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彼女たちのメモ帳〜フィオナ・アップル、リナ・サワヤマ、yaeji、シェルビー・リン【月刊ブラックスワン・ジュークボックス Vol.4】

日々の新譜を紹介するソーシャルコンテンツ〈blkswn jukebox: daily〉でとりあげた作品を総まとめ!と、そのなかから注目作をランキング!さらに、紹介しそびれたシングル曲などをもセレクトした「4月に気になった曲」プレイリストに、〈blkswn jukebox: daily〉編集委員ふたりによる総括談話ポッドキャスト〈blkswn jukebox: monthly playback〉をパッケージした、4月の音楽総まとめ。


【4月のMonthly Playback】

blkswn Jukebox編集委員のふたりが先月の音楽を振り返るポッドキャストシリーズ。小熊俊哉と若林恵が、4月の気になった音源と、気になった話題についてお話します。──2020年5月8日 虎ノ門・黒鳥福祉センターにて収録

▼第1話|歌わないビヨンセはさすがです


4月18日の土曜日に配信され、世界中で話題になったオンライン音楽イベント〈One World: Together at Home〉に感じた微妙な違和感から、ドイツの音楽業界の財政支援をめぐる話題などから、なんだかもやもやするロックダウン化の音楽の現状をあれこれ考察。

0:00|心の内側に届くポッドキャストを
1:15|あれ?ロックダウン解除?
2:20|リモート取材をする
5:08|オンラインで音楽を観るのは楽しいか
10:15|One Worldのイマイチ感
13:00|ビヨンセは歌わない
16:56|“演奏”ってどうなのよ?
19:50|Zoom配信における著作権の話
22:17|「つながる」以外のもの
24:00|700億円相当の財政支援

▼第2話|彼女たちのメモ帳

「音楽を守る」と言ったとき、それは具体的には何を守ることなのだろうか。フィオナ・アップル、リナ・サワヤマ、Yaeji、そしてローラ・マーリング。それぞれの最新作に「クオリティ」と「レガシー」を受け継ぎ、引き継ぐことの素晴らしさを想う。

0:00|「音楽を止めるな」の困惑
3:09|福留孝介は真のプロ
3:56|メディアの仕事はなんのため?
6:22|文化のクオリティを救うこと
9:50|フィオナ・アップルのクオリティ
15:00|威風堂々リナ・サワヤマ
19:53|Yaejiのメモ帳
24:39|われらの娘たちへ
28:47|ヒビ割れから光が差し込む

▼第3話|シェルビー・リンの孤独を聴くこと

若林恵が4月のベスト10のなかに選んだ孤高の女性SSWシェルビー・リンとは何者なのか。その壮絶な過去と、そこかから紡ぎだされる歌と向き合うことの意味とはなにか。そこから話はダスティ・スプリングフィールドからドリー・パートン、果ては野茂英雄まで。「つながる」ことばかりに気を取られがちないま、もっと別のものと別のかたちでつながることに思いを馳せる。

0:00|The 1975のポッドキャスト
3:03|プロセスとクオリティ
5:30|シェルビー・リンの物語
16:22|つながれないことの音楽
21:16|テイラー・スウィフトの憧れの人
23:35|ドリー・パートンはパイオニア
27:40|長い線としての文化
29:35|イチローよりも野球が大事
32:37|礼賛!野茂英雄

*Anchorのリンクはこちら


【4月のお気に入りアルバム10】

小熊俊哉セレクション

1. Rina Sawayama
- SAWAYAMA
2. Yaeji - WHAT WE DREW 우리가 그려왔던
3. NNAMDÏ - BRAT
4. Yves Tumor - Heaven to a Tortured Mind
5. KeiyaA - Forever, Ya Girl
6. Laura Marling - Song For Our Daughter
7. Ian Chang - 属 Belonging
8. Tom Misch & Yussef Dayes - What Kinda Music
9. Thundercat - It Is What It Is
10. John Carroll Kirby - My Garden

▼若林恵セレクション

1. The Soft Pink Truth
- Shall We Go On Sinning So That Grace May Increase?
2. Brendan Eder Ensemble - Brendan Eder Ensemble
3. Rob Luft - Life is the Dancer
4. Local Natives - Violet Street (Remixes)
5. Yuja Wang - John Adams: Must the Devil Have All the Good Tunes?
6. Avishai Cohen & Big Vicious - Big Vicious
7. Moor Jewelry - True Opera (feat. Moor Mother & Mental Jewelry)
8. Cassowary - Cassowary
9. Shelby Lynne - Shelby Lynne
10. Grégoire Maret, Romain Collin & Bill Frisell - Americana


【4月のお気に入りシングル20(若林セレクション・順不同)】


【4月のDaily】

4月に紹介した音源を総ざらい!

【#344】Apr.1 Wed.
Knxwledge - 1988
毎月のようになにかしら投下する勤勉なる天才。Stones Throwからの最新作はソウルR&Bの粋が凝縮された流麗なビートインスト。それでも流れていく日々のサウンドトラック。


【#345】Apr.2 Thu.
Gerald Cleaver - Signs
現在のジャズ界のトップドラマーのひとりによる意外すぎるソロ作。ジャズでないばかりかドラムも叩かず。地元デトロイトの電子音楽にオマージュを捧げた摩訶不思議な前衛エレクトロ。面白い。


【#346】Apr.3 Fri.
Sen Morimoto - B-Sides & Rarities
ジャズ/ヒップホップをエレガントに融解するモリモトくんの聞き応え満載のB面/レア音源集。多彩な音楽的なアイデアをポップな楽曲に封じ込めて一瞬も飽かせない。才気煥発。にして親密。


【bonus】Apr.3 Fri.
若林恵が行ったこちらのインタビューも改めてどうぞ!


【#347】Apr.4 Sat.
Yaeji - What We Drew 우리가 그려왔
大ブレイクのEPから早3年、韓国/USを往来する才媛DJの待望作。呪文のようにぐるぐるするメロディ。汎アジアンな歌声。チルなビート。ボーダーレスエレクトロポップの新しい雛型。


【#348】Apr.5 Sun.
Bobby Previte , Jamie Saft , Nels Cline - Music from the Early 21st Century
重鎮ドラマー・異才鍵盤奏者・万能ギタリストによる豪腕サイケジャズロック。バルクール、マシンラーニングなど21世紀を映し出す10のキーワードをノイジーに音像化。


【#349】Apr.6 Mon.
NNAMDÏ - BRAT
セン・モリモトの盟友、シカゴの鬼才が爆発する音楽ビジョンを本気で披露。ポストロックからアフロポップまで飲み込むプログレッシブR&B。イヴ・トゥモアの新作と並んで今週の双璧。


【#350】Apr.7 Tue.
James Elkington - Ever-Roving Eye
フォーク需要が高まっているなかUK出身シカゴ在のギタリストが新作を投下。当代随一も過言ではない見事な演奏、精妙な楽曲、クリアな音像。現代フォークのレベルの高さを立証。


【#351】Apr.8 Wed.
Kiana Ledé - KIKI
子役として幼少期から活動してきた女優/音楽家、初の長尺作品。手堅い曲作りと品よく切ないサウンドで49分間甘やかな気分でいさせてくれるR&Bポップの秀作。A・レノックス姐の客演も。


【#351】Apr.8 Wed.
若林恵が35年来愛してきた、シン・リジィの秘蔵プレイリストを公開。
選曲のテーマは「サウダージ」。定番曲ではなく郷愁の観点からセレクトしています。ロックダウンで揺れる心のお守りにもぜひ。


【#352】Apr.9 Thu.
Statik Selektah & Termanology - 1982: The Quarantine
WHOが3月11日にパンデミックを宣言した直後に11時間のセッションを敢行、3月19日に投下された即時性のヒップポップ。その名も「検疫/隔離」。希望を歌った最終曲を、いまこそ。


【#353】Apr.10 Fri.
Avishai Cohen & Big Vicious - Big Vicious
アンビエンスを自在に操る2本のギター。情動を的確に煽る2台のドラム。その真ん中に孤独なトランペッターがひとり。ひと気のない夜の街に吠えかかるダークなニューフュージョン。


【bonus】Apr.10 Fri.
ノルウェージャズの最重要レーベルから届いた最新"隔離セッション"。ドラムとアコーディオンのトラックの上にその他のメンバーが次々と自宅で録った演奏を重ねることで出来上がった美しい音のキルト。ギターのOddrun Lilja嬢がとりわけキュート。


【bonus】Apr.10 Fri.
Avant Folkの普段のライブはこんな感じ。流麗かつ尖ってもいます。


【#354】Apr.11 Sat.
DRAIN - California Cursed
今夏のフェスサーキットで大評判になるはずだったカリフォルニアの陽気なバカども。ジャギジャギでバウンシー、古き良きスラッシュの楽しさ満載のデビュー作。勢いある!ライブ行きたい!


【#355】Apr.12 Sun.
Clarice Jensen - The experience of repetition as death
マックス・リヒターや故ヨハン・ヨハンセン等との共演で知られる女性チェリスト。豊かなテクスチャー、深い没入感に時間を忘れてしまうネオクラシカルの逸品。


【#356】Apr.13 Mon.
Ren Harvieu - Revel In the Drama
2012年のデビュー直前に突如の病気に見舞われた不遇のSSWが8年を経てセカンドアルバムを投下。レトロなサウンドに包まれたドラマチックなノワールポップは、雨景色によく合います。


【#357】Apr.14 Tue.
Nina Simone - Fodder on My Wings
長く見過ごされてきた82年作の復刻。自身が制作を仕切り思うままに想像/創造力を羽ばたかせた、ひどく重たい内容なのになぜか軽やかな傑作。羽ばたいてます。すごいです。


【#358】Apr.15 Wed.
Stay Inside - Viewing
なんともタイムリーなバンド名のNYのエモコアバンドの最新作。とんがっていながら、いやらしくないメジャー感があるのが爽快。大声でも出して日々のくさくさを発散したいときに。


【#359】Apr.16 Thu.
Meredith Monk & Bang on a Can All-Stars - Memory Game
「破滅したあとの地球の過去の文化を残すために行われる儀式」をモチーフとしたユニークな近未来SFオペラ。孤高のボイスパフォーマーが80年代初頭の作品を楽しげに/不気味に再演。


【#360】Apr.17 Fri.
Rina Sawayama - SAWAYAMA
新潟生まれロンドン育ち、ケンブリッジ大出身の異才の堂々たるデビュー作。NU METALまで呑み込んで炸裂する豪快なR&Bポップ。迷いなし怯みなし弛みなし。爆音で聴くべし。


【#361】Apr.18 Sat.
Yuja Wang - John Adams: Must the Devil Have All the Good Tunes?
ユジャ・ワン自身が2019年初演したピアノコンチェルト。Peter Gunnのような第1楽章からして滅法楽しい。「ファンクにくるまれたリスト」と作曲家が語る通りの躍動感溢れる逸品。


【#362】Apr.19 Sun.
Fiona Apple - Fetch The Bolt Cutters
ピッチフォークで驚愕の10点満点。「どんな音楽もこんな風に聴こえたことはない」の評に納得。何にも似てない。けれども親近感はある。ホームメイドがらくた音楽の未踏の到達点。


【#363】Apr.20 Mon.
Louis Prince - Thirteen
ボンイヴェール風の凝った電子エフェクトと軽快な演奏、ときにジャジーなアレンジの絶妙な配合。ナッシュビルで活動してきたSSW、Jake McMullenの別名新プロジェクト。


【bonus】Apr.20 Mon.
Bon Iver - PDLIF
ボン・イヴェールがヘルスケアワーカーへのチャリティとして新曲を公開。UKの鬼才サックス奏者アラバスター・デプルームをサンプリングしたメランコリックな美曲。


【#364】Apr.21 Tue.
Shelby Lynne - Shelby Lynne
知る限り最も壮絶な過去をもつSSW。アメリカ南部音楽の多様性を体現したソウルフルな歌を揃え、ほとんどの楽器を自身で演奏。曲を追うごとに深まる、孤高のベテランの孤独の深さに心震える。


【bonus】Apr.21 Tue.
Big Thief - Demos Vol. 1 - Topanga Canyon, CA - Feb 2018
Big Thiefがツアーを支えるロードクルーへのチャリティとして選りすぐりのデモ5曲をリリース。全曲最高です。


【#365】Apr.22 Wed.
Lido Pimienta - Miss Colombia
カナダのオルタナラテンの注目株が、自身のルーツであるアフロコロンビア文化にぐっと傾斜した最新作は、華やかでいてドリーミーなクンビア+エレクトロ+ポップ。


【#366】Apr.23 Thu.
SMTK - SMTK
鬱屈としがちな今こそ、エネルギッシュなフリージャズを。ドラマーの石若駿、「Disco 3000」にも出演してくれたサックス奏者・松丸契も参加。獰猛かつクールな実験的カルテットによる、挨拶代わりの4曲入りEP。


【bonus】Apr.23 Thu.
SMTKは5月20日にアルバム『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』をリリース予定。こちらは昨年12月のライブ映像。


【#367】Apr.24 Fri.
Cassowary - Cassowary
ウォルター・スミス3世にジャズを学んだLAの新星のデビュー作は、サンダーキャットの洗練と高校の同級生アール・スウェットシャツの三密感が交錯する濃いめのホームメイドジャズファンク。


【#368】Apr.25 Sat.
Ian Chang - 属 Belonging
Rafiq Bhatiaのバンドメンバーとして注目を集める異能の中華系ドラマーのソロ作。ドラムを電子加工して生み出すアイデア満載のカラフルなエレクトロ。ゲストにKAZUを招いた歌モノがナイス。


【bonus】Apr.25 Sat.
何がどう鳴っているのか皆目見当のつかない必見のソロパフォーマンス動画。およびアコースティックドラムで電子処理感を出すトリックの解説動画。


【#369】Apr.26 Sun.
Grégoire Maret, Romain Collin & Bill Frisell - Americana
ハーモニカとピアノとギターが奏でる追憶のアメリカ。静まりかえったこの景色は、夢か現実か、過去か未来か。ジミー・ウェッブ、ボン・イヴェールなどのカバー曲も秀逸。


【#370】Apr.27 Mon.
Brendan Eder Ensemble - To Mix With Time
LA拠点の作曲家/ドラマー率いるクロスオーバークラシック室内楽団。細密なアレンジ曲からサイケなジャズフュージョンまで、楽団の可動域をフルに使い切っためくるめくアンサンブルに酔う。


【#371】Apr.28 Tue.
Moor Jewelry - True Opera
昨年リリース作が高評価だったアフロラジカリズムの旗手Moor MotherがプロデューサーMental Jewerlyと激越な新作を突如投下。荒ぶるノイズパンク。壊れた世界のサウンドトラック。


【#372】Apr.29 Wed.
菊池桃子 - Adventure
日本発音源の復刻を数多く手掛けてきたLight in the Atticの最新案件はなんと菊池桃子の86年作。シティポップとシンセポップの絶妙な配合。作編曲・林哲司。聴いてみればたしかに傑作でした。


【bonus】Apr.29 Wed.
アナログ盤はこちらから。


【#373】Apr.30 Thu.
Laurel Halo - Possessed
デザイン集団Metahaven制作の実験ドキュメンタリーのサントラは、エレクトロをはみ出てネオクラシカルに近接する意欲作。越境者Oliver Coatesのチェロをはじめ生楽器の音色が不穏で美しい。

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