新婚旅行2日目 「北海道の三つの洗礼(後編)」
※北海道の旅の洗礼を二つ受けながらもなんとかラベンダー畑に到着。三つ目は…
ファーム富田に到着した我々はまずラベンダー、ではなくレストランに直行。ラベンダーの前にジャガイモを心行くまで堪能した。文字通り花より団子、いや花よりジャガイモか。
その後はゆっくりラベンダー畑を散策。おそらく目の前一帯にラベンダーが広がっているんだろう、などと想像していたらほのかにラベンダーの香りも漂ってくる。これは気のせいではないはずだ。
近くにいた観光客の方に写真も撮っていただき、ファーム富田の散策を終えた。我々が歩いたのは広大なラベンダー畑の、ほんの僅かな範囲加茂しれない。それでも北海道のカラットした空気とラベンダーの香り、そして音が全く反響しないことで感じる一面の広がりを全身で味わった。
帰りは近くのラベンダー畑駅からトロッコ列車に乗って美瑛へ。たまたま道を尋ねたファーム富田のスタッフの方に、駅までご一緒していただいた。
なんとこの方、2年ほど前にも同じく視覚障害の人を駅まで案内したことがあると言うではないか。ラベンダー畑に行き当たりばったりで一人でやってくる視覚障碍者なんてなかなかいないだろう。それおそらく僕です、なんていう会話を交わしながら、不思議なご縁を感じた瞬間だった。
美瑛に到着した我々は、早速次の洗礼を受けることになる。北海道第3の洗礼。宿泊先までの公共交通機関がそもそも存在しない。
Googleマップで調べたところ、駅からの距離は6.5キロ。しかも山道ときている。
出発前に冗談で話していた樋熊に食べられるかもしれない、というのがにわかに現実味を帯びてくる。ここを歩くという選択肢はなしだ。少なくとも夫婦の平穏のためにも・・・。今回はやむなしということでタクシーを利用した。
ちなみに7泊8日の旅行を通してタクシーを使ったのは、富良野の乗り合いタクシーを含めても4回だけだ。北海道でこれは割と頑張った方だと思っている。
タクシーに揺られること約20分、この日の宿泊先であるオーベルジュ・ニングルフォーレに到着した。グネグネと山を登っていると思ったら途中から道も未舗装に変わり、一瞬でも歩いて行けないかと考えた自分が恥ずかしくなった。
オーベルジュ・ニングルフォーレは予想以上に森の中で、驚くほど静かなところだった。日常でいくら静かと言っても都会の喧騒は必ずある。それが全くないのだ。
こんな世界があるのかと感動した。余りに無音過ぎて、たまに聴こえる木の葉が地面に落ちる音が怖いぐらいだった。普段線路沿いの家で寝ている僕は、この中で逆に寝られるだろうか。そう思ったのもつかの間、到着して1時間後には早速昼寝をしていたのだが。
旅行2日目にして北海道の洗礼を三つも受けながらも、無事2日目の行程が終了した。露天風呂に入ったり昼寝をしたり、この旅で一番くつろいだ場所になったのは言うまでもない。
旅をしていて、もう一度訪れたい、と思う場所は僕の場合意外と少ない。それは満足していないからではなく、同じ場所に二度訪れるよりも新しいところを開拓したい、という気持ちの方が結局勝ってしまうからだ。
でもこの美瑛のオーベルジュは、もう一度訪れたいと強く思った。
(続く)
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