郷愁におそわれて
日が長くなった最近の夕暮れ。
思いの外早く家に帰れて夕方にしては明るい18時の窓の外を眺めながらビールを飲んでいると、とてつもない寂しさが込み上げてきた。
実家を出て約半年が経ち、同棲生活もとっくに慣れた。
ほんの一年前くらいに、結婚をせかす母に、冗談めかして
「出ていって欲しいの?」
というと母は間髪入れずに
「いつまでだって一緒に暮らしても良いんだよ」
でもね、タイミングを逃してはいけない、というような旨のことを続けて諭した。
夕方にこたつで寝落ちして、なんとも言えない時間に起きると母がドラマを見ている。
母と、家族と過ごした当たり前の日々があんなにも当たり前の日々がもう戻らない。
姉妹と深夜番組を見ながらお風呂に入れ、いやそっちが先に入れと言い合った。
親が、きょうだいが、壁の向こうで眠っている、一つ屋根の下で生活している。
あまりにも当たり前にあって安心しきってあまりに窮屈で赤裸々で。
ふと、帰りたいな、と込み上げてくる。
全部やめて、帰りたいな。
彼とも別れて、このアパートも捨てて、帰りたいな。
おかあさんと暮らしたいな
ずっとずっと、前までみたいに暮らしたい
ぜんぶいらない、おかあさんと暮らす。
でも、そんなことは決してしない。
今の生活はとても満足している。
実家で暮らす不便さ、窮屈さ、不自由さだって知っている。
込み上げたノスタルジーに、心臓のあたりを締め付けられて、ほんの少し涙がにじんで、ぬるいビールを飲み干してスーパーに買い出しに行く。
その2日後に生理がくる。
生理前というのは、女性をここまでナーバスにするのか、というはなし。
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