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"ドラえもん"という名のアフリカン 【月刊ブラックスワン・ジュークボックス Vol.2】

日々の新譜を紹介するソーシャルコンテンツ〈blkswn jukebox: daily〉でとりあげた作品を総まとめ!と、そのなかから注目作をランキング!さらに、紹介しそびれたシングル曲などをもセレクトした「その月に気になった曲」プレイリストに、〈blkswn jukebox: daily〉編集委員ふたりによる総括談話ポッドキャスト〈blkswn jukebox: monthly playback〉をパッケージした、2月の音楽総まとめ。


【2月のMonthly Playback】

blkswn Jukebox編集委員のふたりが先月の音楽を振り返るポッドキャストシリーズ。小熊俊哉と若林恵が、2月の気になった音源と、気になった話題についてお話します。

2020年3月6日
虎ノ門・黒鳥福祉センターにて収録

▼第1話|ジャンルの外にでること・内に留まること

クリスティーヌ&ザ・クイーンズからカッサ・オーバーオールなど、小熊俊哉の2月のベストセレクションに、若林恵が異論。「なんでもできちゃうアーティスト」の魅力と、いわく言い難いつまらなさについて。

1:30|クリスティーヌ&ザ・クイーンズがすごい
6:40|フランス人のグローバル展開
10:00|日本人の好みのアグネス・オベル
11:05|カッサ・オーバーオールとジェイコブ・コリアー問題
16:40|弟が銃殺されたドラマーの音楽
23:13|UKジャズはジャズじゃない
29:30|キング・クリムゾンを継ぐもの

▼第2話|DJドラえもんとリスボン慕情

若林恵の2月のベストはなんと、名もなきリスボンのDJのソロアルバム。その魅力はいったいどこにあるのかを熱弁。得体の知れない音楽をみつける楽しみと、それを紹介する勇気についてなど。

0:00|ドラえもんが見せてくれる新しい景色
10:40|スペインの天才サウンドデザイナー
14:25|バッファローのヒップホップ
18:21|Bandcamp最強説

▼第3話|ポスト・コロナ世界における音楽の役割についてなど

コンサートが軒並み中止となり、音楽の今後にも暗雲が立ち込めるなか、音楽業界、そして音楽ファンは、いまなにを考え、どんな未来を思い描くべきなのか。ついつい真面目に語ってしまった、2月の振り返りの最終話。

0:00|コロナとナンバーガールとavexと
1:57|エンタメということばが好きじゃない
4:19|ウッドストックが可視化したもの
5:42|メンタルがやられていくなかで
9:50|トラビス・スコットの切実さ
11:50|音楽にお金を払うことの意味
13:53|問い返される"文化"
17:25|配信の新しいマーケット
19:05|フェスビジネスのゆくえ
20:31|スポーツのデータ化とリアルタイムギャンブル
23:58|コンテンツとコミュニケーションの融解
25:00|地震がこわい

*Anchorのリンクはこちら



【2月のお気に入りアルバム10】

▼若林恵セレクション

1. DJ Doraemon|African Voices
2. The Vernon Spring|The Vernon Spring
3. Jeremy Cunningham | The Weather Up There 
4. Lee Ranaldo & Raül Refree|Names of North End Women
5. Elcamino & 38 Spesh|Martyr's Prayer
6. Princess Nokia|Everything Sucks
7. Moses Boyd|Dark Matter
8. Matt Mayhall|Fanatics
9. Beatrice Dillon|Workaround
10. Alabaster Deplume|To Cy & Lee: Instrumentals Vol.1

▼小熊俊哉セレクション

1. Christine and The Queens|La Vita Nuova
2. Angelica Garcia|Cha Cha Palace
3. Moses Boyd|Dark Matter
4. Caribou|Suddenly
5. Tame Impala|The Slow Rush
6. Kassa Overall|I Think I'm Good
7. Jeremy Cunningham|The Weather Up There
8. Gil Scott-Heron & Makaya McCraven|We’re New Again: A Reimagining by Makaya McCraven
9. King Krule|Man Alive!
10. Agnes Obel|Myopia


【2月のお気に入りシングル15(若林セレクション・順不同)】

Yves Tumor
|Gospel For A New Century
Durand Jones & The Indications|Young Americans
Summer Walker|I'm Gonna Love You Just A Little More Baby
Monsta X|Middle of the Night
Grimes & 藩PAN|Darkseid
Jenny Beth|I'm The Man
Black Midi|Sweater
Destroyer|Cue Synthesizers
Bat for Lashes|The Boys of Summer(Live at EartH, London, 2019)
Christelle Bofale|Miles
Swamp Dogg|Good, Better, Best
Onipa|Fire
Max de Wardener|The Sky Has A Film
The Westerlies|The Kiss
Arca|@@@@@



【2月のDaily  #284〜319】
2月に紹介した音源を総ざらい!

【#284】Feb.1 Sat.
Against All Logic - Illusions of Shameless Abundance
エレクトロの求道者ニコラス・ジャーが別名義プロジェクトで再始動。まずはFKA Twigsとリディア・ランチ(!)を迎えたハードコアなノイズ/ポエトリー2篇を投下。


【#285】Feb.2 Sun.
Piper - Gentle Breeze
細野作品の復刻やグラミーノミネートのコンピ『Kankyō Ongaku』で知られる〈Light in the Attic〉が83年のシティポップ名作を復刻、Bandcampで配信開始。音は夏だがジャケは冬。撮影はタモリ、デザインは安斎肇なのだそう。


【Bonus】Feb.2 Sun.
Caetano Veloso ft. Ivan Sacerdote & Mosquito - Desde Que O Samba É Samba (Live Performance)
ブラジルの至宝カエターノの最新アルバムから、若手ふたりとの親密な演奏動画を。タイトルは「サンバがサンバであったときから」の意。ほんと沁みいります。


【#286】Feb.3 Mon.
Rafiq Bhatia - Standards, Vol. 1
異色のインド系ジャズギタリストによる大胆なスタンダード集。エリントンやオーネット・コールマンの名曲を電子ノイズに溶かしこみ、不穏なダークアンビエントへと変換。


【#287】Feb.4 Tue.
Destroyer - Have We Met
インディロックの隠れた実力者が、薄っぺらなシンセサウンドを背景にシニカルな歌を披露する傑作。真実を失った時代のサウンドトラックとしての"フェイクAOR"。

【#288】Feb.5 Wed.
ROSALÍA - Juro Que
スペイン発のグローバルスターの最新曲。剥き出しのフラメンコに聴こえて微細な加工・処理に時代性が宿る先鋭的な仕上がり。アラブの影響の際立たせ方も見事。これは秀逸。


【#289】Feb.6 Thu.
DJ Doraemon - African Voices
カーボベルデの血を引くリスボンのDJ。摩訶不思議なポリリズムの上を雑な電子音、サンプリング、「DJドラ〜えもん」の掛け声が乱暴に飛び交う。ヘンテコさが絶妙すぎて、これは相当カッコいい。


【Bonus】Feb.6 Thu.
Irreversible Entanglements - "No Más"
シカゴの戦闘的フリージャズユニットが3月20日の新作に先駆け、南アで撮影されたアフロフューチャーなPVを公開。フリージャズのPV。って結構新鮮かも。見入ってしまいました。


【#290】Feb.7 Fri.
Gil Scott-Heron & Makaya McCraven - We're New Again
"ラップのゴッドファーザー"の2010年の遺作をシカゴの異才が再想像。最新ブラックジャズのエトスとサウンドをまとってレジスタンス・ミュージックの始祖のメッセージがいまに蘇る。


【#291】Feb.8 Sat.
Matt Mayhall - Fanatics
1月のMonthly Playbackで取り上げたJeff Parker全面参加。ジャズ、ロック界双方から信頼されるLAのドラムの名手による伸びやかなトリオジャズ。饒舌すぎず寡黙すぎず。心地よく闊達な音の会話。


【#292】Feb.9 Sun.
Seu Jorge & ROGÊ - Night Dreamer Direct-To-Disc Sessions
俳優としても人気のブラジルのスターが25年来の盟友と原点回帰。声とギターと打楽器のみ。簡素な演奏と録音にして、この奥行き、繊細さ。往年のアナログの名盤のような風格と味わい。


【#293】Feb.10 Mon.
Obongjayar - Which Way is Forward?
ロンドン拠点に独自のR&Bを探究するナイジェリアン。フェラ・クティ由来のアフロビートをエレクトロサウンドで再構築。ありそうでなかった孤高のディープアフロ。


【#294】Feb.11 Tue.
Antibalas - Fu Chronicles
20年以上にわたってUSのアフロビートリバイバルを牽引してきた重鎮バンド。最新作はカンフーがいかにアフロビートと邂逅・融合するに至ったかを辿る音の自叙伝/年代記。


【#295】Feb.12 Wed.
The Westerlies - Wherein Lies the Good
Fleet Foxesのツアーに帯同するなどジャンル問わず引く手数多のNYのブラスカルテット。ゴスペルからアイヴスからジュディ・シルまで多彩な楽曲を、自在の柔らかさで快演。


【Bonus】Feb.12 Wed.
Baby Rose - Tiny Desk Concert
「unadulterated=混じり気なし」とNPRは彼女の声を形容。一聴してそれとわかるその魔力はTiny Deskでこそ威力絶大。2019年最大の収穫だったR&Bの新星、圧巻のプレゼンテーション。


【#296】Feb.13 Thu.
Prince Royce - Alter Ego
もっさりしたリズムと激甘のメロディで人気のラテン歌謡「バチャータ」の貴公子による2枚組の意欲作。耳触りの甘さはもとより、ピキピキいうギター、ベチベチしたベースがクセになります。


【#297】Feb.14 Fri.
Carla Bley, Andy Sheppard & Steve Swallow - Life Goes On
老いてますます瑞々しいトリオの3作目。身に染みるような哀感と鋭いウィット。時代の激動に連れて動く心の景色を限られた色彩で雄弁に描きだす、2020年の感情の地図。


【#298】Feb.15 Sat.
The Vernon Spring - The Vernon Spring
A・ワインハウスからBlood Orangeまで幅広い共作歴を誇るUKの異才の初ソロは、ピアノ(と少しの声)だけで織り上げた儚く可憐なアンビエントソウル。延々とループしてしまいます。


【#299】Feb.16 Sun.
Moses Boyd - Dark Matter
ロンドンのジャズシーンが生んだ最良の果実のひとつか。ジャンルの殻を破ってスケールアップする若手大物ドラマー。グライムからアフロまで自在に融解する最新型UKブラックフュージョン。


【#300】Feb.17 Mon.
Tennis - Swimmer
70'sのソフトロックと10'sのインディポップを巧みにブレンドするする当代のカーペンターズ。スモーキーなサウンドにホワイトポップの魅惑と郷愁とを封じ込めた秀作。


【#301】Feb.18 Tue.
yMusic - Ecstatic Science
ポップシーンからも引く手数多、NYインディクラシックシーンを代表する室内楽団、久々の現代音楽作。新鋭含む4人の作曲家の作品を持ち前の色彩感とシャープネスで。


【#302】Feb.19 Wed.
Beatrice Dillon - Workaround
ロンドン発エキスペリメンタル・テクノの注目株。隙間の多い簡素なビートに絡みあう多彩な音の断片。生楽器使いも絶妙で、実験的・抽象的なれど、品よくすっきりと心地よい。


【#303】Feb.20 Thu.
lojii - Lo&Behold
ジャジーなトラックと内省的なラップで良作を生み出してきたフィリーの地下詩人。最新作では〈忍耐〉をテーマに、社会・人生をサバイブする困難を自分に言い聞かせるように呟き、歌う。


【#304】Feb.21 Fri.
Lee Ranaldo & Raül Refree - Names of North End Women
今週のミュージックフライデーは豊作!の中からまずは元Sonic Youthのリーとスペインの天才プロデューサーのコラボ作を。見事なサウンド設計に舌を巻くエレクトロ/アートポップの逸品。


【#305】Feb.22 Sat.
Grimes - Miss Anthropocene
新たな地質年代「人新世」のポップスターとして現代の大テーマに挑んだ意欲作。「霊妙なニューメタル」と本人が呼ぶスケール感ある音世界を披露。ゲスト参加の台湾ラッパー〈藩PAN〉が◎。


【#306】Feb.23 Sun.
Agnes Obel - Myopia
くぐもったピアノの音色が閉塞する列島の暗鬱な週末にふさわしい。デンマーク出身、ダークなチェンバーポップで知られる才媛の4作目。「滅びの島」なんて題名の曲も。


【#307】Feb.24 Mon.
Elcamino & 38 Spesh - Martyr's Prayer
地味に存在感を高めるNY州北部バッファローのヒップホップシーン期待の星。埃っぽいトラックに無骨なラップ。無力感や諦めに歯を食いしばって抗うかのような味わい。沁みる。


【#308】Feb.25 Tue.
Arca - @@@@@
「ポストシンギュラリティAIによる独裁監視から逃れる手段としてアナログFM海賊ラジオしかない世界に向けて仮想世界から送る通信」。1曲62分。鬼気迫るスペキュラティブサウンドアート。すごい。


【#309】Feb.26 Wed.
Califone- Echo Mine
90年代から独立独歩の活動を続けるLo-Fi音響ブルースの重鎮、7年ぶりの新作。抽象度高めで楽器の音色のカッコよさにいちいち惚れ惚れ。バスドラの生々しさにグッときたりします。


【#310】Feb.27 Thu.
Jeremy Cunningham - The Weather Up There
Jeff Parker、Makaya McCravenなどシカゴジャズの重要メンツがこぞって参加。強盗に殺害された弟を悼む哀切な作品に、気迫と気品に満ちた演奏が命を与える。注目ドラマーによる心揺さぶる傑作。


【#311】Feb.28 Fri.
Princess Nokia - Everything Sucks
すべてがクソ。少なからぬ日本人も同意できそうなタイトルを冠したコンシャスラッパーの最新ミックス。表題とは裏腹のアゲ感とユーモアで世のアホさにしなやかに抗う。必携。


【#312】Feb.29 Sat.
Alabaster DePlume - To Cy & Lee: Instrumentals Vol. 1
ロンドンの異色サックス奏者が奏でるサイケフォークジャズ。日本の民謡に想を得た曲など珍奇というか幽玄というか。浮世を逃れ白日夢に遊ぶにもってこい。シカゴのInternational Anthemより。


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