Yahoo知恵袋とゴリーモ

 仕事中、EXCELの機能で知りたいことがあったのでネットで検索した。すると、私の疑問と同じ内容で質問しているYahoo知恵袋がヒットした。

Q「Excelで○○って出来ますか?」

A「出来ないんじゃないスかぁ?」

Q「ありがとうございました(ベストアンサー)」

 スかぁじゃないんだよこの野郎。屁かお前はスカしやがって。忙しいさなかにキーボードを叩いたのはお前の毒にも薬にもならない感想を聞くためではないぞ。なぜこれがベストアンサーなのか理解に苦しむ。

 何の役にも立たない回答ではあったが、これがきっかけとなり、遠い昔の懐かしい出来事を思い出した。ゴリーモのことだ。

 話は10年ほど前に遡る。私はとある地方の私立中学校で数学の教師をしていた。

 当時の私は髪が短かった。スポーツ刈りではない。五厘だ。五厘刈りの坊主頭でムキムキだったため、生徒たちに付けられたあだ名が『ゴリ』だった。

 話は変わって、クラスに井元という男子生徒がいた。井元も私に負けず劣らずの短い坊主頭だったが、彼の場合は頭の形が少々イビツだったため、みんなから『イモ』というあだ名で呼ばれていた。

 私が授業で「この問題解ける人?」と聞くと、イモはどんなに難しい問題でも必ず「ハイハイハーイ!」と猛アピールで手を挙げてくる。だからイモを当てる。イモは勢いよく立つ。すると恐ろしく均整のとれた敬礼で「分からないと思います!」と答える。いやそれ感想だろと。じゃあ何で手を挙げたんだと。このやり取りはもはや様式美ですらあった。

 そういうおちゃらけた男子生徒は授業の進行には邪魔なだけだが、不思議と私とイモはウマが合った。立場も年齢も違うが、まるで年の離れた仲の良い兄弟のような関係だった。

 イモと私で『ゴリーモ』というロックバンドを組み、文化祭で一緒に歌ったのは良い思い出だ。イモはすごく歌がヘタだったけれど。

 そのイモも今は立派に成人して、つい先日イモから結婚式の招待状が届いた。私に学生時代の恩師としてスピーチをして欲しいらしい。嬉しさと同時に「私も年を取ったものだ」と感慨深い気持ちになった。

 もちろんスピーチなどする気はない。そもそもイモの結婚式にも行かない。なぜならウソだからだ。イモなどという男子生徒は存在しない。私が地方の教師だった事実はないし、教員免許も持っていない。さらに付け加えるなら数学などヘドを吐くほど嫌いだ。

 何がゴリーモだフザケてんのかこの野郎。フザケてんのは私だろこの野郎。

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