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My Old Gear あれこれ(MNG前章)

今年になって新しくtubaが届いた。
注文したのは一年くらい前でその頃には一文無しになる覚悟さえあれば、何とか支払えるかな、位の資金があったので思い切った。構想5年。

シルバーならすぐ届けられるけどラッカーはこれから作るからちょっと待ってね、と言われて待ったら全然連絡がない。しびれを切らして連絡すると、どうやら出来上がったものが不出来でイチから作り直させているという。
そんなこともあるのか。まあいい加減なものが届くより良い。
そしたらまた届かぬ。なんか色々と不都合があって遅れているらしい。
そんなつもりはなかったのに受注生産品みたいになってしまった。それから約一年。

今年になって突然「出来たけど要る?残り払う?」みたいなメールが来た。
忘れかけてはいなかったけど不意打ちだった。昨年末からの物価の上昇や流通事情の変化、特に送料の急上昇と個人的事情を考えて、これを外したらもう二度と手に入らないかもしれない。注文時より手持ちのお金がないのだがまあなんとかならあ腎臓も目玉もあるワイ、と注文した。
ほしたら(大阪弁)あっという間に届いた。

よく考えると、僕は楽器を試奏して購入したことが殆どない。とりあえず小さくて安いの出して、みたいな考えが基本で、次はいかに素早く楽器の代金を演奏で回収できるか、が常。tubaには4つのキー(B,C,Es,F)があり僕はその中でB(クラシックだとフラットはつけないがB♭管のこと)しか吹かない。自分のプレーのことを考えると低い音もtubaらしい音も吹かないくせに一番重低音のBを選ぶのは、これが最もtubaの音だと思うのと、自分がやるタイプの音楽には合っていると思うからだ。悪くて黒い音がする。
F管は軽くて良いが尻軽な感じ、Cはtubaの癖にいい子ぶって「きれいなジャイアン」みたいな偽善が嫌、E♭は結構運指もすぐ出来るし嫌いじゃないけど出会いがない。どす黒くいダーティーな叫び声を出すならB♭だ。
(そうならtubaなんか吹くなよ、と言われる)

まず手持ちのtuba、My Old Gear紹介

YAMAHA YBB-621

25年位吹いているメイン機。これは2代目。初代は交通事故で大破。話すと長くウザいので割愛するが3/4サイズでB管としてはかなり小さい。「小さくて安いのください」といったら出てきた。「いいけどうちは八百屋じゃないんだからそういう買い方はどうも」とも言われた。
いつまで経ってもメーカーも個体も好きになれない。この621シリーズには全キーが存在しFが元だったんじゃないの?という噂がある。僕の師匠がその開発モデルを持っていた。それの劣化コピー的なバリエーション。なんか楽器としての完成度が低い気がする。けど稼ぎの殆どはこれから来ていて、慣れていも要るし一番メチャが出来るから出番は最多。腐れ縁的な楽器。

関島さんとのアー写で比較

関島さんの楽器もヤマハでこちらはF管。つまり僕のB管から5度も高いのだけどずいぶん大きく見えるのは巻の具合。僕のはかなり巻いている。無理があるのだがコンパクトになるから仕方がない。5度違うというのはサックスでいうと僕のがバリトンサックスで関島さんのがテナーだと思っていただきたい。おかしいでしょう、tubaって。適当なんです

Wessex toriniter tuba "Mighty Midget"

お次はこれ。イギリスのメーカーWessexの中国生産、おそらく世界で最も小さいB♭tuba。原型はオーストリア・ハンガリー帝国時代の軍楽隊に実在した3本ヴァルヴの楽器で車両部隊が貧弱だった軍のためにトーニスター(リュックサック)に入れて担いで馬で移動できるように作ったらしい。ほんまかいな。それをイギリスの新興メーカーが手に入れて分析し新しく復活させた。造形的には本当に美しいと思うけど無理やりの塊。4倍くらい巻いてあるから高さだけでいうとトランペットよりも体高が低いけど長さはスーザフォンと同じって頭おかしい。したがって抵抗感も半端ない。大きな音が出ないので思いっきり吹くと圧が返って来て目ン玉が飛び出そうになる。音程の癖は最低最悪の音痴。顔より下にベルがあるという唯一無二の構造のため、生まれてはじめて自分の音を耳で直接聞くことが出来たのは驚き。

高岡さん大きくなりましたねと言われるがちげーよ楽器が極小

ネタ以外で使う人はいないと思うが、自分は結構実用。コロナ始まってすぐ一番稼いでくれたのはこの楽器。野外でのフィールドレコーディングにはこれが一番使えた。山登りしても苦痛ではない。

これで関島さんの楽器よりも長くて低いっていうので異常さが理解しやすい
おかしいからポケットトランペットと並べてみた
YAMAHA YBB-103

名機YBB−103。自分にとって何が名機かというとこれはコンポステラで関島さんが使用していたから名機。あの凶暴なサウンドはこれからきたのかと感慨。アジアツアーに使用した。その後お金なくてやむなく売ったけどある日酔っ払ってヤフオク見ていたら安くで出ていてビットしてそれ忘れて酔いつぶれて朝起きたら落札していた。思っていたよりも高値で。確認すると一桁間違って入札金額入れていてゾッとした。バカすぎる。他の入札者にはさぞかし迷惑だっただろう。といってもtubaとしてはありえないガラクタ値段だが。あっという間に元取った。元はドイツの楽器のOEMでヤマハが作っていたのらしい。なんだやれば出来るではないかヤマハ君。その調子でモノづくりすればいいのに。子供用の廃盤品と思われがちだが楽器としても一貫性や完成度は高い。ボアが狭いので音量があまり出ないがそこから音を割ると良い。今では飛び入りするときとか気軽に移動するときに使用。ピストン1本少ないだけでびっくりするくらい軽い。

AMATI ABB323

チェコ楽器アマティのいつのかわからないけど小型B♭。これはまだカタギで働いていた時に偶然アメリカのよくわからない中古楽器屋で見つけた。見たこともないがとにかく小さそうで(B♭3/4)で軽そう。怪しいくらい安かった。tubaはケースがとても高価い(嫌だ)なのだが、そのケース代くらいでお釣りが来た。半信半疑で通販したら冷蔵庫が入りそうなJBLの巨大スピーカー用ダンボールに梱包されて届いた。ハードケースが非常に洗練されている。ヤマハもこれくらいやれよな。やたらと縦方向な管の構造、ヤマハより大型のベル、薄い管体、オールドコーンのようなピストンの位置。安い理由はボトム部に目立つ大きな凹みがあるからだが演奏には問題なし。珍しくあだ名が付いていてデンツと呼んでいる。関西方面のライブ限定使用。ボアは細めだが音のスピード感が速くて攻撃的な音がすると言われる。軽い。

コロナ初期に稼いでくれたのはこの二台


新しい楽器の紹介をしようと思っていたら手持ちのオールド楽器の説明でかなり紙面を費やした。書くのも読むのもつかれると思うので次にまわそう。
なんで手持ちの楽器から書いたかというと、新楽器はこれらと比べても著しく何かがオカシイからだ。最強に変な楽器だとも言える。
待て次回。ちょっと飲みに行ってきます。

オカシイのが来た


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