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ロックダウンしても音楽はつづく【月刊ブラックスワン・ジュークボックス Vol.3】

日々の新譜を紹介するソーシャルコンテンツ〈blkswn jukebox: daily〉でとりあげた作品を総まとめ!と、そのなかから注目作をランキング!さらに、紹介しそびれたシングル曲などをもセレクトした「3月に気になった曲」プレイリストに、〈blkswn jukebox: daily〉編集委員ふたりによる総括談話ポッドキャスト〈blkswn jukebox: monthly playback〉をパッケージした、3月の音楽総まとめ。


【3月のMonthly Playback】

blkswn Jukebox編集委員のふたりが先月の音楽を振り返るポッドキャストシリーズ。小熊俊哉と若林恵が、3月の気になった音源と、気になった話題についてお話します。──2020年4月2日 虎ノ門・黒鳥福祉センターにて収録

▼第1話|ロックダウンのためのお守り

都市封鎖がいよいよ現実味を帯びてきた4月初旬。いまひとつ音楽を集中して聴く気持ちになれない小熊と若林のふたりは、まずはそれぞれのロックダウンソングを探してみることに......

00:00|8万1000個、5800万人、2枚
06:20|加藤登紀子的なものではなく
09:28|ロックダウンソングを探そう
12:30|フリッパートロニクスな気分
15:55|イーノの手癖
17:25|スフィアンの孤高の物語
24:13|ストラトにデッドのステッカー
25:53|Netfixのサントラが優秀すぎる件


▼第2話|有事に負けない音楽


話は震災のときの音楽体験からなぜか、若林が偏愛するシン・リジーへ。そしてジェイ・エレクトロニカの問題作の話題から、有事にあっても影響を受けない音楽のすごさに、改めて感嘆してしまうこと。

00:00|震災とジム・オルーク
02:00|シン・リジーのサウダージ
04:50|ダブリンのヒップホップに萌える
07:10|OPNが心配
10:55|ウィークエンドとシンセウェーブ
13:03|声楽の新しい方向性
15:57|テクニカルデスはよく寝れる
18:00|LAビートシーンのなごみ感
20:25|黄昏のジェイ・エレクトロニカ
23:55|有事に負けない音楽

【お詫びと訂正】
●冒頭〈0:06〉の若林の発言にある「2012年」は「2020年」の誤りです


▼第3話|日々を数えるために

若林が最近読む機会を得たパオロ・ジョルダーノのエッセイに感じたことから、ビートメイカーの日常に想いをはせ、さらにロックダウン/自己隔離の日々において、音楽はなにをもたらしうるのか。ゆるゆると考えたりしています。

00:00|なにを書いてもトンチンカン
01:00|日々を数える
05:42|knxwledgeとビートの日記
08:42|自己隔離するケンドリック
10:22|全部がプロセスになっていく
14:45|パール・ジャムはいまひとつ
17:11|気持ち悪いピアノ
20:00|音は旅、想像力がはばたく
24:13|セサミストリートでいいじゃん
27:40|5Gの音の楽しみ

【お詫びと訂正】
●〈18:50〉のAzu Tiwalineに関する若林の発言にある「中東」は「北アフリカ」の誤りです。出身はチュニジアです。大変失礼いたしました。

*Anchorのリンクはこちら


【3月のお気に入りアルバム10】

▼若林恵セレクション

1. Jay Electronica - A Written Testimony
2. Knxwledge - 1988
3. Azu Tiwaline - Draw Me a Silence Part. I
4. Max de Wardener & Kit Downes - Music for Detuned Pianos
5. Lotte Kærså & Græsrødderne - Jubiiilæum
6. Spoek Mathambo - Instrumental Tales from the Lost Cities of Azania
7. Eye Flys - Tub of Lard
8. Adrian Younge & Ali Shaheed Muhammad - Jazz Is Dead 001
9. Nicolas Jaar - Cenizas
10. Hare Squead - Superweird

▼小熊俊哉セレクション

01. Jay Electronica - A Written Testimony
02. Somni - Home
03. Sam Gendel - Satin Doll
04. Yael Naim - nightsongs
05. Ian William Craig - Red Sun Through Smoke
06. Lyra Pramuk - Fountain
07. The Weeknd - After Hours
08. William Tyler - Music from First Cow
09. Sufjan Stevens & Lowell Brams - Aporia
10. Roger Eno & Brian Eno - Mixing Colours


【3月のお気に入りシングル15(若林セレクション・順不同)】

SZA & Justin Timberlake - The Other Side 
Dirty Projectors - Overlord
JPEGMAFIA - BALD!
Phoebe Bridgers - Garden Song
Lianne La Havas  - Bittersweet
Juls - Mandela Riddim
Teni - Marry
Waxahatchee - Fire
Caoimhín Ó Raghallaigh & Dan Trueman - Widdershins
Tilman Robinson - We Came for Your Riches
Kaitlyn Aurelia Smith - Expanding Electricity
Dos Monos  - Rojo
Sinead O Brien - Fall With Me
KOKOROKO - Carry Me Home
Yumi Zouma - My Palms are Your Reference to Hold to Your Heart


【3月のDaily】
3月に紹介した音源を総ざらい!

【#313】Mar.1 Sun.
Bad Bunny - YHLQMDLG
プエルトリコが生んだレゲトン/ラテントラップの大スター、待望の2nd。まろやかでレイドバックした多彩なラテンポップ20曲。愛らしさ満載の1曲目ですっかり和んでしまいました。


【#314】Mar.2 Mon.
Christine and the Queens - La vita nuova
フランスが誇るクィアアイコンが、ダンテ『新生』をあらゆる性に解放しつつ再解釈。英仏伊西4ヶ国語で届かぬ想いを歌う。ショートフィルムの狂おしいダンスも込みで、ユーロポップの歴史を塗り替える傑作。


【bonus】Mar.2 Mon.
Christine and the Queens - La vita nuova
13分弱のショートフィルムは、パリ・オペラ座にて撮影。Siaの傑作MV「Chandelier」を手掛けた天才振付師のRyan Heffingtonも参加。


【#315】Mar.3 Tue.
Angelica Garcia - Cha Cha Palace
中南米にルーツを持つLAの才女がマルチカルチュラルな音楽性に開眼。サザンロックからレゲドンまで呑み込み、ダイバーシティを祝福しM.I.A.とROSALÍAを軽やかにつなぐインディポップの新しいかたち。


【#316】Mar.4 Wed.
Lotte Kærså & Græsrøddernea - Jubiiilæum
デンマークの作曲家/幼稚園の先生/幼児音楽教育の大家が1979, 81年に残したスーパーファンキーな傑作が復刻。子供たちと世界の音楽を旅するキッズ版Tom Tom Club、音の空想遠足。愉しすぎます。


【#317】Mar.5 Thu.
Citizen Boy & Mafia Boyz - From Avoca Hills to The World
南ア・ダーバン発、ナイキのCMで使われ一気に世界に知れ渡った異形のダンスミュージックGqom。創始者のCitizen Boyが手掛けた音源からその魅惑のビート世界へ。ようこそ。


【bonus】Mar.5 Thu.
Extreme Showboating And Insane Skills | This Is 'Kasi Flava'
Citizen Boyのレーベル〈Gqom Oh!〉のアーティストEmo Kidが音楽を担当。EAスポーツ制作の南アの曲芸サッカー〈Kasi Flava〉のミニドキュメンタリー。驚愕の足技満載。サッカー好きは絶対必見。


【bonus】Mar.5 Thu.
Culture | Unite | Air Jordan
Citizen Boyが音楽を担当したAir JordanのCMはこちら。


【#318】Mar.6 Fri.
Chiiild - Synthetic Soul
モントリオール拠点の辣腕プロデューサーxSDTRK率いる注目デュオの待望の初EP。親密なLo-Fi感と心浮き立たせるきらめき感。インディR&B/ポップの新しい青写真。


【#319】Mar.7 Sat.
The James Hunter Six - Nick of Time
レトロソウルひと筋のUKベテラン。チャチャやルンバなどラテンも取り混ぜた多彩なリズムが楽しい最新作。古臭いのに柔軟。マンネリなのに新鮮。頑固なのにチャーミング。見習いたい。


【#320】Mar.8 Sun.
The Saxophones - Eternity Bay
ベイエリアの異色レトロポップデュオの2nd.。50'sムードジャズやエキゾチカをまとった内向きDIYポップ。むせび泣くサックスのダサさと切なさ。押し寄せる多幸感と喪失感。


【#321】Mar.9 Mon.
Fire! Orchestra - Actions
現代作曲家ペンデレツキが71年にフリージャズの闘士ドン・チェリーのために書き下ろした伝説の1曲をスウェーデンの怪人マッツ・グスタフソンが蘇生。全編スリル満点。鳥肌ものの熱演。


【#322】Mar.10 Tue.
Brandy Clark - Your Life Is A Record
取るに足らない町の、取るに足らない人の、取るに足らない物語を歌うとき、カントリー音楽は無二の魅力を放つ。スモールタウンソングの第一人者の歌は、デカい物語に疲れたときに役に立つ。


【#323】Mar.11 Wed.
Sary Moussa - Imbalance
昨今なにかとお騒がせなレバノンで活動する電子音楽家。幼少期のベイルートの音風景を辿る最新作は甘美な郷愁と戦争の不安や恐怖がまだらに溶け合う、サイコロジカルアンビエント。


【#324】Mar.12 Thu.
Mandy Moore - Silver Landings
ブリトニー、アギレラと並んで90年代のティーンポップを牽引した元アイドルは、いつしかフリートウッド・マックを生真面目に継承する上質なSSWに。成長。成熟。悪くないです。


【bonus】Mar.12 Thu.
Terri Lyne Carrington + Social Science: NPR Music Tiny Desk Concert
昨年リリースの傑作大作『Waiting Game』を引っ提げてテリ姐さまがTiny Deskに登場。姐さまのドラムの軽やかな靭さに感動。新作が話題のカッサ・オーバーオール参加。


【#325】Mar.13 Fri.
Yumi Zouma - Truth or Consequences
待ってました。ニュージーランドのエレクトロポップマスター、3rd.アルバムもハズれ曲なし、安定のクオリティコントロール。きょうはもうずっとこれ聴いてよっと。


【#326】Mar.14 Sat.
Jay Electronica - A Written Testimony
10年前にRoc Nationと契約しながら昨日まで公式アルバムのなし。満を持して投下されたのは、どんなヒップホップとも聴き味の違う音響ドラマ。うまくことばにできませんが傑作かと。


【#327】Mar.15 Sun.
Azu Tiwaline - Draw Me a Silence Part. I
フィールドレコーディングの手触りと密室的電子ビートの重なりが生み出す新しい景色。チュニジアの女性プロデューサー、注目のデビュー作。親密で広大。未体験のサハラ/ベルベル・トランス。


【#328】Mar.16 Mon.
Don Toliver - Heaven Or Hell
トラヴィス・スコットの映画のなかでも人懐こい佇まいが印象的だったヒューストンの俊英。印象に違わぬ角の丸い歌心溢れるトラップR&Bを聴かせる待望のデビュー作。


【#329】Mar.17 Tue.
Cabane - Grande est la maison
上質な歌づくりで知る人ぞ知るベルギー俊才の新プロジェクト。High LlamasのS・オヘイガン、ボニー・プリンス・ビリー等と紡ぐ可憐な室内フォークポップ。ジャケの通り、音もきれいな緑色。


【#330】Mar.18 Wed.
Paul Bryan - Cri$el Gems
再三紹介してきたLAの敏腕Prod./ベーシスト待望の初リーダー作。Jeff Parker、Matt Mayhall、エレピのLee Pardiniが痛快に暴れるニューフュージョンの逸品。適度にラフな録音も秀逸。


【#331】Mar.19 Thu.
CHIKA - INDUSTRY GAMES
SNSで人気を博してきたアラバマの23歳の初EP。簡素で愛らしいトラックに乗って巧みなラップとキャッチーなメロディセンスを披露。南部音楽の豊かさも湛えた懐深いデビュー作。


【bonus】Mar.19 Thu.
Chika: Tiny Desk Concert
EP投下と同タイミングでTiny Deskに登場。リズム楽器はカホンだけ。コーラスとの掛け合いの見事さが際立つアレンジで音楽知の高さを証明。新人とは思えぬ熟練。必見。


【#332】Mar.20 Fri.
Max de Wardener & Kit Downes - Music for Detuned Pianos
UKの作曲家/プロデューサーがECMでリリースもある鍵盤奏者と協働。音程の外れたピアノを用いて生み出す、気持ち悪さが気持ちいいアコースティックアンビエント。


【#333】Mar.21 Sat.
Adrian Younge & Ali Shaheed Muhammads - Jazz Is Dead 001
60〜70年代ブラックサウンドの名うてのリバイバリストと元ATCQ。ふたりのProd.が主宰する新レーベルの第1作。ジャズとブラジルのレジェンドを迎えたヘビーフュージョンが炸裂。


【#334】Mar.22 Sun.
Eye Flys - Tub of Lard
メルヴィンズ、ヘルメット、ジーザス・リザーズ、アンセイン、ブラック・フラッグ、アンフェタミン・レプタイルなどの名前にピンときたら。懐かしのヘヴィネス、怒涛の10曲25分。


【#335】Mar.23 Mon.
OXZ - Along Ago: 1981-1989
80年代大阪のパンクシーンで異彩を放ったガールズバンドの貴重音源がブルックリンのレーベルから復刻。CHAIへと到る日本の女性インディの原点。多彩な曲/サウンドはいま聴いても新鮮。


【#336】Mar.24 Tue.
Ian William Craig - Red Sun Through Smoke
アンビエント/ネオクラシカルなピアノ、美しい多重録音コーラス、ローファイな録音。厳かさとDIYな手触り感のミスマッチが心地よい、カナダの異彩の最新力作。


【#337】Mar.25 Wed.
Sufjan Stevens & Lowell Brams - Aporia
もはや孤高と言っていい偉才SSWが義理の父と10年以上かけてつくりあげた風変わりなニューエイジ作。血の繋がらない父子の交流の軌跡を描くチープなシンセの味わい深さ。


【#338】Mar.26 Thu.
Hare Squead - Superweird
Goldlinkのフックアップで耳目を集めたダブリンのヒップホップデュオの初アルバム。トラップからポップR&Bまで何やっても愛敬あって軽やか。バランス感覚のよさに魅了される。


【#339】Mar.27 Fri.
Spoek Mathambo - Instrumental Tales from the Lost Cities of Azania
南アが世界に誇る実力者。ヒップホップ回帰した最新作のインスト集が出色の出来映え。ドープなビートに導かれて架空の都市の路地を経巡る。好奇心と想像力とが活性化する。


【bonus】Mar.27 Fri.
Spoek Mathambo - Instrumental Tales from the Lost Cities of Azania
ボーカル入りのバージョンはこちら。


【#340】Mar.28 Sat.
Waxahatchee - Saint Cloud
インディロックの装いを捨てソングライターとしての魅力を前面に打ち出した5作目。カントリー/アメリカーナのルーツに回帰し、伸び伸びとした歌世界を披露。Pitchfork高得点も納得の秀作。


【#341】Mar.29 Sun.
Víkingur Ólafsson - Debussy – Rameau
アイスランド発のクラシックの俊英。最新作は優雅な愁いに満ちたドビュッシー/ラモー曲集。精緻なタッチ。ひんやりとしたアンビエンス。自己隔離の週末。遠くから聴こえるピアノ。


【#342】Mar.30 Mon.
Kim Oki - For My Angel
しょうもない歌モノ......かと思いきや妙なエレクトロアンビエントになり......かと思いきや不穏な即興演奏になり......ホント変わってる韓国ジャズの風来坊。見落としてた1月の最新作。


【#343】Mar.31 Tue.
Nicolas Jaar - Cenizas
Against All Logic名義で新作を出したばかり。漲る創作力を投入した最新作は宗教音楽、フリージャズ、ポストロックetc.を呑み込み展開する、荘厳なサウンドアート。

【今月のボーナス】
故ヨハン・ヨハンソンの遺作となったサントラ、アナログ盤を購入しました。

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では、また来月!

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