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高知二日目。2020/01/16。手詰港と岬。鯖のおから蒸し寿司。

長い長い一日の始まり。
13時間移動しっぱなしデー。

朝は部屋で、昨日握ってきた板わかめと九州のゆかりのおむすびと昨夜の残りのお惣菜とチヌのアラにお湯を注いで塩と塩昆布で味付けた汁を。なかなか美味い。


今日の予定を組むのが難しい。電車とバスだけの移動では高知県内はなかなか限界がある。ホテルの前のバス停から飛び乗って50駅東へ一時間、そして徒歩少しで夜須という土地に手詰港と岬がある。
全く土地勘はないが昨日のフライトと地図にらめっこで決めた。

やった、降りたら目の前に道の駅と釣具屋がある。県内では有名な橋がまるごと跳ね上がる可動橋もあるようだ。見れたらいいな。

海岸線をひたすらテクテク歩く。通行人は全くいない。途中砂浜が見えて海が見通せて気持ちが良い。が、人力ではきつい坂が続く。
なんかあちこちでこうやって峠越えしてきたな。何だ坂こんな坂。しかし降りられるのか?


だいたい岬の突端近くの道は高所にあってここも一旦超えてから降りる場所を見つけた。全国にある夫婦岩の中でも男女同じ大きさなのは珍しいらしい。(はちきんらしい)



最初に降りた場所は誰も人が来そうにない場所だ。波の侵入も荒い。防水の靴でよかった。このあたり一体、宮崎の鬼の洗濯板にもにた波状岩、そこに登って第一投。
美しい貝殻混じりの砂利浜と小磯で頗る浅い。こういうところはなかなか期待できないが、引き、と思うと大抵フグ君なのよね。申し訳ないけど。しかし美しいね。


夫婦岩の向こうに長いテトラ帯が続いているが潮の加減で渡れそうにない。残念。そこから西に戻るように砂浜と小磯を掻き分けてなんとか良さそうな足場のフラット小磯に陣取る。



こういうときの為に用意していたタックルをは初出し。スピンキャストの元祖zebcoの最高峰リールomega pro3と米企画の謎の中華激安竿。キャッシュレス還元祭3割引で思い切って買っておいた。
リールは芸術的な出来だが現行の華奢な竿に入らない、探して何だかよくわからない謎のパックロッド発見。これは恐ろしく安かった。



普段使っているタックルはへにゃへにゃのベナベナに柔らかく弱くて極軽い仕掛けを手軽に飛ばして軽快に探り歩く専門だが、もう少し重い仕掛けをしっかり飛ばすのもそろそろやらないとな、と思っていた。

とはいえ弾丸型オモリのバレットシンカー7グラムとバグアンツ(シャコみたいな)型のワームで、超久々にダブルハンドでエイヤーッと投げると流石に良く飛ぶ。頼もしい。

ただ、こういう小磯砂利浜は遠浅で根掛かりしやすくそこを心配しながらシャクって巻き上げると、ガツン、え?もう?一発目。

ただ途中から動かない、やはり根掛かりか。いや、初めてのタックルで初の場所、さっぱりわからない。用心して魚がかかったつもりで引いたり弾いたり待ったり。途中で巻けるときはまるで雑巾のよう。エイか?
そしてまたビクリとも動かない。この踏ん張り方はもしかしたらあれでは?
となると対処の仕方は知ってるので、やり取り。いつもより遠投してるから取り込みまでの時間が長い!


やっぱり、カサゴさんでした。
この人たちは釣られたときに抵抗して大きなエラを手のひらのように広げて、穴や岩につっかい棒するんてすよね、そうするとテコでも動かない。それを騙すのはほれ、今まで軽く数千匹はカサゴやってますから何とか。

嬉しいなあ、狙い通りの仕掛けとタックルセットで、その通りの根魚が一投目で来るなんて。しかもとても美しい個体。
カサゴほど個々に色合いが違う魚も珍しいと思う。赤いの茶色いの黒いの黄色いの、時にはゴッホの絵のような不思議な配色のものも。


釣り座を決めた理由は塩溜まりがあるから、ここに釣った魚を放したかった。
ちょっとやって、少し釣れる予感もあったけど、ちょうどお昼時。宿近くで仕入れた弁当と道の駅で買ったアジ刺しを広げてランチ。
目に入る範囲に人間は誰一人いない。海と空と、そして目の前にカサゴ。

惚れ惚れするような美しい魚が目の前で自然の中に泳いでいる。根魚は泳ぎが下手、とかいうが何様か。大きな胸鰭を一度はためくだけで、浮いた身体をスイーッと優雅に泳ぐ事を初めて知った。時には水面から目を出したり、なんという愛嬌のあるひとか。
猫というよりは、犬。そんな愛らしさ。


ずっと見続けながら食べる弁当は最高だ。

落ち着いたら釣り再開。
たいていの魚たちは食欲スイッチが同時に入るから間を開けたのはどうかだが、ランチの好機は逃せない。またもや遠投して探る。だいぶ慣れてきた。
やはりひたすら浅い(50センチもない)ので苦戦。極たまに反応があるけど近くまで寄せられない。ある程度やって汗かいて撤収。

この場で釣り上げたのはたった一匹。でも考えた自分なりのやり方が自然に通じ、お世辞抜きになかなか見ることのない美しい個体を、長い時間観察できた喜び。
ありがとう、手詰のカサゴよ。
そっと両手で掴むと意外と抵抗しない。手のひらがふっくらと膨らむからだの分厚さが愛おしい。
砂利浜のギリギリにそっと置いて、引き潮を何度も繰り返して海に帰っていくのを見守った。満足だ。心が満ちる。


もう一度車道まで登るのが億劫で、これから干潮になるのでなんとかギリギリ海岸線を渡って移動できるのではないか、というずさんな目論見で移動開始。

絶対に同行者がいたら無理。



結構な荷物を担いで断崖や絶壁を登り降りする。降りる前に指先や手先で体重を支えられるか確認しないと、降りるときの足元はヌルヌルしていて危険だ。あっちゅうまに頭打って死ぬ。こんな誰一人来ないところで死んだらすぐカニの餌だ。

何回か、この先は無理かな、という箇所があったけどなんとか切り抜けた。摩擦で手袋が擦り切れたが、してなかったらやばかった。
全身に疲労。

その先長い砂浜を抜けて手詰港に、これも崖を登って乗り込む。普通そんなことしない。
釣り人はちらほら、だが誰も釣れてない。こうなれば、と得意のテトラ帯によじ登り中を下りギリギリで釣りへ。
うーん、日が照ってる時間はだめそうな場所だ。ただ、沈んだあとは危険。
ある程度試すが、電車の都合もありタイムアウト。


戻る途中に港で歩き釣りしてたら極々小さなカサゴが遊んでくれた。かわいいね。瞳に僕が写ってる。

ふと見ると可動橋が跳ね上がってる!めったに見れないので慌ててたもとへ。うーん、これはすごい。面白いなあ。

途中、道の駅によって目当ての郷土食半額セールをゲット。夜が楽しみ。

戻りは土佐電で快適に。まるでモノレールのような空中電車。



一度宿に戻るか、とも思ったが、時間がもったいない、そのままバスに乗り換えて昨夜の場所、横浜港へ。
ついたらもう真っ暗、昨日で見覚えがあるので夜釣り開始も楽。
1日たって、潮の流れが変わってしまった。満潮がきっちり一時間ズレている。そのせいか、海の中の濃密な気配がない。えー。

こんだけ釣りをやっていると、釣れそうなときって結構その雰囲気があって、水の中の糸で潮の流れや塩分濃度や温度の変化がある程度わかるんです、釣れそうな時は、水が重く感じ始めて、それが動くとき。脈釣りならではの感覚。

この時は昨日よりも水が軽くて動きが浅い。これだとアカンかな、と思っていたら、昨日もよく遊んでくれたコトヒキがきた。このひとは、鈎を咥えると、最初にプルプルプル(3回くらい)、と小刻みにクビを横に振る動作ですぐ分かる。



楽しいんだけど、もうひたすらコトヒキ祭り。しかもこの子達はガッツリ咥えるので鈎外しが結構面倒。指先が痛くなってきた。

ひとり、喉奥までかかってしまって、こういう時は鈎を残して糸を切って戻せば自然と鈎は外れるのだが、結構大きかったのでキープに。

昨日の得場所、全然駄目で、昨日駄目だったところに移動、もう時間はない。
違うアタリで??となったらチビチビのチヌ。ははは、可愛い、けど立派に鯛の形。
ありがとね。

もう時間ねえぞ、というときに、ひったくる感じの強い引き、なんだ?
またコトヒキでした、が、体も分厚くて強い個体。これもキープに。

時間だ。バスに飛び乗って、さあてどうしようかと思うと結構離れたところに深夜スーパー発見。行くしかない。
宿近くにスーパーがなくて困ってたが、これで満足。刺身の半額沢山。クジラや室戸湾の金目鯛とか県産鰹の叩きとか激安。
酒やなんやもかって本絞り片手に宿へ。

帰ったらまずは風呂場でコトヒキを捌く。
ナイフが岩場でヘタってて切りづらい、トイレに跪いて捌くもたたきのようになってしまった。しゃあない。
他の刺身も切り分けて、酒は南酒造の玉の井特別本醸造だ。

安い酒だが結構香りある(いらない…)。淡麗辛口日本一の高知らしい酒だ。刺し身にはよく合う。

コトヒキ、美味という情報以上に美味い。イサキの近縁だけあってしっかりとして上品ながら強い旨味のある白身。熟成無しでこの味か。

ん?と思ったんだけど、やっぱりそうだ、室戸湾の金目鯛よりもバスで10分先で釣り上げたコトヒキの方が、遥かに美味い。贔屓無しで。何度も往復食いして確かめた。
ごめん、すごいよコトヒキ。君達は通常流通しない。したとしてもキンメのようなネームバリューもブランドにもならない。
釣ったからじゃなくて、どう考えても君たちの方が美味いんだ。キンメは深海魚だからたくさんお金かけてだけど採算取るために船で網からあげたと思う。
ここにあるコトヒキは、手間暇の前に、殺す覚悟で活け〆している。処理もそうだが、こういう小魚にここまで手はかけられない。成仏させるという。殺す自覚の先に、食べる。
絶対にうまくくってやるもんね、という気合。

変な話、期待してなかっただけに、感激した。やはり、魚はすごい。

いかん、すごい酔っ払ってきたぞ。その前に各種次の日の準備をして、ホテル名物市内展望風呂を堪能してからバタンキュー。

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