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Blackmagic Creator's Close Up #7 -  上出遼平



プロフィール

1989年東京都生まれ。ディレクター、作家。2011年にテレビ東京に入社し、2017年よりドキュメンタリー番組『ハイパーハードボイルドグルメリポート』シリーズの企画から撮影、編集まで全工程を担う。同シリーズはPodcast、書籍、漫画と多展開。著作に『歩山録(ぶざんろく)』(講談社)、『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』(徳間書店)など。

主な担当作品

『ハイパーハードボイルドグルメリポート』(テレビ東京)
『蓋』(テレビ東京)
『TRAIL』(YouTubeチャンネル「muda」)

YouTubeドキュメンタリー「TRAIL」について

※「TRAIL」はYouTubeチャンネル「muda」内のコンテンツであり、俳優の仲野太賀氏と映像ディレクター、上出遼平氏がアラスカの「Wonder Lake」を目指して4日間で80キロのトレイルロードを歩く様子に密着したドキュメンタリー。同作はBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K Proで撮影され、DaVinci Resolve Studioで編集された。

muda公式HPより引用

アラスカでの忘れられない思い出

本編ではワンダーレイクでウィスキーを飲んで終わっていますが、それからも忘れられない瞬間が続きました。ワンダーレイクの先のカンティシュナという小さな滑走路からセスナに乗って公園の外までまずは出ます。その窓からの景色も素晴らしかった。死ぬような思いをして歩いてきた山々を空から見下ろす気持ちには絵も言われぬものがあります。そして、公園外の小さな空港に降り立つわけですが、街まで送ってくれる手筈になっていた車が全く来ない。ようやく連絡が来たかと思えば、目的地を間違えていたから三時間遅れると言うのです。遅刻の規模がアラスカスケールです。
それで、どうしようかと頭を悩ませていたら、空港の従業員の方が「近くにレストランがあるよ」と教えてくれました。本当は、そこから車で4,5時間走って街まで戻らないと食べ物がないと思っていたんです。言われた場所まで歩いて行くと、山の中に立派なレストランが本当にあるんです。そこで飲んだ地元のビールと、リブアイステーキの味は一生忘れられないと思います。

Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K Proを使用した理由と感想

ー今回の「TRAIL」では全編を通してBlackmagic Pocket Cinema 6K Pro (以下 BMPCC 6K Pro)で撮影されたとのことですが、導入の経緯と使用感を教えてください。

元々BMPCC 6K Proを持っていて、今もほぼそれで撮影をしています。一番使い勝手がいいカメラということに加えて、重量的な面やバッテリーのマネジメント面を考慮して、このカメラを採用しました。山での撮影だったので、12Vで給電できる点やNDフィルターが内蔵されていることはとても助かりました。
見た目は重そうなのですが、持ってみると思ったより軽い印象でした。また、何よりこの大きなティルトスクリーンと直感的に操作できるインターフェースが気に入っています。他のメーカーのものと違って本当に必要なものが明確で、余計なものが無い感じ。必要なことがちゃんと表示されて分かるということがすごくありがたいと思っています。また、起動が早い点も良いですね。僕らみたいな(ドキュメンタリー撮影)スタイルだと起動のスピードがかなり重要で、台本があって取材をしていくことがほとんどないので、ずっとカメラを回し続けるか必要な瞬間に撮るかという二択になるんです。そういった点ではこのルックと起動の早さを実現している点が気に入っています。

「TRAIL」公式YouTubeより引用

BMPCC 6K Proとの出会い

ーBMPCC 6K Proはどのようなきっかけで使い始めたのでしょうか。

ロサンゼルスのサミーズカメラっていうカメラ屋さんで、急遽必要に迫られて去年か一昨年に買ったんですよね。日本の有名なドキュメンタリー番組に取材されている人がロサンゼルスに来ていて、その人とちょうど過ごしていた時に、番組のクルーが何かの事情で来れなくなって。誰か撮れるやついねぇかみたいな話になり、私が撮ることになりました。しかし、私は撮影でLAにいたわけではないのでカメラがなくて、サミーズカメラで70万円くらいでBMPCC 6K Proとレンズを買い揃えました。ちなみにギャラは3万円くらいだったので元を取らなきゃと思って今も使用しています。
DaVinci Resolveでは、BMPCCで収録したBlackmagic RAW素材をそのまま編集できるのが大きなメリットでした。場合によってはプロキシを作成することもありましたが、そのプロセスにもストレスがありません。撮ったRAW素材をそのままシーケンスに放り込んで、イメージしやすいように全てのクリップにまとめて仮の色を乗せ、すぐにストーリーテリングにフォーカスできるのが良いですね。

テレビ東京出身者とYouTube

ー上出さんはテレビ東京のご出身ですが、同局が制作しているYouTubeチャンネルや、同局出身者の方が制作されているYouTubeチャンネルが成功を収めていると思います。彼らに共通することなど何かあるのでしょうか。

あると思いますよ。僕は全然YouTubeやろうとは思ってないんですけど、テレビ東京の人間って基本的に1から10まで自分でやるという教育を受けているんですよ。そもそも社員が他局の3分の1で、予算も3分の1なので、そうすると企画をして雑用から仕上げまでワンオペで全てをやるということを大前提として教えられるので全く分業ではないんですよ。YouTuberなんですよ、よく考えたら。元々やり方として、やってみようって言って編集して出してみるっていう一人完パケ(「完全パッケージ」の略。 作品の映像から音声が全て揃い、編集も終了している完成品の事)できるのは基本テレビ東京の人間だけなんですよ。YouTubeなんていうものが出るより前からそういうことをしているので、時代的にあっていると思います。

コンテンツ制作で大切にしていること

ーコンテンツ制作で大切にしていることを教えてください。

常にオルタナティブを示したいという思いがあらゆる側面であります。みんなが”こうじゃなきゃいけない”と思っている時にそうじゃないことをする。そういう思いが「TRAIL」にもありますし、今後もそうしていきたいですね。

(左)「TRAIL」でカメラを担当された石井邦彦さん、(右)上出遼平さん
弊社東京オフィスにて。

関連情報

Blackmagic Design 公式ウェブサイト