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2022年3月21日のTOKYO854の放送内容です|Blooming Days -日々是好日-|倉嶋桃子

みなさん、こんにちは。倉嶋桃子です。

少し前に息子が通う公立の高校で卒業式があったのですが、今年もコロナ対策の一環で、在校生の出席がなかったため、我が家の息子は臨時のお休みとなりました。

コロナ禍の卒業式は、式次第や当日の所要時間、卒業記念に関する企画内容など、2年前まで当たり前に行われていたものが大幅に変更され今年も実施されているようです。

最近の学生さん達は、数年前まで経験できた通常の学校生活もままならなくなったことで、学生の内にしか経験できないことやお友達と学校内で一緒に過ごせる時間をより貴重なものと考えている傾向があり、親世代が考えている以上に学生時代の思い出を大切にしたいということで、SNSを意識した動画や映像制作、写真撮影などをしながら、「卒業」というイベントを楽しんでいるそうです。

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卒業式当日盛り上がる定番イベントとして、最近は「制服をみんなで投げて写真や動画を撮影する」「黒板アートを制作する」「友達と様々な写真の撮影をする」「寄せ書きをする」「好きな人から花束をもらう、またはあげる」、そして「家族へサプライズで花束を渡す」ということがあるとか。

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調査の項目で気になったのが「好きな人から花束をもらう、またはあげる」という項目。

令和世代の学生達より上の世代、または私たち親世代の卒業式定番の風習・文化と言えば、卒業関連のヒットソングの歌詞にもあるように、「制服のボタンをもらう・あげる・ねだられる」ということがありますが、ここ数年はあまり見られないそうです。

2017年に雑誌「CanCam」が、高校生~大学生の10代に「卒業式に第二ボタン文化」についてのアンケートを行った結果、その「第二ボタンの文化がある」と答えた割合は34%、「聞いたことはあるけど実際はない」が53%、「聞いたこともない」が13%。

この「第二ボタンの文化がない」または、「知らない」の割合が、当時すでに7割に近い数字であったということですが、この結果について、学校の制服が詰襟の学生服からブレザーの学校が増えてきているので、なぜ「第二ボタン」なのか意味が分からないのではないか、LINEをはじめとしたSNSや連絡手段の進化により、卒業したら「別れてしまう」という特別な節目と捉えていないからではないか、と分析されていました。

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確かに、制服がブレザータイプであったり、そもそも制服がなく私服の学校だったりすると、「第二ボタン」という文化がしっくりこないということも分かります。
また、最近のSNS事情から考えると、ボタンのやり取りは少し見た目にも地味ですが、花束のやり取りの方が「映える」ということもあるのかしら…?とも思いますし、どうなんでしょうか?

なお、ブレザータイプの学校は、「ボタン」ではなく、ネクタイや校章をあげるということもあるそうです。

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さて、この「学生服の第二ボタン」、詰襟の学生服の上から二番目のボタンのことを言いますが、この「第二ボタン」をあげるという意味は、「自分にとって大切な人」という意味、つまり「好きな人」という意味となります。

では、この「学生服の第二ボタン」をあげたり、もらったりするようになった由来とはどんなことだったんでしょうか?

調べてみると、一般的に広まっている話としては「映画」によって広がったという説があります。
これは、1960年「予科練物語 紺碧の空遠く」という映画の中で、予科練生が特攻隊の出撃を控え、胸の第二ボタンを引きちぎって思いを寄せる少女に渡す場面があり、原作にも脚本にもない故井上和男監督の演出だったそうで、その演出について、2008年のインタビューの中で「一番心臓に近いボタンでしょ。」と、第二ボタンを渡した演出理由について答えている、というところから広がった説のようです。

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ですが、大手学生服メーカー「トンボ」で研究員時代に、「第二ボタン」について調査したユニホーム研究家、佐野勝彦さんによると、違う説を唱えています。

佐野さんの独自調査によると、「北関東のとある校長先生が話した逸話」に関係があるとのこと。
戦後、全国の新制高校の校長先生が集まった際、戦争末期の教え子に関する話を次のようにしたそうです。

出征した兄の帰りを待つ義理の姉に恋心を抱いた同居の弟が、遅れて戦地に赴くことになった際、物資不足で軍服ではなく学生服で出征することなり、「自分の分身として大切にしてほしい」とその義理の姉に第二ボタンを渡したという内容でした。

その話に心を動かされた全国の校長先生が、各校に持ち帰り生徒たちに語り、やがて別れの季節の恒例行事のように定着していったとのこと。

軍隊には、同様の慣例があったそうですが、全国に知られるようになったのはこれ以降と佐野さんは考え、この説を卒業式の「第二ボタン」をあげたり、もらったりする由来とみています。

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また、佐野さんはその「第二ボタン」の文化が衰退していった時期について、「女子高生の援助交際やルーズソックスが話題になった。規範が崩れ、若者から初々しさがあせていった。」として、1995年頃ではないかと推察しています。

制服の歴史を見てみると、1980年代半、都内の私立女子高でブレザーにタータンチェックスカートを合わせた制服が登場し、以後多くの学校でブレザータイプの制服が採用されるようになり、1990年代にはブレザー化が浸透し制服のカラーバリエーションも増え、DCブランドの制服なども登場。

1990年代半ばになると、ブレザータイプの制服を着崩した独特の制服ファッションが大流行。男子はズボンをずらして履く「腰パン」スタイルや、女子は極端に短いスカートにオーバーサイズのカーディガン、ルーズソックスをあわせるスタイルが定番になるなど、佐野さんが推察しているように、学生達の考え方も意識も大きく変化した時期なのかもしれません。

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そう言えば、私の中学時代の卒業式では、男子は詰襟の学生服でしたので「第二ボタン」の文化はあり、モテる男子は、ボタン以外にも詰襟の襟についているカラーや、通学に使っていた学生鞄、愛用の文具用品、学校のジャージ、部活で使用していた関連用品など、ありとあらゆるものをねだられていたということがありました。

我が家の息子は来年高校3年生。詰襟の学生服が制服ですが、この「第二ボタン」の文化が残る学校なのかどうか、実際に私も見聞きできるかと思うので、一年後ではありますが卒業式が楽しみです。

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さて、今日のBlooming Days-日々是好日-は、3/20が「上野動物園開園記念日」だったということで「上野動物園」をテーマに、祝日特番形式でディレクター小出と共にお送りいたしました。

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本日の放送内容

番組内のトークの合間に挿入された楽曲は、Spotifyのプレミアムプランのユーザーであればフル再生、無料プランのユーザーは30秒まで聴く事が可能です。また、スマートフォンもしくはデスクトップアプリからのみ再生が可能です。ブラウザでお聴きになりたい方はプレリストをおためしください。

本日のプレイリスト

皆様からのメッセージをお待ちしております

番組では皆様からのメッセージをお待ちしております。
番組で取り上げた内容のご感想など、ぜひお聞かせください。

番組の構成上、時間の都合でリクエスト曲にはお応えできない場合がございますが、なにとぞご容赦ください。

今週も皆様にとって素敵な1週間になりますように。

参考資料

卒業式、第2ボタンはもういらない? 大人は知らない…Z世代が“あげる”もの(山口 夕依) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81098?imp=0
「第二ボタン」はもう古い!? 令和の卒業式の定番は「花束サプライズ」 生花店も驚き 「急に増えて…」(ラジトピ ラジオ関西トピックス) – goo ニュース
https://news.goo.ne.jp/article/jocr/life/jocr-raditop-416699.html


卒業式に第二ボタンをもらう由来は?意味と今時の事情も | 花凛雑記
https://karin-zakki.com/sotsugyousiki-dainnibotan-2528
今の10代「卒業式に第2ボタンをもらう文化はない」人が約7割
https://cancam.jp/archives/260649
第2ボタンはもう古い!?世代で変わる「卒業あるある」と芸能人の卒業式エピソード|静岡新聞アットエス
https://www.at-s.com/life/article/ats/1036486.html
悲恋 卒業式「第二ボタンください」の起源とは 出征の逸話と心臓の近さ|文化・ライフ|地域のニュース|京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/29392
学生服・制服の歴史|カンコー博物館
https://kanko-gakuseifuku.co.jp/museum/history_uniform

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