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昭和の家

日々暮らしていると、不都合や見たくないものと向き合うことがあります
たとえば、病院のような天井
長年の間に染み付いたにおい
傷だらけのタイル
貼り付けのカーペット
べニアのドア などなど・・・

昭和に建てられたこの家は、当時のアイデンティティのまま今の空間に存在しています。
建築デザインだけでなく、当時の生活の風習までもが思い起こされる仕様になっています。
一番いい部屋は日本庭園を眺められる、お座敷と次の間。
合わせて20畳ほどの広さがあるその部屋は、ぐるりと回り廊下に囲まれて、全面がガラスの掃き出し窓。
家の南東部にあり、玄関から奥まっています。
出入口全てが障子戸になっており、雪見仕様です。

この二つの部屋、お座敷の仏壇にお参りするくらいで、ほとんど使っていません。
こんなに広くて景色もいい部屋、リビングダイニングにしたらとても素敵だろうな・・・。
それか、寝室にしてちょっとしたソファーを置けばとてもくつろげる空間になるな・・・とぼんやり考えます。

仏壇が置いてあるので、どちらも現実的ではありません。
この部屋は、ほとんど使わずに日々を過ごしています。

昔はご近所さんを呼んで、家で宴会をすることも多かったそうです。お葬式などの食事も、皆さんで炊き出しをしていたそうで、その名残のお茶わんや酒器など大量に残っていました。

家というものが自分を表すごとく、夫の父親は晴れ晴れしい気持ちで、この家にお客様を呼んだのだろうと思います。

だから、そのお座敷はやはりそのままにしておくことにしました。
部屋をぐるりと取り囲む雪見障子は、二日かけてすべて張り替えました。本当は和紙にしたかったのですが、あまりの数の多さに断念し、メンテナンスのことを考えプラ障子紙にしました。
10年たっても黄ばむことなくピンと張って、張り替えの手間はかかっていません。

家の中全体を見回すと、あちこちに不都合な箇所が見えてきます。
ただ、自分たちのこれからのこと、日々の暮らしの範囲で、問題ないと判断することも大切だと思っています。
本来、リフォームをしないと住めないくらいの家。そこにほんの少し居候をするための改善を少しずつしていくだけです。

全てをきちんときれいにしないと、住みたくないという考えもあるかもしれません。実際に、きちんとリフォームもしていない中古の家には住みたくないと言われたこともあります。
古く、理想とは遠く使い勝手の悪い間取り。何もかも傷んだ建具。確かに見たくないものかもしれません。
でも、ここに住むのを選んだのは私。
居心地をよくするのも悪くするのも、心ひとつではないでしょうか。

譲れない線はひとそれぞれ。住んでいる私はこれでいいのかなと思っています。



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