていた。その黄ばみは昔地元で見た牛小屋の近くにあった黄金の池を思いださせた。それは子供ながらにきれいなものだったが、それは実は家畜のションベンをためておく肥だめだと知るのは大人になってからだった。

そんな肥だめの池みたいな汗をかく奴らは俺に何かと雑用ばかりさせた。暇があれば休憩し、一番若い俺と二番目に若い奴をこき使った。だからといって、二番目に若いやつと不思議な絆が生まれることもなかった。俺はすべてを見下しており、この場所にいる奴ら、という過去の場所自体を軽蔑していた。ジュースを買いにいかされて、センスで選んで来いと言われた俺は麦茶と水を半分ずつ買った。そしたら、コーラがねえよと怒られた。俺は人殺しになるところだったが、母を人殺しの母にしたくなかったので辞めた。

肥だめのやつらはタバコをぷかぷか吸い、コーヒーをマラソン大会の後、ウォータークーラーに群がる子供のように飲んだ。継続的に、しかし、ちびちび飲むあの感じだ。そうした後の肥溜め野郎の口は何とも言えない臭いになった。本物の肥溜めみたいだった。

何とかして作業を終えて、家に帰って風呂でも入ろうと思った俺だったが、肥溜めどもはさぼってばかりいて、体力が有り余っているのか、居酒屋に強制的に行くことになった。
俺は一度は断ったものの、恐ろしいほどの巨漢の肥溜め野郎に首根っこをつかまれるという初体験を味わされて、居酒屋に連行されるのであった。

居酒屋についてからは主に酒を注いだり注文をしたりすることをした。たまに無理やり酒を飲まされたりもした。俺は別に酒は弱くないからよかったが、2番目に若い奴は酒で顔色が明らかに悪くなっていた。俺と同じで肌が汚いそいつは酒に酔って昔ニキビがあったであろうところが紫色になり、顔が斑点状になっていた。

酒を飲みながら、こいつらは何がこんなに楽しいのだろうとずっと考えていた。全く面白くない下ネタを俺のおやじよりも年上のやつらが言い、それに腹を抱えて笑っていた。俺は全く笑えなくて、ホタテのバター焼きの汁を箸でずっと混ぜていた。運動エネルギーは熱エネルギーになると中学校の時、女なのに禿げていた教師が言っていたことを思い出した。まぜ続けたら、いつかはこのホタテの汁が沸騰するのだろうか。しかし、俺の運動エネルギーが熱エネルギーに代わりきる前に、次の店に移動することになった。

続きはまた今度。

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