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教育社会学 note④ 0720

 〈大テーマ〉
学歴社会とは何かを明らかにし、高学歴化が進行するとどのように変化するのかについて、学力の視点から述べよ。 


0 はじめに

・ネットいじめの実態を通して、現在の学校問題を捉える視点を明らかにする。
・とりわけ、高校生のネット利用に隠された問題について知る。
・子どもたちの実態を見ることを通して、現代の子供たちを悩ませている中心的な問題である人間関係の「息苦しさ」について考える。

1 学習課題

(1)最近の若者たちが「ぼっち」化した背景は何かについて考えてみよう。その際に、コミュニケーションの能力は必ずしも下がっていないのに、特定の人間関係をもつことができる対象した「友達」と考えない理由についても視野に入れよう。
(2)高校生のネットいじめの実態を捉えると、同質性の高さが異なる価値観への攻撃に向きやすいことが分かってくる。この理由について考えてみよう。

2 「ぼっち」化する若者と「つながる力」

 最近大学の食堂では「ぼっち席」と呼ばれる座席が用意されていることが増えた。

今の大学生の多くは、「つながる力」を小学校の早い段階から育てられた世代だが…全国的に多くの大学では「ぼっち席」が設けられた。

ぼっち席を利用する人は、必ずしもコミュニケーション力が低い学生ばかりではない。

ではなぜ?
☞子どもたちの多くは、教室内のみならず、SNSを代表するウェブ上でも対人関係をうまく取り結ぶことが求められている。
高校まであるクラス単位の縛りが大学ではある程度緩和されることにより、
「ぼっち」席のような気を遣わなくてもいい空間を欲するようになるのかもしれない。

3 現代の子どもたちを取り巻く「息苦しさ」

友達関係のつくり方の変化。

「いじり」と「スクールカースト」の問題に注意が必要。
特に関西地方では、いじりというのは、人間関係の作り方として粗野ではあるが1つの文化だと思っている傾向が他の地域よりも強い。

いじめ問題の難しいところは、「いじり」と「いじめ」の境界線。
どこまでが「いじり」で、どこからが「いじめ」なのか、この判断を下すのは難しい。

3 島宇宙とマスク文化

子どもたちの小集団を小さな島に見立て、その島同士が林立する状況を「島宇宙」と定義した。

それは、同じ教室という「宇宙」空間にいるクラスメイトなのに、グループとしての「島」が違うとお互いに無関心な状態になることを指す。

「みんな静かにしましょう」、の「みんな」は自分以外を指す言葉だと認識している。

コロナ禍の影響で、マスクをつけて過ごすのことが日常化している子どもたち。今はもうマスクの着用は個人の選択に任せられているが、
中学校以上の子どもたちの一部に見られるのがいつもマスクを外さないという現象。

体調不良以外の理由の場合もある。
「他人と一定の距離をとるため」「人とのコミュニケーションをとりたくない時にマスクをしている」という実態が隠れている。

子どもたちの人間関係やそれを取り巻く状況は近年大きく変化している。
最たるものがネット環境の伸展であり、ネットいじめと言える。

4 大規模調査からみる高校生のネットいじめの実態

以前は個人のメールやブログに直接的に相手を誹謗中傷するものが多くを占めていたが現在はかなり減少。

それとは対照に、LINEやtwitterのようなSNSで誹謗中傷されるケースが増加。

5 学力とネットいじめの関係

高等学校の学力階層別にみたネットいじめの割合。
高等学校の学力階層によってネットいじめの発生率に差がみられることがあきらかになった。

下位群に多いのは、メールやプロフ、ブログなどへの「直接攻撃型」なのに対して、上位群は「間接攻撃型」が多いのである。
高校階層が進むにつれて、ネット上でのさらしのような「笑いを前提としたネタの提供」のようないじめが増える。

☞異なる進路に対する価値観の形成が、クラス内での価値観の葛藤となり、そのはけ口としてネットいじめが発生している可能性も考えられる。
・・〈文化葛藤理論〉

6 価値観や文化の葛藤が生じやすい学校という場

「文化葛藤理論」・・・いろいろな考え方や価値観をもつ個人が一つの集団の中に混在すると、それぞれの考え方に対して、多様性が担保されているように見えるが、実際は自分たちの価値観へ引っ張ろうとしあうという理論がある。

この理論を応用すると、中位群でもネットいじめの発生率が高くなる理由が浮き彫りになってくる。
難関校に進学したい生徒と、早く社会に出て働きたい生徒が同程度存在すれば、それだけ価値観の葛藤は大きくなる。

ネットいじめの発生率が低い学校→effective-school(教育効果のある学校)の存在。

なぜ、少ないのか!?参観してきづいたこと
・授業や部活などで、教員と生徒たちが対面でやりとりする機会が多い。
・授業で教員が生徒たちにする発問は「オープンエンド」なものが多い。
・生徒の考えを否定しない。しっかり受け止めている。
・ずれていても、修正しながら生徒が気付かなかった視点や考えてほしかった方向へ誘導する。
・最後にはかならず「いいところに気付いたね」とほめる。

7 ネットいじめを抑止するために

人間関係を築く「しかけ」づくりをし続けることの大切さ。

「相談する」「面と向かって話をする」環境や文化
生徒たちの友人関係に啓発活動が影響を与えた。

生徒同士、教員と生徒、親子関係にもよい影響。

「ネット上ではなく、直接話をすることで他社との関係を見直す」ことに主眼をおいた啓発活動の影響。

いじめの認知件数が多いことは、危険な状態であると認識されがちだが、
児童や生徒が「友達がしんどい」や「それは嫌や」と言いやすい環境をつくり、いじめの状態が軽い時に適切な指導を行うことが重要である。

いじめの初期段階でしっかりすることによって解決に導いていることが多い。
いじめ対策に必要なのは、「声を出す」環境を学校、家庭、地域それぞれがもつこと。
「しんどい、きつい、○○から嫌なことをされた」と声に出せる学校づくり、親子関係、地域のつながりはこれからますます必要になってくるだろう。

8 まとめ
<学習問題>
(1)最近の若者たちが「ぼっち」化した背景は何かについて考えてみよう。その際に、コミュニケーションの能力は必ずしも下がっていないのに、特定の人間関係をもつことができる対象した「友達」と考えない理由についても視野に入れよう。
(2)高校生のネットいじめの実態を捉えると、同質性の高さが異なる価値観への攻撃に向きやすいことが分かってくる。この理由について考えてみよう。


(1)
「ぼっち」という言葉は、日本社会の中でかなり一般化されていると思われる。検索エンジンに「ぼっち」と入力すると、”なぜ現代の若者は「ぼっち」を選ぶのか””「ぼっち」飯””クリ「ぼっち」商戦”など、「ぼっち」な人はかなりたくさんいる印象をうける。

その中には、「ぼっち」化してしまっている人と、進んで「ぼっち」化している人に二極化していることが考えられる。
理由や背景には様々な要因が考えられるが、情報化に伴い、人間関係の築き方が変化したことが一つ上げられると考えられる。
コミュニケーション能力が低くない人の場合、「ぼっち」化する方を自ら選んでいる方を強くイメージするが、情報化によって、対面での人間関係作りとネット上での人間関係作りの両方をうまくしなければならない環境に息苦しさを感じてしまうことも考えられる。

また、自分以外の存在に対する関心が薄れてきているのではないかということも考えられる。
島宇宙という概念がでてきたが、「みんな」といわれるだけでは「自分」が認識できないという子がいるという現状と、似た者同士でグループを形成するという現代の子供たちの人間関係作りの特徴が、特定の人間関係をもたない者は自分とは関係ないという傾向に結びついている可能性もあるのではないかと考えた。

(2)
文化葛藤理論では、同じコミュニティにいろいろな考え方の人が集まることは、多様性の担保であると同時に、異なる価値観どうしが、自分の価値観へと引っ張ろうとする力が働いているという背景がある。
その力が、異質なものに対する反発を起こしているのではないかと考える。

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