我が家のカメムシ大騒動

 この秋全国的に世の中を賑わせているカメムシの大発生。我が家のある大阪もこれまで見たことのないぐらいカメムシが飛び回っている。
まるでカメムシをしょっちゅう目撃しているような言い方だが、決して目で見て存在に気づいているわけではない。もっと身近にリアルな形でカメムシを感じることになってしまったのだ。
 ある日、機嫌よく和室で遊んでいたひなちゃんが、突然大きな声で泣き出した。普段理由なく大泣きすることはあまりない。何が起きたのかと思いひなちゃんのもとに駆け寄った。
ひなちゃんはベランダから取り込んだばかりの敷きパッドの上で、手を振り回しながら泣いていた。その手からはなんと、あの誰もが一度は嗅いだことがあるだろうカメムシの臭いが!
やってしまった。洗濯物を取り込むときには何度もはたいてあれだけ気を付けていたのに、まんまとカメムシを我が家に招待してしまったのだ。
きっとひなちゃんは何も知らずに、普段の敷きパッドの上に緑色の何かを見つけてしまったのだろう。なんだこれ、と言わんばかりにギュっと掴んだに違いない。
 おそらくその瞬間、カメムシからの猛烈な悪臭攻撃を受けたのだ。何が何だかわからないひなちゃんは、とりあえず大声を出してその非常事態を知らせたのだろう。
せっかく洗濯した敷きパッドはもちろん、ひなちゃんの手、そして部屋中全体にカメムシ臭が充満するという事態に見舞われてしまった。
 ただ悲劇はそれで終わりではない。我々の場合、虫を退治するのはとても難しい。視覚障害で最も困ることと言っても過言ではないと思うのだが、虫を捕まえて外に出すにしてもそもそも手探りなんかでは到底歯が立たない。
ヘルパーや友人にも見てもらったが見つからず、現在も我が家のどこかに潜んでいるのだろう。次またいつあの悪臭攻撃を受けるのかと気が気ではないが、我々の力ではどうしようもない。カメムシのお気に触れないよう、物理的にも触れないようになぜか我々が恐る恐る生活している日々だ。
 以上が僕の出張中にあった出来事の一部始終だ。そう、これは僕がママからの電話越しに、大変機嫌の悪い声で聞いた話である。
ちなみに洗濯物を取り込んだのが僕であることは、ママの不機嫌な声が何よりも物語っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?