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セブンの生ビール提供に見る、見栄えはしないが、超有効な簒奪戦という戦い方

セブン-イレブン絡みの出来事でこんなお話が。(余談ですが、セブン-イレブンの正式表記はセブンとイレブンの間に「-」が入ります。ブランドやマーケティングの仕事している方は覚えておいて損はない小話)

かいつまんで言うと、セブン-イレブン店頭にビールサーバーを設置し、生ビールを販売するというお話です。

大企業において簒奪戦が有効なわけ

セブン-イレブンくらい大企業になると、新しい商品やサービスを売ろうとした場合、ゼロから新カテゴリをつくる商品を提案するよりも、すでにある大市場から顧客とシェアを簒奪するほうが圧倒的に打率は高くなります。

イノベーションは、言葉の響きがかっちょいいからみんな夢中で研究するけど、簒奪戦の話は響きが物騒なので研究してる人はアカデミックな人に留まる印象です。

日本の国内市場に限って言うと、これから、
・人口減
・労働所得のある現役世代の減少
・現役世代の所得水準減少

とトリプルパンチなので、カテゴリ自体が伸びていく市場が少なく、基本的に限られたパイの中で、競合からシェアを奪う簒奪戦の重要度は高まっていくのは間違いないです。

これからはイノベーション!の雰囲気だけで戦い方は決めてはいけない

もちろん業界全体がコモディティ化し、価格競争が激しくて、相対シェア上げても儲からない市場であるならば「簒奪戦じゃなくてイノベーションだろ」という意見はわかります。イノベーションおこさないと、利益とれなくね?という一見正論のような、でも少し乱暴な話です。

実際の所、俗説としてコモディティ化したと言われる市場でも、簒奪戦に成功して市場シェア上がればまだまだ儲かる市場沢山あります。事業経営の当事者であるならば、簒奪戦に成功し、市場シェアが上がったらどの程度利益でるのか?をしっかりとシミュレーションしてみるのが大事です。
「これからはイノベーションだろ」という世の中の雰囲気だけで判断しないようにしましょう。

実際に弊社のクライアント企業でも、さんざん投資家からコモディティ扱いされながら、簒奪戦によってある商品のシェアを高めたら、IRで売上・利益の上方修正を出し、簒奪戦のやり方を社内で型化して横展開し、何年も継続的に売上・利益を伸ばし続けている上場企業も存在します。簒奪戦は、結構有効なのです。


企業は簒奪戦に成功しても、メディアでペラペラしゃべらないから、話が流通しない

簒奪戦に関しては、狙いすまして顧客とシェアの簒奪を果たしても、イノベーションのように見栄えのするかっちょいい話じゃないので、企業はメディアに向けてペラペラそのまましゃべりません。簒奪戦が成功しても、表で話すときは、もっと美しい戦略ストーリーに変わります。だから、簒奪戦による成功事例は、なかなか当事者からは表に話が出ないということです。

大手企業はイノベーションにトライすることも大事ですが、同時に実際の事業投資ポートフォリオとして簒奪戦を仕掛けることを無視はできません。
このご時世、市場カテゴリが伸びている市場は少ないため、自覚の大小は別にして、現実には簒奪戦のほうが多いのが実態です。

簒奪戦の話は、世の中に流通している話が少ないため、その重要度を見誤りがちです。

イノベーションも簒奪戦も、企業の選択肢のひとつであり使い分けよう

私は別にイノベーションそのものを否定していないですし、インサイトフォースのビジネスでイノベーションを支援しているものも多数あります。(インサイトフォースのクライアントの約2~3割はレイターステージ~上場後のベンチャー企業です)
私個人で社外取締役として関わっているMinimalもBean to Bar chocolateというカテゴリは市場黎明期ですし、そもそも簒奪を狙って有効なほどの大規模な競合は存在しません。つまり、事業ステージに合わせて適切な使い分けが大事。

なんてことをTwitterでつぶやいたら、まさに!というコメント。

そう、ご自身が黎明期~成長期のベンチャー企業であったり、それを支援するVCの立場であるならば、イノベーションに傾倒し、それこそが突破口と主張されるのはよくわかり当然のことです。

しかし、成熟市場の大企業の方が、「イノベーションは、戦い方の局面のひとつ」という冷静さを失った、イノベーション一神教の言動になっているのを拝見すると、勝手ながら少し心配してしまいます。

大企業であれば、イノベーションも簒奪戦も両方必要で、そこは投資ポートフォリオとしてうまく機能させてやっていくのが大切です。

基本的に、イノベーションと簒奪戦は、そこに必要な組織文化やお作法が異なるため、箱を仕切って分けた組織でやらないとうまくいきません。このふたつは矛盾した判断基準と組織のお作法が必要になります。

よくあるのは、大企業の事業部長クラスに、その両方を求め、両方うまくいかなくなること。人は、なかなかうまく器用にさばけないので、そこはチーム分けるのがおすすめです。

簒奪戦におけるポイント

このあたりはインサイトフォースの企業秘密(笑)というのは冗談ですが、ポイントをお伝えしますと、、

商品の価値やポジショニングといった大きな位置づけに関してはは、

・簒奪する競合相手との関係において、同質化させること、差別化することの見極め

細かな戦術論に置いては、
・小売の配下店の拡げ方
・店頭の棚割り
・商品に貼るキャッチシールの内容など

簒奪を意識した細かなチューニングというあたりでしょうか。

もし、需要があるなら、そのうちインサイトフォースのホームページからダウンロードできる、簒奪戦テクニックのホワイトペーパーをつくるかも・・・もっと大きな需要あるなら、そのうち本でも書きます。

昨年~今年は2冊書いてもうヘロヘロなので、遠い将来に、そのうち(笑)

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イノベーションと簒奪戦、その重要度で言えば、フィフティフィフティなはずですが、イノベーションと違って簒奪戦の話は世の中で表に出ないため、簒奪戦の立場があまりに不憫なので書いてみました(笑)

ではでは。


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戦略コンサルタント|ブランド戦略コンサルティングのインサイトフォース代表取締役。 http://insightforce.jp/

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