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米国デジタル広告価格へのコロナウイルスの影響IAB調査結果

IAB(The Interactive Advertising Bureau)は、デジタル広告市場の育成と健全化を促進する活動を行う業界団体です。GoogleもIABの主要なスポンサー企業の一つです。

IABは、ads.txtやBetter Ads Standardsの規格を定義している団体と言った方が、サイト運営者には伝わりやすいかと思います。ads.txtやBetter Ads Standardsなどのデジタル広告に関連した規格の策定に加え、IABは市場調査なども行っています。

2020年5月28日にIABは、2019年のインターネット広告収益レポートと2020年第一四半期のコロナウイルスによる広告価格への影響のレポートを公開しました。本記事では、後者のレポートの内容を紹介します。

コロナウイルスによる広告価格への影響

調査結果の概要:

- 3分の2のサイト運営者などの広告枠販売業者は、コロナウイルスによるロックダウンが開始されてから広告販売率が低下している。
- 広告を直接販売しているパブリッシャーはプログラマティックスペシャリトよりも広告販売率の低下による影響が極めて大きい。
- ディスプレイ広告のCPMが価格低下の影響が最も深刻である。
- CTV/OTT等のインターネット接続機器の広告は最も耐性が大きい。

調査方法:

コロナウイルスによる影響が米国広告収益のどの分野にどのようにして影響を受けているかを理解するために、IABはバイヤーとセラー(広告主と広告販売業者)に継続した調査研究を行っている。今回は2回目のセルサイドのアンケートを行い、4月29日から5月11日までの期間のCPMへの影響について調査を行った。

調査回答数は173:回答者は以下の様な米国の広告売上のレポー0とや責任を持つ人々・企業・業者に対して行われた。

- パブリッシャー(サイト運営者)
- プログラマティックスペシャリスト(SSP, Ad Exchanges, 広告ネットワークなど)

パブリッシャーが約3分の2、プログラマティックスペシャリストが約3分の1です。

2020年のCPM(広告枠販売価格)のコロナウイルスによる影響

27%が大幅に下落と回答。62%の広告枠販売業者はコロナウイルス感染拡大後、広告枠価格の低下が見られていると回答。

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2020年の広告販売業者種別のCPMへの影響

2020年のオリジナルの販売計画に対するCPMへの影響についての業種別(パブリッシャー vs プログラマティックスペシャリスト)調査回答。

パブリッシャーの63%が下落と回答したのに対して、プログラマティックスペシャリストは57%と違いがある。8%のプログラマティックスペシャリストはCPMが増えたと回答。

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ウェブのディスプレイ広告が最も影響を受けている

広告種別のCPMへの影響の調査結果では、最も大きな影響を受けたのがウェブディスプレイ広告です。34%のCPM下落との回答になります。続いてモバイルアプリのディスプレイ広告が続きます。モバイルアプリは33%の下落。この2つの広告種別の下落が顕著です。

AdSenseなどで収益化を行っているサイト運営者が最も影響を受けていることになります。

3番目に大きな影響を受けたのはソーシャルメディアプラットフォームの広告になります。下落幅は18%です。ウェブとモバイルのディスプレイ広告と比べると下落幅は小さめになります。

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影響が少なかったのは、ポッドキャスト、ビデオ、検索になります。

端末種別の広告枠価格への影響

CPMへの影響が大きかったのは、タブレット、スマートフォン、パソコン(デスクトップ)がそれぞれ29%, 28%, 27%下落しています。TVに接続する端末・機器の下落幅は、上記の端末と比べて6%と少ないです。

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自宅で過ごすユーザーが多くなったため、TVに接続する端末での利用は増えることによって、広告枠の価格への影響は相殺されたと思われます。

コロナウイルスの広告枠への影響についての今後の注目点

1. 販売業者は新しいクリエイティブ(広告)を入手したことで、広告支出が加速される?
2. CPM下落はどの程度一時的なものか?
3. 再開を開始した州もあり、それによってバイサイドはどの様に素早く変化するか?
4. バーティカルカテゴリー(業種別)によるCPMへの違いはどのようなものか?
5. セラーは再参入の計画をどの様に行っているか?
6. セラーがバイヤーに対して提示できる新しい機会は何か?

IABのCPM価格への影響調査についての感想と考察

本調査は米国市場に対してのものですが、2020年第2四半期の日本のデジタル広告市場における広告枠の低下も大きいと認識しています。ウェブのディスプレイ広告が最も影響が大きく34%CPMが下落していると言う調査結果は、運営するサイト、顧客のサイトなどの広告枠の単価(eCPM)やページあたりの収益性(Page RPM)を見ても、今回の調査結果の内容と合致するところがあります。

端末別の比較では、タブレット、モバイル、パソコンともに大きく下落していて、それぞれの下落幅はそれ程違いがないというデータも興味深いものでした。

端末別の収益性への影響はサイトなどによっても異なるところもありますが、やはり今回のIABの調査結果と概ね合致するところがありました。

会社に通勤する人が減り、自宅からリモートで働くなど自宅で過ごす時間が増えることで、モバイルよりもパソコンの利用が増えるような印象もあります。サイトによってはそれほど大きな変化はありませんでした。しかし、ページの収益性などでは、大きな影響を受けたところがほとんどです。

日本では6月から収益性が回復傾向が顕著に見られるサイトもありますが、そうでないところもあります。

ブロギングライフ Off the Recordでは、今回の様な市場調査レポートなどの情報についても引き続き投稿していく予定です。


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