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飛行機予約の際、電動車いすの事前確認って何の意味があるの?

どうも、ハシロウです。
今日はまあまあタイムラグのない、ちょっとまじめな話をします。
先日見つけた新聞記事にまつわる話。
まずはこちらの引用文をご覧ください。

今月5日、沖縄・那覇空港で身体障害がある女性が格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーション(本社・大阪府)の台湾行きの便を利用しようとしたところ、電動車椅子のバッテリーが外から見えないことを理由に搭乗できなかった。バッテリーの目視確認を巡っては航空会社で対応が異なっており、女性は「差別的な対応だ」と訴えている。(中略)
国土交通省によると、発火の恐れがあるバッテリー類は航空法で輸送を禁じる危険物にあたる場合があり、航空各社は持ち込みに条件を設ける。ピーチ社のウェブサイトには、身体が不自由な乗客への案内として「バッテリーの目視確認ができない場合、 詳細な情報がわかる書類などをご持参ください」と書かれていた。
林さんの車椅子はバッテリーがカバーで覆われ、特殊な工具で開けないと目視できない。そのため、バッテリーの品名などが分かるメーカーの説明書を事前にメールで送っていた。
林さんによると、那覇空港の搭乗ゲート前で待機していた出発直前、ピーチ社のスタッフから 「バッテリー本体が見えないため搭乗できない」と告げられた。バッテリーの情報を事前に知らせたことを伝え、持参した説明書も見せたが、判断は変わらなかった。
林さんは翌6日、 別の航空会社を使って台湾に戻った。取材に 「さまざまな国に行き、たくさんの航空会社を利用したが、バッテリーを理由に搭乗拒否されたのは初めて。 車椅子は私の『足』。今回の対応はとてもショックだ」と話した。
障害者団体「DPI日本会議」(東京都) は林さんから相談を受け、8日付で国交省に事実確認を進めることなどを申し入れた。佐藤聡事務局長は「カバーでバッテリーが見えない電動車椅子は多い。目視確認を必須とすることは実態に合っていない」 と指摘する。
ピーチ社によると、安全上の観点から社内規定で書類確認だけでなくバッテリーの目視も義務づけている。サイト内の車椅子確認フォームでも、工具がないとバッテリーを外せない車椅子は預けられない場合があると断っているという。取材に 「差別という気持ちはなく、そのように感じたのであれば大変申し訳ない。サイトをもう少し分かりやすい表示にできないか社内で検討している」(広報室)としている。(後略)

2024年4月14日毎日新聞より一部抜粋

ハシロウも以前、この記事とほぼ同じ経験をしたことがあります。
ハシロウは結果として搭乗できたのですが、車いすのバッテリーを巡るやりとりが本当によく似ていて。
まずはその時の話をします。

電動車いすの搭乗予約には事前確認が必要

初めて飛行機を使って移動をすることになった時、電話で搭乗予約をした際に車いすのバッテリーの仕様を聞かれました。
これは車いすを購入した時に業者さんからあらかじめ聞いていた話だったので、空港の事務所か航空会社にかは忘れましたが、バッテリーの仕様について書かれた書類を送りました。
海外製で英語の説明書だったので内容は詳しく知りませんが、
「これを見せれば大丈夫です」
と業者さんから言われていたので問題ないと思っていたら、当日空港で車いすを預ける段になって、
「バッテリーを外してください」
と言われました。
ハシロウの車いすも引用記事と同様、外からバッテリーが見えないタイプです。
バッテリーを外すにはまず外側のカバーを外し、それから専用の工具でバッテリー本体を外す必要があります。
工具などそもそも持ってきていませんし、仮に持っていたところで、この手の電気系統はうかつに素人にはいじれません。
(業者さんにも割としっかりめに「手を出すな」と言われていました)
事前に送った書類を持ってきていたのでそれを見せたところ、何やら一悶着あった末に現場で一番偉いっぽい人がやってきて、
「車いすの会社に確認が取れました、このまま預けて問題ありません」
ということになり、無事に搭乗に至ったわけですが。
このやりとりだけで30分近く使いました。なんのために事前確認をしたんだろう……?

ピーチエアの対応に疑問を感じる点

今回のピーチ社の対応について不思議だな、と思うのは、
「工具がないとバッテリーを外せない車椅子は預けられない場合があると断っている」
のであれば、メールでメーカーの説明書を受け取った時点で、ある程度リサーチした上で、
「搭乗をお断りする」
という選択も含めて、今回とは別の対応ができたのではないか、という点。

ハシロウが使っている車いすメーカーのサイトには、飛行機搭乗の際のバッテリーの扱いについてきちんと書かれています。
この記事の方がどこのメーカーの車いすを使っているか存じませんので、電動車いすを扱っている全てのメーカーがサイトに情報を載せているかどうかは分かりませんが、
搭乗を受け入れるか否かの判断は問い合わせの時点でできた可能性があった、ということです。

記事の方は、事前にメールで書類を送っています。
その上で、搭乗時にも書類を持ってきています。
本人からしたらこの時点ですでに二度手間なわけです。
提示されたことを滞りなくやってきたにもかかわらず現地で断られて、急きょ別の飛行機の手配をしなくちゃいけなくなってしまった。
この別の飛行機に乗るために、記事の方はもう1泊しています。
最初のメールの時点で「ちょっと無理です」って言ってくれれば、使わなくて済んだ時間です。
幸い航空会社は数多くあるのですから、よりスムーズに話が進むほうを選べば良いだけの話。

合理的配慮とはどういうことか

先日、イオンシネマの一件について別の方と話をしていて思ったのですが、
民間の会社は、
「なんでもかんでも全部断っちゃだめ」
と思っているフシが少なからずあるようなのです。
4月に改正された障害者差別解消法が言っているのは、
「障害だけを理由にして断ってはいけない」
ということであり、
「対応する側が現状のキャパを超えてでも受け入れなくてはいけない」
ということではありません。
それは内閣府のリーフレットにも明記されています。
以下引用。

合理的配慮の提供とは

●日常生活・社会生活において提供されている設備やサービス等については、障害のない人は簡単に利用できても、障害のある人にとっては利用が難しく、 結果として障害のある人の活動などが制限されてしまう場合があります。
●このような場合には、 障害のある人の活動などを制限しているバリアを取り除く必要があります。 このため、 障害者差別解消法では、行政機関等や事業者に対して、 障害のある人に対する 「合理的配慮」の提供を求めています。
● 具体的には、
① 行政機関等と事業者が、
②その事務・事業を行うに当たり、
③個々の場面で、 障害者から 「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に
その実施に伴う負担が過重でないときに
⑤社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずることとされています。

● 合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人と事業者等との間の 「建設的対話」 を通じて相互理解を深め、 共に対応案を検討していくことが重要です (建設的対話を一方的に拒むことは合理的配慮の提供義務違反となる可能性もあるため注意が必要です)。(後略)

内閣府リーフレット
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo2/print.pdf
より一部抜粋

その上で、
「現時点でキャパが足りない部分について、これからどのように対処していけば良いか」
というところまで話し合いを進めていければ理想ですし、法の趣旨にも沿っています。
それはこれからの話なんだろうと思いますが。


事前確認させるって手続を航空会社は共有してないのか? 
航空券って直前に買うとめっちゃ高いじゃん!

「日本の合理的配慮には大きな穴がある」という記事を書きました。

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