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ボラは続くよどこまでも

いざ生活が始まるとご近所さんの有り難さが見に沁みる。

おばあちゃん達にとって私はあの頃の小さな子どものまんま、、、「お母さんと思って何でも相談しなさいよ」と色んなおばちゃんが声を掛けてくれた。

「これ、おかずの足しにしたら?」「沢山作ったからお裾分け!」と日々お惣菜を持って来てくれた。
これがまあ美味しいこと!白和え、切り干し大根、ひじき煮、果ては手作りピーナッツ豆腐まで!おばちゃん達の料理の腕はピカイチだ!

貰ってばかりも申し訳ないと「おばちゃん味見て〜」と私も作った物を(たまーに)持って行った。その行為は、おばちゃんの「この娘を育てねば!」スイッチをどうもONにしたようだ。
私の料理の腕は決して高くない。正直に言おう。寧ろ低い。次々とおばちゃん方のアドバイスを頂戴することになった。

流石にピーナッツ豆腐までは手が出せなかったが、おから煮、白和え、ぶり大根など和食のメニューが増えていった。感謝せずにはいられない。

そんなある日、我が家の台所の窓を開けおばちゃんがやって来た。(注:おばちゃんは台所の窓から「美和ちゃ〜ん」と呼びながらやってくる。玄関ではなく台所なのである)

「お父さんが釣りに行ったから、これ。ボラ。捌く練習しなさいよ〜」
と、30㎝はあろうボラを差し出しだ。

ぎょぎょぎょ!私はそれまで魚を捌いた事は無かった。切り身を買う事しかしていなかった。ボラとは⁈でかい、どうするのか、、、ボラを手に途方にくれる私を置いておばちゃんはにこにこと帰って行った。

何故アジみたいな小さな魚じゃないんだ、、。いきなり大きい、、、。目が、、、口が、、、、。

震える手に包丁を持ち、いざ、、、

現役を引退したおじちゃんはよく釣りに行った。その度に、「美和ちゃ〜ん」とボラは台所へ届けられたのであった。

ボラは続くよどこまでも

あの時の経験があるから今の私がある。、、、でもボラは怖かった

あぁ丸山5組


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