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上阪徹・小山龍介対談|在宅勤務時代のライティングスキルー副業・自己表現のための生きた文章の書き方

今回のゲストは上阪徹さん。ブックライターとして数多くの本を世の中に出し続けている超人です! 最近はブックライター塾を開講し、多くのライターを輩出しています。

在宅勤務時代、自宅で過ごす余暇の時間が増えていきます。その時間をもちろん、楽しみにのために使ってもいいのですが、副業や自己表現に使う人も増えています。なかでも文章ライティングは、特別な機材もいらないという意味では、誰もができる「仕事」でもあります。

しかし、その奥行は深い。「いい文章」を書こうとすれば、際限がありません。そんなライティングテクニックについて、上阪さん直々にお話を伺います!(小山龍介)

「ブックライター」

小山龍介(以下、小山) 上阪さんの肩書である「ブックライター」という職業は、昔からあったものなんですか。

上阪徹(以下、上阪) 昔は「ゴーストライター」とか言われたんです。聞こえが悪いですよね。

でも、昔から著名な方々の代わりに本を書いている人は実際にたくさんいたんです。けれども「ゴーストライター」と言われているうちに、この世界を目指す人が減ってきてしまいました。

いいライターさんがいなくなるといい本もできなくなるので、困った講談社の方から「なんとかなりませんか」と言われたんです。じゃあ名前を変えましょうということで「ブックライター」にして、私はほかに自分の本も出して塾も広げてと3本立てです。

小山 今、塾は何期目になりますか。

上阪 7期を春にやるはずが延期になって、秋の開催予定です。

小山 上阪さんがブックライターという肩書、ブランドを普及・啓発しているという立場でもあるんですね。

上阪 一応はそうですね。いい仕事なので、ぜひこの仕事に入ってきてほしいということで、宣伝マンをやらせていただいています。

小山 海外ではふつうに、たとえば本の表紙にライターの名前が載りますよね。

上阪 そうなんですよ。海外では併記をするのが普通なんです。

小山 ところが、日本の場合は「ゴーストライター」という扱いです。よく「編集協力」などと書かれていると、出版業界の人は「この人がライティングしたんだな」と推測する。

上阪 5分、10分を惜しんでいる経営者の方々が自分で書くのは大変なので、当然ライターを立てたほうが話が早い。ですから、アメリカのように併記したほうがいいと思うんですが、業界の慣習でなかなか難しい部分があるんだと思います。

小山 上阪さんは、これまで何冊出されているんですか。

上阪 ブックライティングの本が約80冊で自分の本が39冊ありますので、合わせて120冊ぐらいです。

小山 インタビューなどの取材を別として純粋にライティングの場合、1冊にだいたいどれぐらい執筆時間がかかりますか。

上阪 月に1冊ずつ書いているんですよ。

小山 すごい!

上阪 ブックライティングの本と自分の本とで、基本月に1冊ずつ、ずっとスケジュールが入っています。

小山 プロフェッショナルとして、そこはペースを崩さずですか。

上阪 ペースを崩さず。ノウハウやスキルがあれば、ちゃんと月に1冊ずつ本を書けます。

小山 すごいですね。今日は、ライターを志望されている方はもちろん、普通のビジネスマンの方もけっこうご覧になっています。

これからの兼業や副業の時代には、文章力が以前にも増して重要になってきたと感じています。ですから、ブックライターになりたい方はぜひ目指していただければと思いますが、もう少し幅広くお話を聞いていきたいと思います。

「いい文章」のお手本を自分で決める

小山 まず最初の質問は、プロの方や出版社の方、そして読者が、いい文章と悪い文章を判断する基準です。「いい文章」とはどんな文章なんでしょう。

上阪 のっけから身も蓋もないのですが、文章は正解がないんですよね。同じ文章でもNGを出す編集者もいれば、すばらしい文章と言う人もいるんですよ。だから、「いい文章」は人によって違うんです。

小山 じゃ上阪さんであっても、やはり編集者との相性によって違いがありますか。

上阪 あります。

結局、「これがいい文章だ」と自分でお手本を決めるしかないんですよね。これを定義していないと、永遠に誰かのなんとなくぼんやりしたいい文章みたいなものを、追いかけ続けなければならなくなってしまいます。

小山 上阪さんの定義を教えてください。

上阪 20数年間定期購読している『AERA』という雑誌が、僕のお手本なんです。朝日新聞系の総合週刊誌ですが、漢字とかなの適度なバランスがいい。朝日系ですからちゃんと調べて書いていますし、文章の論理構成がいい。あとは一般の方が読みやすいような語彙(ごい)の使い方がいいんです。

小山 『AERA』は変な癖もないし、すっと読めるし品がありますよね。

上阪 そうです、品があるんですよ。あれこそ、僕がいちばん目指したかった文章です。そこでいくと、わかりやすくて理解しやすくて内容がさっと頭に入ってくる文章が「いい文章」だと思っていますね。

小山 たとえば情熱的なとかほとばしるような文章は、それはそれで好きな人もいる。けれども、上阪さん的にはもうちょっとクールな感じがいいということですかね。

上阪 文章は、なにがしか目的があったり誰が読むか想定したりして書きますよね。文章というのは、その目的を完遂するための単なるツール、道具でしかない。道具にこだわってもしょうがないですよね。大事なことは何を伝えるかであり、誰に伝えるかなのです。

目的とターゲットを決める

小山 上阪さんが基本的に想定している読者のイメージというのはありますか。

上阪 毎回ターゲットが変わるんです。自分の本を書くときに、たとえばこの最新刊『職業、挑戦者~澤田貴司が初めて語る「ファミマ改革」~』(本を掲げる)のターゲットにしたかった人と、これ(『マイクロソフト 再始動する最強企業』を掲げる)のターゲットにしたかった人は違います。

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『職業、挑戦者~澤田貴司が初めて語る「ファミマ改革」~』上阪徹、東洋経済新報社 (2020/5/22)

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『マイクロソフト 再始動する最強企業 』上阪徹、ダイヤモンド社 (2018/8/9)

その本によって書く目的は違うし、ターゲットは変えて書かないといけないわけです。真の目的とターゲット=伝えたい人をはっきり定めないと文章が成立しないので、毎回全部設計します。

小山 すごい! やはりプロですね。

上阪 これをやらないと、どんなに情熱的に書いても、受け手に伝わらないんです。これは多分、ブログを書くのも同じです。たとえば小学生と大学生と50代のサラリーマンでは感覚もまったく違う。世の中の全員には刺さらないですから、「今回は30歳のサラリーマン男性に向けて書く」とか定めてしまえばいいんです。

小山 ちなみに澤田さんの本はタイトルに「挑戦者」とありますが、どういうターゲットを考えられたんですか。

上阪 これはちょっと複雑なのですが、メインのターゲットは基本的に起業家や経営者です。けれども、澤田さんは、ファミリーマートでお買い物してくれる人に読んでほしいと思っているので、頭には起業家や経営者を描きながらファミリーマートのファンの方に向けて書きました。

ですから、中身はめちゃめちゃ熱いですよ。こういう人が経営しているなら行ってみようかというファミリーマートのファンの人もいると思います。そんなふうに広がっていけばいいなと思っています。

小山 すごいですね。汗がほとばしっている感じがしますもんね(笑)。

上阪 ほとばしってます(笑)。語録がすごいので、文章もほとばしっていますよ。

文章は読み手のためにある

小山 先ほどの、好きな文章を「いい文章」として定めなさいという言葉は、一歩間違えると自己満足の文章をずっと書き続けることになりますよね。

上阪 それは気をつけないといけない。

小山 目的に合わせてその都度、文章のかたちも違うし内容も変わってくる。

上阪 文章は読み手のためにあるんです。文章は自分のためじゃなくて相手のためにある。

小山 この言葉は重いですね。

上阪 これを理解しておくと、ちゃんと相手に寄り添えるんです。たとえば今リモートワークをやっている人に、これこれについて教えてと言われたとします。この人はきっとこのぐらいまでしか知らないはずだから、ここまで書いて送ってあげようと思うか、このぐらいでいいだろうと思って送るか、思いやりの問題ですよね。メール1本、Slack1本、全部そうです。

小山 これはちょっと、一筋縄ではいかないですね。相手にどう受け取られるかを考えながら書かないといけないから、かなり高度な技術です。

しゃべるつもりで書く ー見た目とタイミングとエピソードー

上阪 実は皆さん、日常会話でそれをやっているんですよ。ですから、しゃべっているつもりで書けばいい。文章になると、みんな急に文章を書こうとするんです。

小山 ちょっと肩ひじ張って。

上阪 こういう感じ(姿勢を正す)になって、過剰に丁寧になったりするんですが、それはいらないんですよね。読んでいるほうは、用件を早く知りたいわけです。

ですから、用件を1、2、3と箇条書きで書いてあったほうがいい。本気でそう思います。もっと言うと、たとえばメールをダーッて改行なしに送ってこられると、見にくくてしょうがない。文章の見た目を整えたほうがいいんですよ。

改行してスペースをとって、メインの伝えたい内容を明確にする。箇条書きだと、パッと見たらわかるじゃないですか。余計な言葉が過剰に入っていたり、改行なしでギュッと詰まっていると読みにくい。

ですから、文章は見た目。あとはタイミングです。みんな月曜日の朝や金曜日の夕方は忙しいから、面倒なメールは送らない。相手の行動パターンをある程度理解できていれば、たとえば昼休みの前に送って昼休みの間に読んでもらえばいいと考えるとか、タイミングを見計らうんです。あとはいっそのこと、今から電話していいですかとメールして電話してしまう。

小山 それは、もはや文章でもないですね(笑)。

上阪 全然。文章でもない(笑)。でも、文章はそのぐらいのものなんです。みんな文章をかいかぶりすぎていますが、文章はツールのひとつであって、より良くスムーズにビジネスなりコミュニケーションが進んでいけばいいんです。

そのためには、文章を組み合わせればいいし箇条書きでいいし、電話をしてもいいし。タイミングを見計らうほうが、僕はよほど大事だと思います。

しゃべるつもりで書くと、よほどひどい文章でなければちゃんと伝わります。「印象に残るような感謝のメールはないですか」と聞かれるんですが、具体的なお礼を書けばいい。ご飯をごちそうになって「あのステーキおいしかったです」とか、それを書けばいいんです。エピソードを1個入れるだけで、感謝の気持ちは圧倒的に伝わります。

小山 上阪さんは塾もされていますが、どうやって文章をトレーニングすればいいのでしょうか。

上阪 文章は、実は「素材」から成り立っているんです。「事実」「数字」「エピソード」の3つの素材です。難しい表現もいらなければ慣用句もいりません。ビジネス書でも新聞でも『AERA』でも全部、この3つの組み合わせでできています。

小山 メールを書くときに事実と数字以外に、「あのステーキおいしかったです」みたいなエピソードがちょっと入っていると相手に伝わる。そうすると、ポイントはエピソードのピックアップの仕方にある気がします。

上阪 エピソードが入ると、親近感やその人の個性がグッと出ますよね。実は、僕は自分に文章力があるとはまったく思っていないんですが、素材をつかむ力はあると思っています。

小山 目利きですね。「これだ」みたいな。

「あとで書く」ことを考えてメモをとる

上阪 たとえばレストランに行ったときに、この後どういうエピソードが残るのかということは、いつも頭にあるわけですよ。何もしないと全部忘れてしまいます。それで、出てきたワインの銘柄などをスマホにメモするんです。

そして、後でお礼のメールをするときに「〇〇のワインがおいしかったです」と銘柄を入れて送る。

小山 「これが重要だ」と、ピンときたエピソードをメモする。

上阪 アンテナを立てておくんです。小学校の参観日に行ったら、300字ぐらいの感想を求められるでしょう。

小山 そうですね。ちなみに上阪さんのお子さんと私の子どもは同じ小学校に行っています。参観日に行くと、親が感想を書かないとならないんです。

上阪 「上阪さんは書く仕事だから、あっという間に書いてしまうんでしょう」と言われて「3分ぐらいかな」と言ったら「えー、なんで!」と仰天されました。

僕は参観日に行ったら、どんな絵が飾ってあってどんな習字が飾ってあるとか、全部メモしているんですよ。その場で感想もメモします。ネタがあるので、あとで300字にするのはお茶の子さいさいです。それがないと、「なんだったっけ」になってしまう。結局、素材です。

僕は「あとで書く」ことを考えながら行動しているので、常にそこに意識が立っているんですよ。何がおもしろいのか、何が書くにふさわしい素材なのかをいつも考えています。

小山 エピソードはその場に落ちているんですよね。今やネットを調べればなんでもわかると言われていますが、エピソードだけは現場に行かないと拾えない。Twitterも、実際にソースに当たらないと本当かどうかわからない。アンテナの張り方が、文章力というか伝わる文章を書くためのポイントになるんですかね。

上阪 電車に乗ったら、ブログのネタの宝庫ですよ。なんでこの人は白い眼鏡をしているんだろうから始まって、妄想がいろいろワーッと広がって(笑)。

小山 すごい(笑)!

上阪 おもしろがろうとする力というか素材にアンテナを立てる力。たとえば商談の間も、相手が「今なんかすごい、いいこと言っちゃってる」と思ったら、それをちゃんとメモしておきます。

後でメールをするときに「あのひと言が良かったですね」と書くと、絶対喜ばれますよ。どんな過剰な丁寧な言葉より、向こうには全然響く。「ちゃんと聞いてくれている」と思ってもらえるんです。

小山 それは、ブックライターとして本を書くときのインタビューのコツでもあるわけですね。

相手が話しやすいことから聞いていく

上阪 インタビューするときにメモをとる行為は、相手に対する敬意なんです。自分がしゃべっているときに誰かがメモをとってくれたら嬉しいじゃないですか。その姿勢を見せておくことはすごく大事で、それで気持ちよくしゃべってもらうんです。

小山 質問の仕方も、すごく工夫されているんですよね。

上阪 話しやすい話から入っていって、だんだんエンジンをかけていきます。のっけから「あなたにとって仕事とは」と聞かれても、答えられませんよね(笑)。

小山 急に言われてもね(笑)。

上阪 それこそ数字がいちばんしゃべりやすいので、初めは数字に関わることから入っていきます。そういうしゃべりやすいことから入っていって、流れを切らないようにつくっていくんです。それで気持ちよく2時間しゃべってもらいます。

小山 インタビューしにくかったケースはありますか。

上阪 しゃべり倒す人がたまにいるんですが、時間内に終わらないので困るんです。

ひとつ聞くとワーッと、全然関係ないこともしゃべられてしまう。それには撃退する法がありまして、すーっと手を挙げるんですよ。これは不思議なんですが、しゃべっている最中に言葉でさえぎると嫌がられますが、視覚でさえぎると「え?」となって、しゃべるのが止まります。そこで、すぐ話を切り替えてもとに戻すんです。これは奥の手なんですけれどもね(笑)。

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