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名の知れぬ植物との生活
自分は植物が好きだ。
幼い頃から植物、特に花が好きだった。
植物が好きで小学生の頃は植物の漢字を調べて楽しんでいたと。
母や姉も割と協力的であり、植物や花のことを教えてくれたり、花屋に連れて行ってくれたりした。
鮮やかな色が並びいい香り。優しく受け止める緑。ユニークな形。
おかげで今も植物が好きで、花屋に行けば行きた心地がする。
名の知れぬ植物との出会い
しかしながらいくら花が好きと言っても、ガーデニングなどは行なったことがない。
母はベランダが狭くなり、尚且つ虫が寄ると言いあまり協力的ではなかった。そのほか観葉植物も水やりが面倒という理由で購入されなかった。
ややごねたが、大人になったら自分で買いなさいという言葉を律儀に守り大人になった。
時がすぎ自分が上京を機に一人暮らしをした際に、死ぬほど殺風景な部屋が気になった。家電はあるものの家具がほぼない。その際に過去の言葉が思い浮かびすぐに購入に向かった。植物があれば華やかになるかも?と。
しかしながら新生活の準備も進み、尚且つ埼玉にスレスレの土地に住んでいたため、あまり花屋などが少なかったのだ。あっても観葉植物は少なく、逆に大きな鉢の植物が大量にあった。
消沈して他の新生活商品を買いにダイソーへ向かったが、そこでは小さな観葉植物が販売されていた。
植物も百均で買える便利な時代と、そんなものまで揃えているのかと大いに驚いた記憶がある。
こんなこんなで購入した植物がこれ
![](https://assets.st-note.com/img/1697178510809-vOQDkXIIY5.jpg?width=1200)
名の知れぬ植物との生活
購入したはいいが購入した瞬間からこの植物の名前がわからなかった。
ものは基本的に名前を呼びたいタイプなのだがかなり迂闊だった行動を反省した。
そして自分は、愛着のあるものに関しては密かに名前をつけ、その名前を呼ぶ傾向にあった。
具体的には、いつも使っているケータイはオスカー、PCはセシリア。
リップクリームやハンドクリームなどはいつも持ち歩いているもの4つまとめて
パセリ、セージ、タイム、ローズマリーと
スカボローフェアに因んだ名前を名付けていた。
厨二病もここまでくれば清々しい。
さて、当然の如くこの植物にも名前をとりあえずつけた。
ユキヲである。
ユキヲはジェンダーレスな名前であるのでもってこいだ。
ユキヲは生命力が強い植物だった。
数日に一度の簡単な水やりで大丈夫であり、萎びてきても葉焼けしてしまったとしても、水さえあげればケロッと回復している。
面倒くさがり屋な自分にも頼もしい存在だった。
いつしかユキヲに向けても話しかけるようになっていた。
「君は俺だ」と。
植物に話しかけるのは割と良く、どこかの番組でも科学的根拠があると以前耳にした事がある。なので特に不思議には思わなかった。
独り身の部屋から話しかける声を聞いて、不気味に思う同じマンションの住人以外には。
ユキヲの成長、自分も成長
さてそんなユキヲとの生活はもう3年以上にもなる。
この3年で、自分は仕事も夢も、恋愛もお金もビジョンも、さまざまな面で無力感や絶望も何度も経験し、何度も乗り越えていた。
ユキヲはそんな自分と共に暮らしてくれていた。
成長していく側でユキヲは静かに待って見守ってくれていた。
そんなこんなで2度目の引越しの際に、ふと、植物の土を変えてみようと考えたのだ。逆に全く気が回らないのもどうかとは思うが、数々の花や植物を枯らしがちな自分がようやく気付いたのである。
植物の土を変える時、根の付近に気をつけて土をはらい、そして新しい土を入れるとのサイトの記事を見た際に、初めて土に触れて、交換を試みた。
その際に驚いた事がある。
ユキヲが窮屈な鉢植えの中で、驚くほどに根を伸ばしていたからである。
ユキヲは大して手にかけていなかったにも関わらず、一人でに成長していたのだ。
その時に以前ユキヲに話した、
「君は俺だ」
という言葉が頭をよぎった。
誰かがずっと見ていなくても人知れずに成長している。
他が枯れてもずっと頑張っている。
認められなかったとしてもしっかりと生きている。
ユキヲは何故か自分とリンクしたようで、たくましく強く生きていたことに
人知れず感動をしてしまったのである。
名の知れぬ植物と共に
さて、今日もユキヲは自分と一緒に暮らしてくれている。
最近は玄関の守護神としても働いてくれている。
日給制で、給料は水だ。
他にも薔薇やマリーゴールド、ガジュマルなんかも一緒に暮らしていて、
昔と比べてずいぶん賑やかになったと思う。
静かな一人暮らしも寂しさを感じない。
いずれまた土を変える際には今より大きめの鉢植えに引っ越しさせて、さらに大きくなるように応援をしようと思う。
だって君は俺で、俺は君なんだから。
お互いに強く大きく美しく、なっていこうと思い、今日も生きている。
一つ後悔があるとするならば、本当の植物名称が全くわからないことだけなので
いずれまた調べてみようと思う。
ユキヲ呼びは変わらないかと思うが。
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