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茶の間

「お茶の間の皆さん」という呼びかけを、テレビで聞いたことがあるでしょうか?
最近私はあまりテレビを見ないので、様変わりしているのかもしれませんが、「リビングの皆さん」とは言わないんじゃないのかな。
「茶の間」っていい響きだと思いませんか?ザ、日本の和室とそこでくつろぐ家族の風景が見えてくるような気がします。

この家のちょうど中心部、台所との続きに「茶の間」はありました。こたつのテーブルを置き、座椅子とテレビ。電話と茶箪笥。
茶の間を囲む引き戸は昔ながらの木枠のすりガラス。
畳替えをして、壁の汚れはあまりにもひどかったので、キッチンと同様、漆喰を塗ることにしました。
この段階になって、急にストンとペースが落ちてしまいました。壁の漆喰も途中で止まってしまいました。
実は、そのまま数か月経ってしまいます。情熱が覚めたのか疲れが出たのかわかりませんが、自分の限界に到達してしまったのかもしれません。

以前の私ならどうしただろう。無理して頑張るか、夫のせいにするか、とにかく自分に嫌なことをしていたのかもしれません。
私にとって幸いだったのは、途中で投げ出しても夫は何も言わなかったことです。もちろん、自分の実家なのになんで妻にいろいろ考えさせるの?という考えが真っ先に浮かびました。でも、そのような考え方のクセが今までの私を作ってきていたのです。

自分がしたいからする。それでいいじゃないか。できないときもある。それでいいじゃないか。

長い付き合いになるものほど、あまり深く考えないことが楽になると思います。茶の間も出来るときに少しずつ、漆喰を塗りすすめていきました。今でも未完成の部分はありますが、気にならなければそれでいいのです。

茶の間は季節によって模様替えをします。冬の間はこたつに座椅子。梅雨の前にこたつを片付けソファーとテーブルを置きます。
今年も梅雨に入り慌ててこたつを片付けました。日中はすでに夏日になっていましたが、朝と夜は冷え込む日も多く、電気はつけなくてもこたつのぬくもりが恋しい時もあったのです。
模様替えをすると一気に夏がやってきました。庭の木々は葉も茂り影も濃くなっています。

「茶の間」と「外への掃き出し窓」の間の廊下は、畳敷きになっています。そのため茶の間の引き戸をあけ放つと、空間が広がり風通しもよくなります。このような造りも、昔の人の知恵でしょう。
ここに越して来るまで、この家にはクーラーがなかったそうです。近年の暑さは異常な感じがしますが、確かに窓や引き戸の組み合わせで、部屋の広さや形を変えられて、家の中に風を通す工夫がありました。
最近の夏は残念ながら窓を開けても熱風が流れ込んできて、クーラーなしでは過ごせません。でも季節が進み少し涼しくなると、気持ちいい風が吹き込んできます。
庭の木々が風に揺れて、その風を自分が感じることも、幸せなことだと思えるのです。


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