LINEのビデオ通話

 これまでビデオ通話を使う習慣はあまりなかった。
同じ視覚障碍者同士で話すならもちろん必要ないし、健常者の人と通話をする時もあまり積極的には使ってこなかった。
別にビデオ通話がいやだったわけではないのだが、何となく自分だけが見られているような不公平感というのだろうか、一言で言うと落ち着かないのだ。
まあそれは僕の自意識過剰ということで置いといて、最近そのビデオ通話を積極的に使うようになったお話をしたい。
 ここ最近は出張続きで、ひなちゃんの成長を間近で感じられることが減ってしまった。
「今日ははいはいで私の足元まで来れる様になったよ」
とか
「今日は大阪のネモフィラ祭りに行ってきたよ」
などという話を妻から聞く度に、少しずつ僕が知らない世界をひなちゃんは知っていくんだろうなあという寂しさを感じる。
今からそんなこと言い出していたら、一生お嫁になんていかせられないねと妻に笑われた。
そんなひなちゃんをビデオ通話で僕が直接見られるわけではないのだが、僕の顔をひなちゃんが見て反応してくれるようになったのだ。
「ひなちゃん」
と話しかけると、スマホの画面を見ながら必死に手を伸ばしてくる。
この前なんて、変顔をしたら「へへへー」と声に出して笑った。
それにはまって何回も笑わせていたら、とうとう変顔をしなくても僕の顔を見るだけで大爆笑するようになってしまった。
おいおい、人の顔を見るだけで笑うなんて失礼だぞ!と怒りながらも、その笑い声で今日も一日頑張れる気がしてきたので今回は許してやろう。
 ビデオ通話のおかげか僕の顔が変顔だからか、いずれにしてもすぐにはひなちゃんに顔を忘れられなさそうでひとまずは安心した。次はどんな変顔をしてやろうかと考えるのが最近のブームである。

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