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ブルームコンセプトは、コンセプトで世界を変える(Concept-driven Innovation)を掲げて活動をしてきました。コンセプトが一貫しているということは、例えば企業が事業を継続するためにもとても重要なことです。

しかし一方で、一度決めたコンセプトに縛られてしまうということも起こりえます。コンセプトが透けて見えるようなブランドは、どこか興ざめしてしまいます。それは、あざとさに対する違和感かもしれません。生み出したものから再びコンセプトも揺らぐような、作品とコンセプトが相互編集されていくようなコンセプトを、建築家の青木淳は「フラジャイルコンセプト」と言います。コンセプトやルールを決めたとしても、できあがるものがそれをオーバードライブして書き換えていく。そういうコンセプトを構想しました。

一般社団法人を立ち上げたときにも、最初にビジョンを決めるのではなく関わる人の関係性の中で創発的にビジョンを見つけていくアプローチを取りました。『ビジョナリー・カンパニー』のジム・コリンズの言葉を借りれば、それは「バスの行き先を決める前に、バスに乗る人を決める」ということになるでしょう。長期間に渡って成長を続けるビジョナリー・カンパニーは、コリンズの予想に反して、ビジョンそのものではなく、むしろ誰と一緒に働くのかということに注力していたのです。

メンバーによって起こる即興的な取り組みが、結果としてビジョンとして結実していく。そこにコンセプトがどう関わっていくのか。キーワードとして「循環」をあげたいと思います。コンセプトが作品を生み出し、作品がコンセプトを上書きするような循環を生み出すコンセプト。別の言い方をすれば、コンセプトがコンセプト自身を自己言及することで、コンセプトが更新されていくようなコンセプト。

京都駅の巨大建築は、およそ京都に似つかわしくないという批判を浴びました。そこからさらに遡れば、「和ろうそく」とも言われる京都タワーもまた、賛否両論がありました。もっとさかのぼって琵琶湖疏水。南禅寺の境内を無神経に横断させた水路は、いまや観光名所のひとつとしてフォトスポットとなっています。京都というコンセプトは、決して「ただ伝統を維持しつづける」という閉じた世界ではなく、いくつもの異物を飲み込みながらその都度、更新されていきます。

この世界を更新しながら、自分自身も更新されていく。このことを「Inspiration」という言葉に託しました。「コンセプトで世界を変える」はそのままに、英語は「Inspire the World」と変えました。世界を刺激し革新し、その結果自分自身が変わっていく。そういう存在になろうということです。そしてイノベーションとはまさにそのような事態であろうと思うのです。

ここでは、未来のイノベーションを生み出す人に向けて、世界をInspireする人やできごとを取り上げてお届けしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

ブルームコンセプト 小山龍介

未来のイノベーションを生み出す人に向けて、世界をInspireする人やできごとを取り上げてお届けしたいと思っています。 どうぞよろしくお願いします。