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透析患者監視装置/コンソールの仕組み(東レ)2

透析用コンソールの仕組み、東レ前編につづき、後編ではニプロコンソールとの違いが出てきます。

リリーフ弁

下図の上側がin、下側がout、in側からout側にしか流れない。in側のバルブシートはスプリングによって押さえつけつけられていてスプリング圧は締め込み方向で開放圧力は大きくなる。

リリーフ弁

脱気ポンプや循環ポンプは出力を制御されておらず、常に一定の速度で運転している。リリーフ弁はポンプの入口と出口をバイパスして設置されており、ポンプout側の圧力がスプリング圧以上になるとシートがボディから離れ、ポンプ出口から入り口に圧力を開放しポンプout側の圧力を設定値以下に保つことができる。下のフローチャートではリリーフ弁は省略されていますがポンプの入口と出口以外にポンプをバイパスする流れがあることがわかります。

TR-7700のフローチャート (東レホームページから)

フロースイッチ

フロースイッチ

透析液のチャンバへの受入時間を測定している。流量メモリはついていない。ダイアライザへの透析液流量が500ml/minのとき受入側は約700ml/minの流量が必要となる。チャンバの容量は250mlなので受入開始から受入完了まで22秒間、offにて時間測定。切替側が送液を完了するまで30秒間かかるので受入側は8秒間、onとなり待機する。受入時間が遅延する場合、25秒以上となると自己診断で警報が出る。減圧弁を閉め、受入流量を上げると良い。

除水ポンプ

除水制御方式はニプロがビスカス方式で三室に分かれたチャンバのビスカス室からビスカスオイルをビスカスポンプで出し入れすることで行っていますが東レはダブルチャンバ方式、二室に分かれたチャンバ+除水ポンプを用いるものです。

除水ポンプ

除水ポンプはポンプヘッド、モーター、フォトセンサ、L型ベースからなる。ポンプヘッドはセラミック製ピストン、シリンダ、固定用台座からなる。シリンダには原液の給排水口が2箇所、ピストンの潤滑目的でRO水の出入り口が2箇所についている。RO水の供給のないモニターではシリンダに溝が入っており透析液を潤滑用に使用しています。多人数用には潤滑用のRO水出入り口はなく、そのためピストンがシリンダーに炭カルの影響で固着することがあります。

除水ポンプ・シリンダとピストン

ピストンピンはカップリング内の球面軸受と接続されており、カップリング部はモーターと接続されている。カップリングの動きをフォトセンサが監視している。ピストンは回転しながら左右に移動し、吸込→吸込完了・吐出開始→吐出→吐出完了・吸込開始を繰り返す。

除水ポンプ・ピストンの回転

ピストンピン(軸)が球面軸受に接続され、カップリング部が回転することでピストンピンは回転しています。ピストンの左右運動はポンプヘッドの振れ角度によって決まる。上図はポンプヘッド固定位置がカップリングと平行であるので、ピストンが回転しても左右運動をしない。吸込・吐出量は0となる。

除水ポンプ・ピストンのストローク

ポンプヘッドの振れ角度を大きくするとピストンのストロークも大きくなり、吸込吐出量は増加する。上図ではカップリングが180度回転することでピストンがA線からB線まで移動していることがわかります。1回転で0.5mlの吸込吐出量となるよう調整されている。東レのコンソールはポンプヘッドの取り付け角度を変えることによって除水量を調整することができる。しかし調整によって大きく除水量が変化するため濾液量、除水量の調整は通常、補正値を入力して調整する。
除水速度補正値=(除水設定値-実除水量)/除水設定値×100

計量チャンバー

計量チャンバー

250mlの容量をもつチャンバーでシリコンゴム製のダイアフラムで新鮮透析液室と使用済透析液室に分けられている。チャンバ上部黒いホース口は水漏れ頻出箇所。ホース口のOリングの劣化によるものが大半だがホース口交換の時、レンチで閉めることでチャンバ自体に小さい割れが生じ水漏れすることも多い。ホース口は手で締めるだけで十分です。

ニプロのビスカスチャンバもダイアフラムで区切られているのでしょうが穴が開くということはありません。ニプロのコンソールが「メンテフリー」と称され、臨床工学技士の出番が少ないのは製品が優秀なのでしょう。東レのシリコンゴムのダイアフラムは小さな穴が開きやすく定期的な交換が必要です。容量は250mlで変化しないためチャンバーへの入出量は等しく、ダイアライザーの入出量も等しい。脱気ポンプにより新鮮透析液室に充填される透析液は切替側に余圧の影響を与えぬよう充填に22秒、7秒間の待機時間を置き、ダイアライザへの送液は30秒間で行われる。

チャンバー切替弁モジュール

チャンバー切替弁モジュール

新鮮透析液室への透析液受入、ダイアライザへの送液、使用済み透析液室への受入、排液をA、Bチャンバーが交互に行うために設置されている2方電磁弁。手前の4つが新鮮透析液(New)を担当するN側モジュール、奥4つが使用済み透析液(Old)を担当するO側モジュール。3方電磁弁は瞬間的に3方オープンとなるので使用されていない。

チャンバー切替フロースイッチ

ダイアライザ送液チャンバーが空になると流量の低下を感知し待機チャンバーへの切替を行う。切替までの時間を測定しており、測定時間で感知する警報はチャンバー異常と供給水異常がある。チャンバー異常はフロートの2秒落ちっぱなしと60秒流れ放し。供給水フロースイッチとチャンバー切替フロースイッチの作動に1秒以上の差がないとき、また、切替後15秒以内に切替するときに供給水異常となる。受入不足は切替時間を短縮させる。切替時間の短縮はさらに受入不足を進める。供給水の異常は受入側から切替側、切替側から受入側へ反復して伝わるため供給水異常警報はショートサイクリングとも呼ばれる。

濃度センサー

濃度センサー

ダイアライザーに供給する透析液の濃度と温度を測定する。濃度センサーは透析液中に電極を入れ、電圧をかけると濃度に比例し電流が増加する。この電流の変化と電極間の抵抗のブリッジ回路により濃度を測定している。サーミスタ(温度計)は画面表示用(A)と濃度計の温度補償用(B)の2つがある。

流量計と流量調節弁

流量調節弁と流量計

透析液流量を調整するための弁は流量計の近くに設置されている。

出戻口モジュール

出戻口モジュール

ダイアライザーへの出戻口はモジュール化、一体化されています。上図、白丸はポートとなります。構成はダイアライザーへの透析液の供給をバイパスするバイパス弁NO1、NO2、NC3。大気開放弁、透析液圧センサーからなる。大気開放弁はバイパス弁3のout側にあり液圧異常時、バイパススイッチ、停止スイッチが押されたときに一時的にonとなる。大気開放弁out側のキャピラリは開放時の圧のリバウンドを防止している。

移送ポンプ

移送/陰圧循環ポンプはチャンバの新鮮透析液室から使用済み透析液室に透析液を移動させるためのポンプです。透析液圧をつくる。移送ポンプは出力を制御されておらず常に一定の速度で運転している。例えばポンプの送液流量は1600ml/minの時、ダイアライザーの送液ラインが500ml/min、残り1100ml/minは移送ポンプをバイパスしたリリーフ弁ラインを流れている。リリーフ弁の調整は移送ポンプの吐出圧を一定にし、透析液流量の上限を設定することができる。

気泡分離器

気泡分離器

気泡分離器内に気体がたまるとフロートスイッチがon、Air out後にある大気放出弁が連動してオープン、気体と透析液を分離し系外に排出する。フロートスイッチの30秒以上onで密閉異常となる。

バイパスフロースイッチ

個人機のみに取り付けられている。濃度異常などのバイパス時、ダイアライザーへの透析液の供給が停止されているかを監視する。バイパス弁のリーク等あればバイパス異常警報が出る。

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