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「日本を応援したくなるような、勇敢なプレーを見せたい」 古賀 由教

中学校の頃から、言わば二刀流で7人制ラグビー(セブンズ)も続けてきた。そして、その夢の舞台は憧れから現実へと変わった。15人制ラグビーでも結果を残してきた古賀は、いよいよ7人制ラグビーで日本を背負ってパリの大舞台で戦い、その勇敢なプレーで世界を驚かせようとしている。古賀由教選手のこれまでのラグビー人生を辿り、7人制ラグビーの魅力や現在の世界強豪各国情勢なども語ってもらおう。

インタビューは、フランス直前合宿出発前の7月9日に行った。

ラグビーを始めたきっかけ

「4歳の幼稚園生の時に、同じクラスの仲がいい男の子がラグビーをやっていて、その子から誘われて芦屋ラグビースクールというところに行ってみたのがきっかけです。
 
最初はほとんど覚えてないんですけど、すごい嫌だった記憶があります。コーチが怖かったし、ずっと泣いてました。ラグビー自体も怖かったですし。
 
おそらくトライか何か嬉しい出来事一回あって、それでまだ続けようって思ったんだと思います」

古賀が進んだ中学にはラグビー部が無かったので、4歳から中学を卒業するまで芦屋ラグビースクールに通っていた。

「学校では帰宅部だったんですけど。月曜日は藤田慶和さん(日本代表キャップ31。現在三重ホンダヒート所属)のお父さんがやってた藤田塾というラグビー塾に通ってましたし、火曜日は芦屋ラグビースクールに行って、木曜日は平尾さん(平尾誠二氏)の始めたSCIXラグビークラブっていう神戸製鋼の灘浜グラウンドでできるラグビークラブに行っていたので、平日も暇していたわけでは無く、ずっとラグビーができていたかなと思います。
 
思い出としては、小学4年生くらいの時まではずっと活躍できて、ラグビー自体楽しくできていたんですけど、そこからちょっと太りすぎてて走れなくなってしまって、父と毎朝ランニングするようになりました。
 
最初は自分から始めると言ったんですけど、起きたくなくてサボった日もありました。父はそんな僕に厳しいことを言う訳でも無く、自分一人だけでも走りに行っていました。そういう父を見て、いやいやだけど走るのが1年続いて、やっとスクールで試合に出れるようになりました。そこからまたラグビーが楽しくなったのかなあと思います。そうやってだんだんのめり込んでいきました」

小学校時代はスクール対抗の県大会があったが、毎年2回戦ぐらいで負けていた。6年生の時には、全国の小学5、6年生が参加するヒーローズカップという大会で全国優勝。6年生の時は中学受験のため勉強中心の生活をしていたが、受験が終わって2月〜3月にヒーローズカップがあったので、やっとラグビーに戻ることができたのだ。

セブンズユースアカデミーに選出され、東福岡高校へ進学

高校は東福岡高校に進んだが、古賀はニュージーランドに留学するつもりでいた。ただ中学卒業前にセブンズユースアカデミー(日本ラグビー協会が行なっているジュニアの才能発掘、育成プログラム)が三ヶ月に一回ぐらいの間隔で行なっているキャンプのメンバーに選ばれて、セブンズラグビーを教わりその魅力に嵌ってしまった。アカデミーでセブンズをずっとやり続けたいという思いが強くなり、日本に残ることにした。
 
「スクールでやっていた12人制ラグビーもセブンズも両方面白かったんですけど、その時ちょうどセブンズがリオ2016大会からオリンピック種目に復帰することが決まって、強化の動きがありました。
 
その時からオリンピックには出たいと思っていました。
 
セブンズユースアカデミーに呼んでもらうためには、とりあえず日本にいることが一番かなと思って。日本の高校で頑張っていたら呼んでくださるかなと思って、日本に残ることを決めました」

東福岡高校は、一回練習に行った時からすごくかっこ良かった印象があったと云う。東福岡高校では、15人制ラグビーを3年生までやりながら、3ヶ月に一回ぐらいセブンズユースアカデミーのキャンプにもずっと参加していた。
 
高校時代は、アシックスカップ(全国高等学校7人制ラグビー大会)があったので、セブンズの大会も1年間に1回は出場していた。
 
15人制とセブンズを両立する感覚は特に無かったと云う。セブンスは一回のキャンプが3日間だけだから、3日間集中してセブンスをやって、終わったら15人制に戻るという感覚だった。
 
「東福岡のラグビーに関しては、魅力ある攻撃をやっていて面白かったなって今でも思います。1年生の時は15人制ではメンバーに入れず、出場できたのは、セブンズの大会だけでした。2年生の時はベスト4で、3年生になると試合で負けることも無く花園でも優勝しました」

「1年生の時は、先輩方がもうすごかったです。全てにおいて先輩方がすごかったって思います。それまでスクールでやってきたラグビーとは、レベルの差がだいぶあったと思います。ただ部内マッチで、あの時の全国優勝のメンバーとずっと試合練習ができていたのはすごい面白かったなあと思います」
 
高校時代は、15人制も7人制も日本代表に選ばれた。15人制では、アイルランドに遠征してアイルランド代表やアイルランドのクラブチームと試合をした。古賀自身のパフォーマンスも良かったので、その後すぐU20代表にも選出された。こうして高校生の時から、世界トップレベルの選手たちとも戦ってきた。

早稲田大学に進学

「早稲田は、小さい頃から憧れていました。幼馴染の子と小さい頃から一緒に早稲田に行こうって話していたので、自然と早稲田を目指していたというのがあります。その子は東大に入っちゃたんですけど(笑)」
 
「早稲田の4年間は、しんどかったかな。あんまり覚えてなくて、4年間がなんかあっという間に終わったような気がしました。あの当時、僕たちの頃はそれこそ帝京が強かったです。もちろん負けたらダメというのはあったんですけど、そんな昔みたいにプレッシャーがあったわけではないと思います」
 
3、4年の時にヘッドコーチだった武川(武川正敏。現ブラックラムズ東京アカデミーヘッドコーチ)と出会えたのが大きかったと語る。
 
「今まで出会った中で一番すごいコーチだなって思ってます。戦術だったりももちろんそうですけど、学生の気持ちをわかっていたなってすごい思います」

そして、リコーブラックラムズ入団

武川からの勧めももちろんあったが、古賀には元々リコーブラックラムズに行きたい気持ちがあった。それと、最初に声をかけてくれた採用担当の小浜和己との出会いが大きかったと言う。

「他の人と比べるのもあれですけど、一番最初から何か僕に合った接し方をしてくれて、初っ端からお酒飲みに行きましたし、すごい自由なフラットな感じで、今もご飯とか連れて行ってくださるんですけど。なんか熱くブラックラムズの良さも伝えてくれました。そのほか全然関係ないプライベートのところまで色々気を使ってくださるっていうのがすごい魅力でした。

リコーブラックラムズは、かっこいいなってちっちゃい頃から思っていました。もちろん元々地元の神戸ファンだったんですけど。だけど地元に帰る予定もなかったし、東京のチームで一番いいと思ってたのはリコーでした。でも決めたのは本当に浜さんがいたからです。リコーに決めたのは、全部人と人との繋がりみたいなものです」

2022年4月9日 リーグワン第12節 静岡BR戦 先発デビュー

4月にリコー入社後、5月までリーグワン2021-22シーズンが続いていた。そこで自分の実力不足を実感していた。ラグビーナレッジもフィジカルも全然ついていけてなかった。リーグワンシーズン終了後すぐにセブンズに行き、6月にACL(前十字靭帯)を切ってしまった。初めての大怪我で、どうなってしまうんだろうかという不安が大きかった。

結局復帰まで1年近くリハビリ生活を送り、翌年4月9日のリーグワン12節 vs静岡ブルーレヴズ戦が復帰試合であり公式戦先発デビューとなった。久々のラグビーだったので緊張よりもワクワク感の方が大きかった。

そしてリーグワン2021-22シーズンが終わると、セブンズの方に重点を移して行った。

セブンズ大会の魅力について

「セブンズの大会は、お祭りだと思っていただけたら一番いいかなって思います。観客席で何してもいいんです。お酒を飲んでもいいですし、仮装して踊ってもいいですし、歌を歌ってもいいですし。その中で真ん中でラグビーをしていて、自分の応援しているチームが活躍したら大きな歓声と拍手で称えて、それ以外は自分の好きなようにできるというのが魅力なのかなと思っています」
 
セブンスの大会では、一つのチームが1日に2ゲームか3ゲーム試合を行う。3日間の大会だったら1日2ゲーム、2日間の大会だったら1日3ゲーム。
 
「ざっくり言えば、大きなグラウンドでやる壮大な鬼ごっこだと思ってもらえればいいかなと思います。14分間で終わるタックルがある鬼ごっこみたいなものですね。お客さんもパッと見て勝ってパッと終わるっていうのは、すごい魅力なのかなと思います。
 
時間は短いんですけどグラウンドの広さは15人制と一緒なんで、しんどさでいったら結構大変です」

パリ大会での日本代表の見どころ

「まだ今の僕たちもどっちかっていうと見えないところにいるので、世界を驚かそうと思って頑張っている最中なんです。どう変われるか分からないんですけど。でもやっぱり15人制と違って、下位のチームが上のチームを喰うことが時たま起こるっていうのは面白いと思います。去年もカナダがニュージーランドを倒したりとかあったので、何が起こるか分からないのもセブンズなのかなって」
 
「14分しかないので、一回崩れると立て直しができなくなることはありますね。もちろん僕たちも最初崩されたりすると、一気に点数自体がすごく離れてしまいますので。キックオフが取れなくなると、きついですね。例えば僕たちすごい体の小さなチームなので、工夫してキックオフも取らなきゃいけないんですけど、それが全く取れなくなってくると厳しい展開になってしまいます。
 
キックオフを取るっていうのは、スタートの大切なところになります。それがやっぱり体の大きなチームになると。そこにもうピシャリと合わせてキャッチして、キックキャッチトライ、キックキャッチトライ、みたいになることもあるので」
 
皆さん、セブンズの試合を見る時には、まずキックオフが取れているかどうかに注目してください!

「あとセブンズの面白さとしては、世界のステップ切れる人たちのプレーは面白いと思います。日本でもキャプテンの石田吉平だったり、松本純弥だったり、すごいステップが切れる選手が多くいます。日本代表にも面白いメンバーがいるので、日本のちっちゃい選手が大きな相手を抜き去るシーンは魅力なのかなと思います。
 
日本代表のチームスローガンは、「FAST & BRAVE」です。僕達は早く勇敢にということを掲げています。リスク取らないと勝てないので、リスクを取った戦いをします」
 
パリでの戦いは、なかなか見ることのない強豪ぞろいのグループに入ったが、ジャイアントキリングを期待しよう。
(※プールA:日本、ニュージーランド、アイルランド、南アフリカ)

今の世界セブンズ強豪国勢力情勢

2021-2022シーズンから、総合優勝はオーストラリア→ニュージーランド→アルゼンチンへと入れ替わっている。ただ、フィジーはオリンピックに強い。
アフリカ勢は南アフリカがクオリファイでケニアに負けたので、2チーム出場する。両チームともスタミナがあるし、身体能力が凄い。

ここ2年間合わせての成績ではニュージーランドが一番だったので、日本と初戦で戦うことが決まった。

セブンズラグビー界の勢力図も変わってきているので、面白い順位争いが期待される。

フランス代表アントワーヌ・デュポン選手の凄さ

開催国のフランスにはデュポン(※アントワーヌ・デュポン。15人制、7人制共にフランス代表選手。世界最高のスクラムハーフと言われる)がいる。古賀も、そのパフォーマンスに驚きを隠さない。

「誰に聞いてもあんな選手見たことないって言います。15人制と7人制を本当の意味で征服して、そのまま続けていて、ちょうど2週間前くらい前までトップ14の決勝をやってましたが、でもそのちょっと前までセブンスの大会に出てました。今シーズンがセブンズデビューだったんですけど、ワールドシリーズ7大会中3大会しか出てないのに、全部でドリームセブンに選ばれて、3大会しか出てないのに新人賞も獲って優勝したし。信じられないです。
 
15人制、7人制両方にすぐにアジャストして、何の遜色も無くプレーできます。フィジカルも強いですし、スピードもあります。もちろん元々あるテクニックだったりスキルという部分が飛び抜けていて、本当に魅力のある選手だなと思います」

自分自身と日本代表の目指すもの

「僕自身の見どころとしては、あんまりアタックはしないので、どっちかっていうとディフェンスの方を見ていただけたらと思います。追いつくかわかんないですけど、相手チームの誰かが抜けた後のチェイスバッキングタックルは得意なので。アタックよりもそちらを見ていただけたらいいかなと思います。諦めないところを見ていただけたらいいかなと思います。
 
パリ大会では、もちろんメダルを目指しています。まずはメダルを獲りに行くというのは、みんなで話してることではあります。
 
その中で、あとは8万人のお客さんがびっくりするようなプレー、歓声が湧くようなプレーをすることと、日本のことを応援してくれるような、勇敢なプレーができればなと思います。これに関しては、ラグビーやっている人、やってない人関係なく、少しでも感動と勇気を与えられるようにしたいと思います。
 
会社の方が僕の代わりにずっと仕事してくださっているので、その人たちにはお礼を伝えたいと思います。あとは勇敢なプレーもそうですけど、未来につながる、僕が中学生でセブンスを目指したように、小さい子たちでも、どんなプレーヤーでもセブンズを目指したい、オリンピックを目指したいだったり、世界を目指したいって思えるような子がまた増えるような試合ができたらなと思います」

皆さん、どうぞパリ大会での7人制ラグビー日本代表の試合に注目していただいて、古賀由教選手にも熱い応援を送ってください!

頑張れー、ヨシ!!


 


 

 


 

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