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在宅勤務ハック 「環境整備」編

こんにちは。小山龍介です。

ここ最近、急に在宅勤務となった人も多いでしょう。これまで遅々として進まなかったテレワークが、思わぬ外的要因で一気に進みましたね。東京オリンピック・パラリンピックに向けて準備していたテレワークを、一足先に実施している、という会社もあるみたいです。

今後も、今回の病気に限らず地震や台風などさまざまな事情で在宅勤務になりうるし、企業側もより一層準備を進めるでしょう。いわゆる、BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)と呼ばれるものです。偶然とはいえ一度こうした状況が生まれた以上、ここから在宅勤務が進むことはあれ、後退することはないでしょう。

私は2008年に会社を辞めてからというもの、在宅勤務を中心に仕事、執筆、大学院での教職など複数のキャリアを積み重ねてきました。企業研修からスタートした自社事業は、さまざまなコンサルティングを提供するようになり、また文化庁の日本遺産プロジェクトをきっかけに文化財を活用した地域活性化にも取り組むようになりました。また、3つの一般社団法人の設立にも関わりました。

執筆は、会社を辞めてから15冊の本を執筆してきました。ライフハック系の本だけでなく、モチベーションやキャリア、ビジネスモデルなどの専門的な本にも取り組んできました。

客員教授からスタートした名古屋商科大学での教員キャリアは、途中准教授となってゼミを受け持つようになり、毎年少なくない学生たちのキャリア支援を行っています。

二足どころではないわらじを履き分けてきたのですが、その根底にあるのが在宅勤務でした。もしひとつの企業に9時5時で働いていたら、とてもじゃないですが実現できないキャリアです。

在宅勤務は、これまでとは違う、何倍ものアウトプットが実現できる新しいキャリアの可能性さえ秘めているのです。

キャリアだけではありません。プライベートでも、京都造形芸術大学に通学してMFA(芸術学修士)を取得したり、バンド活動、能の稽古なども行ったりしてきました。子育てにおいても、たとえば新型コロナの問題で急遽、学校が休校になったときには、子どもたちと長い時間いっしょに過ごすこともできました。

通勤しなくてもいい、あの満員電車に乗らなくてもいいという在宅勤務ですが、バラ色ばかりとは言えません。ひとつは勤務評価の変更です。マネージャーは部下の勤務状況を把握することが難しくなります。プライベートと仕事の区別がつきにくい在宅勤務では、従来のような「その時間に会社にいた」ということでの勤怠管理ではなく、成果による勤怠管理が行われるようになります。

その結果、何が起こるか。会社に来てもあまり働いていなかった生産性の低い人があぶり出されてしまうのです。そのような評価を受けないようにがんばって働く結果、実は在宅勤務のほうがオフィス勤務よりも長時間労働になりやすいという指摘もあります。

効果的な在宅勤務を行うにはどうしたらいいのか。長年の在宅勤務に基づいたハックをご紹介します。

脳の認知資源を浪費しない空間づくり

オフィスと違って在宅だと、さまざまな誘惑があります。オフィスでは仕事に関係しているものしかないですが、自宅にはテレビやゲーム機、仕事と関係のない本、キッチンにあるお菓子など、とにかく仕事への集中を削ぐような要素が盛り沢山です。生活感あふれる自宅では、仕事モードになりにくいのも仕方がありません。

実際、プリンストン大学神経科学研究所の実験でも、無秩序な状態が目に入り続けると、脳の認知資源が枯渇して、集中力を失ってしまうという結果が出ています。この脳の認知資源というのは非常に重要で、特に視覚的認知は脳のリソースを大量に消費してしまうのです。逆に散らかった作業環境を整理すると、集中力と情報処理能力が改善したのだとか 。脳のリソースを作業に集中できた結果でしょう。

そこで在宅勤務を始めた当初考えたのが、脳の認知資源を浪費しない空間づくりでした。仕事をする空間からどんどん物を減らしていったのです。『整理HACKS!』という本を書いたときには、書籍をスキャンしてPDFにする、いわゆる「自炊」のやり方などをご紹介しました。この時期、自宅から荷物を減らしていった時期でした。

しかしそうして片付けてしまった部屋は、予想に反して集中できる環境にはなりませんでした。殺風景な空間の中では、かえって集中できなかったのです。何もなさすぎて落ち着かないのです。

それで思い出したのがGoogleのオフィスでした。2004年ごろ、まだ今ほど巨大化していないGoogleのオフィスに遊びに行ったことがあるのですが、そこかしこに作りかけのPCみたいな部品が置いてあったり、エンジニアのデスクにはマウンテンバイクや趣味のおもちゃなど置かれていたりしました。もし、そうした環境が集中力を削ぐのだとしたら、さすがに彼らもそんな環境を放置しているはずがないでしょう。

最近でも、まるで自宅のリビングのようなオフィスを設計して、話題になっています。そこにはおよそ仕事と関係ないものが置かれています。CNNの記事では「窓も見えない仕切りの中で座って仕事をするような時代は終わった」という言葉が紹介されています。

つまり重要なのは、仕事と関係のないものがあるかないか、ではなく、それがきちんと整理整頓されているかということなのです。リビングのような雰囲気になっていれば、脳の認知資源を浪費することなく、むしろ認知能力を高めさえしてくれるのです。

ということで、掃除しすぎてオフィス仕様にする必要はない、いつもの快適な状態になっていれさえすれば大丈夫なのです。

スポット照明で舞台効果を出す

とはいえ、散らかっていると集中できないという人におすすめなのが、スポット照明です。全体の電気を消してデスクライトだけにすると、机の上だけが照らされます。机の上以外は目に入らなくなるので、脳の認知は机だけに集中します。部屋全体を片付けるよりも手っ取り早い解決方法です。

このときのデスクライトですが、光の質にもこだわりたい。実は近年、光の質にこだわった高機能デスクライトが次々と発売されています。

バルミューダは、白色LEDライトに多く含まれる、目に悪いとされるブルーライトを削減したBALMUDA The Lightを発売しました。強いブルーライトは網膜障害などの悪影響があり、それを回避できるのです。また、このライトは真上から照らすことによって極力影を作らない仕掛けになっており、子どもたちの学習用にと開発されました。照射範囲は手元に集中する感じで、スポットライト効果も高い。ただ子ども用なので、大人が使うにはちょっと抵抗がありますが…… 。

ほかにも、光の質を表現するものに色温度というものがあります。色温度が低ければ暖かい色の、高ければ青みがかった冷たい色になります。通常の昼白色は5000Kくらいに調整されていますが、パナソニックの調査によればそれよりも少し青みがかった6200Kが一番、文字がくっきり見やすくなるという結果があります。パナソニックはこの光を「文字くっきり光」と名付けています。さすがマーケティングがうまいですね 。

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https://panasonic.jp/light/clearlight.html

部屋全体のシーリングライトは、光の強さを調整できるものを使っていて、集中したいときには全体の明るさをさげます。デスクライトと組み合わせてスポットライト効果を演出するのです。

ダイニングテーブルをオフィスデスクに転用する

オフィスデスクの大きさを測ったことはありますか。会社によっても違いますが、おおよそ幅1m、奥行きは70cmほどの、家に置くとしたら大きめのデスクが標準です。やはり仕事をするために、それなりの面積が確保されています。ということは、在宅勤務をするのであれば同程度の大きさのデスクは必須だということになります。

しかし、そんな大きなデスク、おける家庭は限られているんじゃないでしょうか。私の家も3LDK、なんとか自分用の部屋を確保しましたが5畳ほどの部屋。大きなデスクを置いたら、それだけで場所を占拠してしまいます。

ちなみに、一般的に一人あたりに必要なオフィス面積は10㎡といわれています。これはおよそ6畳になります。このスペースを在宅勤務用に用意できるのであればいいのですが、特に都心の住宅事情ではなかなか難しいでしょう。

そこで活用したいのが、ダイニングテーブル。4人家族のダイニングテーブルであれば十分、オフィスデスクの条件を満たします。しかも、食事をする場所なのでたいてい、物が置かれておらずすぐに片付けることができます。前述のデスクライトも持ち運び可能なものを選び、ダイニングテーブルにさっと置けばオフィスデスクの完成です。

繰り返しになりますが、ダイニングルームの周りには気を散らせる(脳の認知資源を奪う)要素がたくさんありますので、集中して仕事をするときには、全体を暗めにしてデスクライトで手元だけ照らすなど、照明の工夫も必要です。

もうひとつ、職場のデスクと違い仕事の書類を出しっぱなしにはできないので、仕事が終わったらすぐに片付ける必要があります。なので、A4書類とパソコンがそっくり入るトレイを用意しておくといいですね。仕事が終わって食事をするときに、さっと書類を入れて移動できます。どの席に座ってもよいフリーアドレス(どの席に座ってもよい)のオフィスなんかでやっているような運用になります。

ちなみに、最近のトレンドとしてリビング学習というものもあります。昔は子ども部屋に引きこもって勉強していたのが、むしろ家族が集まるリビングで勉強するほうが効果的だというものです。わからないことをすぐ親に聞けますし、親の目が届かないためについ遊んでしまったりということもなく、家族間コミュニケーションが深まるのです。

在宅勤務だけでなく、リビングやダイニングの多目的化が進んでいるのです。

長時間座っても疲れないイスの選び方、使い方

ただ、問題もあります。ダイニングやリビングのスペースを在宅勤務に使うときに、一番の問題がイスです。自分の部屋であれば、高機能オフィスチェアを導入するのもいいでしょう。有名なハーマンミラーのアーロンチェアはじめ、オフィス家具メーカーからはさまざまな高機能チェアが販売されています。

この高機能チェアのニーズが高まった背景に、ゲームの長時間プレイがあります。長時間、同じ姿勢で画面を見続けるということで言えば、デスクワークの比ではないゲーム。今、イスの最先端は、オフィスではなくゲームの世界にあるのです。興味のある方は、ゲーミングチェアを導入しても面白いかもしれません。

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一方、ダイニングのイスを快適にするにはどうしたらいいのでしょうか。もちろんダイニングのイスを使ってもいいのですが、長時間座っていられるように設計されていません。一方、リビングのイスは快適すぎて、仕事のように一定の姿勢を保てるようにできていません。どちらも長時間のデスクワークにはふさわしくないのです。

そこでまず手軽な対策としておすすめしたいのが、低反発のシートクッション。たとえば、寝具メーカーとして有名なTEMPURのシートクッションは、のっぺりとした平べったいシート状ですが、低反発シートが座る人の骨格に合わせて変化してくれるのです。これであれば、長時間座っていてもお尻がいたくなりにくくなります。

しかし一番の問題は実は、別にあります。本質的な問題は、イスの高さ調整ができないことなのです。

パソコンでの作業は画面を覗き込むような姿勢になりがちで、その猫背の姿勢が骨盤に悪影響を与えるのです。「骨盤を立てて座る」というのですが、そうすることで体に変な負担をかけなくてすむのです。骨盤を立てる座り方は、椅子に深く座って背骨をしっかりと伸ばし、体重が左右均等に乗っている状態のことをいいます。そしてこの状態をつくるために重要なのは、イスの機能よりもなによりも、イスと机の高さの位置関係にあります。

たとえば、机が極端に低いと、どうしても猫背になります。逆に机が高すぎると見上げるような状態になってイスの座る位置が浅くなってしまいます。リビングやダイニングのイスの問題は、テーブルやデスクの高さに合わせて高さの調整ができないことにあるのです。

私の家のダイニングテーブルは、子どもたちの成長に合わせて高さを調整できる昇降式のものになっています。高さ調整問題をテーブルの方で解決できるようになっているのです。イスもテーブルも調整できないということであれば、パソコンの下になにか台を置いて調整するなどの方法もありうるでしょう。

ちなみに、スタンディングデスクというのも一時期、流行しました。座っているよりも立っている方が体によく、また集中力が続くということで、立って作業できるような高さにまで机を調整できるものも販売されています。個人的には、立っていると今度は足がつかれてしまうのと、資料を広げたりするスペースが狭いものが多いので、個人的に本採用するには至りませんでした。立っていても苦にならない人、資料を広げたりせずパソコンだけで完結する人などは、スタンディングデスクという選択肢もありだと思います。その場合、疲れないクッションスリッパみたいなハックがまた必要になりそうです。

目の疲労を軽減させる大型ディスプレイ

在宅オフィスでこだわりたいのが大型ディスプレイ。自分のデスクがあってディスプレイを置きっぱなしにできるのであれば、できるだけ大きな画面のものを使うといいでしょう。私は、オフィスで余っていたディスプレイを持ち帰ったという経緯から21インチを使っていますが、27インチにしておけばよかったとちょっと後悔しています。

また、デュアルディスプレイという選択肢もあります。パソコンの画面と外部ディスプレイのふたつを使えば、かんたんに面積を拡大できます。デュアルディスプレイとして使うためのパソコンスタンドも販売されています。ほかにも、MacであればiPadをサブディスプレイとして使うSidecarと呼ばれる機能も実装されており、外部ディスプレイを使わなくてもディスプレイスペースを拡張することができます。
デュアルディスプレイにする場合、ディスプレイごとに役割を与えておくといいでしょう。パソコンのディスプレイはSNSやチャット、テレビ会議などのコミュニケーション用、大型ディスプレイの方は作業といったように、ディスプレイで作業を割り当てておくと、いくつもウィンドウが立ち上がっても頭がスッキリするはずです(脳の認知資源を節約できます)。

ただ、こうして大画面にしたときに問題になるのが、マウス操作です。大画面のはしからはしまでポインタを移動させるために、何度もマウスを持ち上げて移動させなくてはなりません。マウスによる移動距離を増やすよう設定してもいいのですが、そうすると今度は細かな作業がしづらくなります。なんどもマウスを持ち上げて移動させていると、最悪、腱鞘炎になってしまうでしょう。

この問題を解決するためにトラックボールを使っています。ボールをくるくる回すだけでポインタが動くので、マウスを持ち上げるような動作がいりません。大型ディスプレイでの作業とトラックボールは切っても切れないツールだと思っているのですが、あまり選択肢がなく、そのうち人気がなくて終売になってしまわないか心配です。

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二酸化炭素濃度は1000ppm以下に保つ

集中力を削ぐ一番の環境的要素は、まずは温度。高すぎてものぼせてしまうし、寒すぎても考える余裕がなくなります。まず適温に保つこと。そのうえで、二番目に影響するのが、実は二酸化炭素。一般的に、1000ppmを超えたあたりから、思考に影響が出始めます。

外の空気はおおよそ、400〜450ppmです。それが室内になると、呼吸をしたり火を使ったりすることで、二酸化炭素濃度があがっていきます。最近の建物は特に気密性が高いため、たとえば4人家族が朝起きてリビングで朝の支度をしている間にも、1000ppmを超えてきます。本当にあっというまです。

それで一時期、二酸化炭素測定器を持ち歩くようにして、会議で参加者が疲れてきたらこっそり測ってみると、たしかに1000ppmを超えている。ときには3000ppmをも超えていることもありました。3000ppmまでいくと、集中できないだけでなく頭痛もしてきます。参加者は会議に疲れたのではなく、二酸化炭素にやられてしまっていたのです。換気をした途端、参加者の様子も会議の雰囲気も、がらりと変わりました。

そう思うと、「換気して気分が変わった」という経験、よくありますよね。こたつで眠くなるというのも、こたつの心地よさだけでなく、換気されていない二酸化炭素濃度の高い部屋にいるという要素も大きく寄与していたように思います。

とはいえ、空気は目に見えないので、知らずしらずのうちに汚染されてしまっています。在宅勤務でずっと部屋に閉じこもっていたりすると、空気の汚れにも気づかずにそのまま、作業を続けてしまったりもします。私は、空気品質モニターAWAIRを部屋に設置し、1000ppmを超えたときにはアラートが来るように設定をしています。これが非常に便利で、換気のタイミングを忘れることもなく、常にいい空気環境を維持できます。

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https://jp.getawair.com


水槽や観葉植物で、空間に適度な「ゆらぎ」を加える

在宅で仕事をしているとどうしても気が散ってしまい、カフェで仕事、という人も多いと思います。雑音がゼロという状況がかえって落ち着かないわけです。カフェのなかのような適度な雑音があるほうが、ゆったりとした気持ちになれるのです。
作家の中には、テレビをつけながら執筆するという人もいます。しかし、テレビをつけているとさすがに気も散ってしまう。どうもテレビほどの刺激ではない、しかしなにも音のしない空間のような無刺激でもない、ちょうどいい刺激が必要なようです。

このちょうどいい刺激というのを考えるとき、キーワードとなるのがゆらぎです。たとえばバルミューダの扇風機はふたつの羽が回ることで風がゆらいで、自然に感じるという仕掛けです。同じように空間においても、適度な刺激を与えてくれるゆらぎが欲しいわけです。

このゆらぎとしていくつか工夫をしています。そのひとつが、外の風景。できるだけ外の様子が見える場所で作業をするようにしています。風に揺れる木立や雲の流れ、太陽の光の変化などちょっとしたゆらぎが気持ちを和らげてくれます。昔、コワーキングスペースにオフィスを構えていたのですが、まったく窓のない部屋だったため、外の様子がまったくわからず、気が滅入ってしまいました。窓から見える風景は、重要です。

また部屋の中でも、ゆらぎを加えるツールを導入しています。それが、水槽です。カフェは、他人の存在自体がゆらぎとして存在しています。そうであるならば、水槽の中の小さな魚もまた、空間に揺らぎを与えてくれるだろう、という想定でした。

これがやり始めたらはまってしまいました。メダカを飼うようにしたのですが、一般的なものであれば値段も安く手頃ですし、世話も楽です。旅行中、数日間エサをやらなくても大丈夫なので、犬猫のように行動を制約されてしまうこともありません。春になるとタマゴを生み、それを孵化させて育てるのも楽しみです。最近ではメダカを飼うのがブームになっているらしく、こだわっていけばさらに一匹数千円から数万円のような希少メダカの飼育といった楽しみもあるようです。(個人的にはそこにはこだわりはありませんが。)

また観葉植物もおすすめです。空気の流れに合わせて揺れる植物の存在は、目にも優しく、気分を和らげてくれます。また、光合成によって二酸化炭素を減らしてくれますので、空気の質を高めてくれる効果も期待できます。

昔、松竹の新規事業開発の仕事をしていたとき、もともと倉庫だったような場所を(まさにガレージのように)オフィスにして仕事をしていました。狭い部屋で環境も悪かったため、たまらず観葉植物を置きました。狭い部屋であればあるほど、植物のもたらすいやし効果は絶大だと感じます。

それから、私は使っていませんが、バイオエタノール暖炉という選択もありますね。火のゆらぎは魅力的で、焚き火やローソクの炎のゆらぎに見入ってしまった経験は、誰しもあるのではないかと思います。その有機的な、ランダムのようで秩序もあるような状態が、心地よいのです。ただ、値段が高く、気温の上がる夏には使えないといったデメリットもあります。

部屋にデジタルな窓をつける

さて、窓もなく水槽や暖炉は難しいというときにはどうすべきか。最近はデジタル的に解決する方法があります。たとえば、元任天堂のエンジニアが開発したデジタルフレームのAtmoph Windowは、世界中の様々な風景を映し出すことができ、そこに人工の窓を設置することができます。遠くから見ると写真のように見えますが、実際には映像として撮影されており、ちょっとずつ変化しています。音声もついているので、その場の雰囲気を感じ取ることができます。

ほかにも、アートデジタルフレームのFramedという選択もあります。これはデジタルアーティストによる映像を配信するプラットフォームになっており、ダウンロードしたメディアアートをここに表示して楽しむことができます。Atmoph Windowと同様、緩やかに動く動画コンテンツになっており、空間の中にちょっとした動きを加えてくれます。

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要は、時間を感じさせるということが重要なんですね。まったくの閉鎖空間は、時間が感じられない。緩やかな一日の変化、ちょっとしたものの動きの中で時間の流れを感じることで、落ち着くようなのです。

仕事のための音楽セレクション

こうしたゆらぎの一番効果的なものが、音楽。仕事用に、プレイリストを活用しています。Apple Musicのプレイリストには、「カフェミュージック」などの場面別のプレイリストや、「勉強がはかどるビート」や「読書にどっぷり」といった目的別のプレイリストがあります。個人的に気に入っているのが、「空港での待ち時間に聴くリラックスプレイリスト」。飛行機移動が多いアメリカらしいプレイリストだと思います。Spotifyでも、「勉強」というジャンルがあり、「Music for Concentration」や「Study beats」といったさまざまなプレイリストが準備されています。

選曲の傾向としては、リラックスしたり発想を広げたりするときにはアンビエント系の環境音楽、作業を集中してこなしていくときには、早歩きくらいのリズムのビートの強い音楽がいいようです。

音楽の聴き方ですが、ノイズキャンセル機能付きワイヤレスイヤホンで聴くようにしています。大人気のAirPods Proは、キャンセリングした瞬間にふっと外部音が消えて、世界に没頭する感じが好きです。部屋の中でもエアコンや冷蔵庫の音など、普段は意識しないけれどもずっとなり続けているノイズがあったりします。そうしたノイズが消えて、仕事に入り込める感じがいいのです。

耳につけている感覚が窮屈だという人には、ネックスピーカーという選択肢もあるでしょう。SONYのSRS-WS1は、テレビを大迫力の音響で楽しみたいというニーズを捉えて大ヒットしました。この機種は残念ながらテレビ用途が中心で、スマホやパソコンとは有線接続のみ対応していますが、BOSEなどやJVCなどが出しているネックスピーカーであればBluetooth接続が可能です。

香りの効果

気持ちのコントロールで案外影響の強いものに、香りがあります。香りによってさまざまな効果があり、シチュエーションに合わせて工夫することができます。柑橘系であればスキッとさせる、ラベンダーのようなフローラル系であればリラックス、樹木系であれば清涼感、というようにです。私はフローラル系のラベンダーと、樹脂系のフランキンセンスを使っています。特にフランキンセンスは、アロマオイルの王様と呼ばれるほど、神聖な香りとして扱われています。

こうしたアロマを拡散して楽しむ機器、いわゆるアロマディフューザーにはいくつかタイプがあります。アロマポットやアロマランプのような加熱式の他に、ミストを出すことでアロマオイルを拡散する超音波式、アロマオイルを微粒子化して放出するネブライザー式などです。

加熱式だと拡散の範囲が限られ、また超音波式は水の補充が面倒です。音が少しうるさいのですが、効果をしっかり香りが広範囲に広がるネブライザー式を使っています。電源を入れるとぱっと香りが広がり、その効果を実感します。

空間に拡散する方法以外に、肌につけて香りを楽しむ方法もあります。昔から、ニールズヤード・レメディーズのアロマパルスという携帯アロマを使っています。ロールオンタイプとなっていて、ロールを肌の上で転がすようにしてアロマを塗ります。手首や首筋などにつけて楽しんでいます。種類もリラクセーション、パワー、ナイトタイム、スタディ、トラベルといった用途別に用意されています。私は、ラベンダーの香りが心地よいリラクセーションを使っています。特に出張先のホテルでしっかり疲れを取りたいときに、このオイルをつけて寝るようにしています。

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https://www.nealsyard.co.jp/onlineshopping/item/list.php?sm_id=105

ベランダをオープンカフェにする

マンションに住んでいる人であれば、ベランダにイスとテーブルを用意してオープンカフェとして活用するのもおすすめです。季節や天気を選びますが、過ごしやすい時期であれば、パソコンを持ち出してコーヒーでも飲みながら作業するのです。密閉空間で長時間仕事をすると気が滅入ってくるときに、こうした時間をつくる。気分転換にぴったりです。

集中力が続かない理由は、同じ場所で仕事をし続けることも原因ではないかと思っています。カフェで仕事をするときも、集中力が切れたら次のカフェに移動して作業する、なんてこともやります。在宅であっても、仕事のできる場所をいくつか用意して、時間やタイミングによって作業する場所を変えていくものいいでしょう。

他にも、防水のKindleを使って、お風呂に入りながら情報のインプットをするなんてことも考えられます。キッチンでスタンディングでの作業もありでしょう。うちの娘は、トイレにこもってKindleを読むことがありますが、1人になれる空間としてトイレさえも活用できます。家の中にも実はいくつもの作業場所が存在するのです。

環境と意志 〜意志で集中するな、集中してしまう環境をつくれ〜

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