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ど・ストレート

私の父は、何事にも超直球な人だ。近年、そのストレート具合にますますシャープさが増している気もする。免疫のない人は、最初は面食らうかもしれないけれど、人より少し、いや結構、うーんと、超ハートが強くて冷静な目でこの美点を理解できさえすれば、清々しささえ感じると思う。多分、こういう人、滅多にいないと思うから。

以前、父について、こんな記事を書いた。

一点の曇りもない人。私はそういう人に育てられた。もしかするとこういうことは、人生の門出で両親への手紙等で伝える内容なのかもしれない。そう思って、さっき手帳をパラパラめくってみたんだけど、今のところそういう予定はないみたいだし、出し惜しみをしても仕方がないから、伝えることにする。今日は、お父さんを讃える日!

あ、音楽とスポットライトをお願いしまーす。そんな感じでOKです。

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お父さん、お母さん、私達兄妹を何不自由なく育ててくれてありがとう。幼い頃、日本経済の雲行きが怪しくなり、不景気でとうさんの勤めていた会社がとうさんした時だって(ふざけてないよ!)、我が家の空気が深刻になることはなかった(というか、気がつかなかった。)。習い事も大好きな本もストップをかけられた記憶がない。溢れる食い意地とちょっとややこしい我ら兄妹を育てることは、大変なことも沢山あったと思うけれど、両親から生活を不安にさせる言葉を聞いたことがない。言わないと決めていたのだと思う。

幼い頃は、お父さんとよくお出かけをした。会社の行事に連れて行かれて、行った先でお化粧の濃いお姉さんにいじわるをされたり(多分、お父さんを苦手な人だったんだと思う。か弱きものに当たるなんてひどいよね!)、お父さんがお酒で失敗した時、ご迷惑をおかけしたお宅への謝罪に同行させられたり(ちゃっかりおやつをご馳走になり、お土産を握りしめて帰ってきた)、お父さんの眼鏡が壊れて眼鏡屋さんに修理に出すとき、私のせいにされたり(「娘が壊しました……」って。一回くらいは本当だけどね!)、みんな、私のせいにしておけば丸ーく収まるってどこかで思ってたんだよね。大人ってずるいよね。

ちょっと待って。悪口になりそうだから、気持ちを切り替えて、深呼吸。

そんな日々を過ごしていたけれど、小学校中学年くらいから、私の長い長い反抗期が始まった。きっかけはいろいろあったけれど……私は、お父さんの気持ちがわからなかった。平日は、毎日夜中遅くに帰宅し、朝早く出かけていく。休日は、昼まで寝ていることが多かった。休日なのに!動いて!やることいっぱいあるんだよ!って。……疲れていたんだよね。

疲れた体に鞭打って、兄のサッカークラブのコーチをやったり、私の部活の試合を観に来てくれたり、練習に付き合ったりしてくれた。キャッチボールとかバッティング練習とか!旅行にも連れて行ってくれたね。

いつも感謝の気持ちはあったけれど、私の反抗期は止まらなかった。……怒りに任せて壁に穴をあけるとか、手足や凶器を使うとか、そういうことはしなかった。だけど、言葉のナイフで何度も心を突き刺したと思う。沢山傷つけたんじゃないかと思うと今も胸が痛い。

ある日、そんな私を見かねて、一足先に社会人になっていた兄に超真剣な眼差しで怒られたことがある。彼は、こう言った。「いい加減にしろ。家族を養うのがどれだけ大変ですごいことかわからないのか。いいか、不景気の時も、我が家の食卓から牛肉が姿を消したことはないだろう?それって、すごいことなんだぞ。」……やけに納得した覚えがある。

私は、納得すれば早い。その日を境に、私の中の父へ反抗心が少しずつ薄れていった。こうして、私の10年を軽く超える反抗期は、牛肉によって終焉を迎えた。お父さんを救ったのは、私達の食い意地だって知ってた?……もちろん、それだけじゃないけどね。

あ、ちょっと待って。まだあるの。
いつか伝えようと心に決めていたことがあるんだ。

今もはっきりと情景が目に浮かぶこと。3~4歳の頃の記憶だ。あの日の夜、いつものように私は両親と3人で川の字になって寝ていた。すると、夜中にとても大きな地震があって目が覚めた。それは私が今まで経験したことのないくらい大きくて、部屋にあったタンスはガタガタ揺れるし、暗くてとても怖かった。

その時だ。お父さんは反射的に私をかばってくれた。守ってくれた。一瞬、何が起こったのかよくわからなかったけど、地震が静まり、少し気持ちが落ち着いた時、私は心から理解した。「私は大切にされている」んだって。

あのね、お父さん。
私はお父さんとお母さんの娘に生まれてこれたことが幸せなの。
だって、あの日から一瞬も疑ったことがないんだよ。

「私は愛されている」ってこと。

お父さん、いつもありがとう。
心から愛をこめて。

......照れ臭いから今日はこの辺で!!
お付き合いいただきありがとうございました。

編集:円(えん)さん

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