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決済インフラの世界

こんにちは黒描です

今回は決済インフラに関する過去、現在、未来について書いてみたいと思います

昨今、決済というものは多様化し、それぞれ自分にあった決済方法にて支払いを行うというのが世の中の流れです

その中で、日本においては現金決済の比率が圧倒的に高く、いわゆる「キャッシュレス」においては、「後進国」と言わざるを得ない状況です

お金と社会

大昔、狩猟や農耕を行うことで生計を立てていた時代

貨幣というものはなく、主に物々交換で経済は回っていました

しかしながら、当然漁を行っていれば大漁もあり不漁もあります

農業をやっていれば豊作もあれば不作もあります

そんな時に消費できないものについては廃棄せざるを得なかったことから、その物々交換の中間に貝殻等の通貨様のものが発明されます

この発明により、保存の利くもの、新鮮なものの交換はスムーズになり、食料意外との交換もスムーズになったことから、商業、工業などの原型となる職業も徐々に安定して営まれるようになります

似たようなもので「金」や「宝石」などその希少価値から交換の対象物となったものも多く存在し、今では金の現物取引だけでなく、先物取引等様々な価値を生むようになってきています

この発明からしばらくの時間が過ぎ、「貨幣(硬貨)」が生まれ、更には中央政府が価値を補償するという形で「紙幣(お札)」などが発行され流通するようになりました

この時点では「お金」というものには「発行者」と「管理者」がおり、ほとんどの場合はそれを「国」が担うようになり、貨幣の価値を安定させるべく政治や経済が回っていくという仕組みができました

次にこの「お金」が現物のものではなく「電子データ」としての置き換えが始まります

ここではまだ、管理者は「国」または「企業」であり、「楽天Edy」や「nanaco」「suica」などの「電子マネー」と呼ばれる「電子データのお金」で、いわゆるこれまでの現金でその同等の価値の電子データを購入するというものに留まります

そしてこの時、大きな変革がもたらされます

新しいお金

これまでは「現金」のような現物で取引を行った場合は、「店頭でお金を支払う」→「お釣りをもらう」ということが消費経済の基本だったのですが、「電子データの支払い」を行った場合は「ポイント」という現金代替え物が付与されることが「あたりまえ」になってきたのです

ここで注目したいのは、「ポイント」というものの発行元が完全に民間企業にシフトしたということです

これまでは「現金」というものは、日本で言えば国が発行数を管理し、国が発行し、国が管理するというのが普通だったのですが、ある日突然、「現金と同等に利用できる通貨」を「民間事業者」が間接的に発行するということが当たり前になりました

当然、政府はこの当たり前に発行が可能となった「ポイント」という現金代替え物をどうにな政府の規制の元に入れたいと思い、「資金決済法」などの法律の改定を続け、例えば3月末9月末の発行残高の1/2にあたる供託金を供託所に預け入れさせることや、発行の際には財務局への届け出を行わせるといった取り組みを行い、誰でも発行はできるが一定の基準が必要という体制を整えたのです

ここでも分かるように「お金」というものはまさに国の根源に関わる問題であることから歴史においても、「発明」→「規制」というものを繰り返してきたと言えると思います

ポストペイ(後払い)とコスト

さてこの次の段階として、これまでプリペイ(前払い)だったものに加え、「ポストペイ(後払い)」が浸透してきます

いわゆるクレジットカードやローンなどの仕組みです

これが発達することにより、これまで手元にある資金でしか購入できなかったものを先に手に入れることができ、それを使って新たにお金を稼ぐなどといった流れも出来、より経済の発展をもたらすようになりました

しかしながらこの辺から、「お金を使うこと」はたまた「お金を受け取ること」に「見えないコスト」が生まれてくるようになります

例えば「クレジットカード」を利用された店舗が支払う「加盟店手数料」のようなものです

現在、「クレジットカードの加盟店手数料が高いのがキャッシュレスが進まない主な原因だ」という意見が多くみられますが、本当にそうなのでしょうか?

このクレジットカードの手数料、実際はどういう内訳になっているかを考えてみると決して「高い」ものではないのではないか?ということに気が付いてきます

現在政府が要望している加盟店手数料の引き下げ

3.25%程度が妥当と言われています(現在は4~8%程度※契約規模業種によります)

この3.25%分解すると

①顧客へのポイント原資0.5%~1.0%

②顧客からの口座引き落とし手数料100~200円程度

③加盟店への振込手数料100円~300円程度

④請求書の発行費用及び郵送費100円程度

⑤顧客の貸し倒れが起こった場合の償却費用

⑥インフラを管理するためのコスト

とちょっと考えただけで大変なコスト負担が裏に存在するわけです

しかもクレジットカードを「1回払い」で利用した場合は、当然のように「顧客側の手数料は0%」ですし、世の中のクレジットカード決済における「95%程度は1回払い」というかなり厳しい現実もカード会社を苦しめます

そもそもあまり注目されることが少ないのですが、「銀行」というものを介しての「資金移動(振込や引き落とし)」を行った場合は、個人ではもちろん企業においてもほぼ同程度のお金を払っています

更に踏み込んでいくと、銀行の資金移動をする際には「全銀ネット」と呼ばれる回線を介することで、銀行もそこに「手数料(銀行手数料の約半分程度)」を支払っているのです

私が思う、決済のインフラの一番の欠点はここで、そもそも政府はこの回線手数料を国営にするなりなんなりして管理すべきなのではないかと常々感じています

非中央集権的お金

こういった問題を解決すべく、最近話題に(いい意味でも悪い意味でも)なったものが「仮想通貨」になります

仮想通貨の利点は政府管理されていない送金についても企業管理ではなく世界中のパソコンでの再計算により報酬を支払い安価で行えるというものでした

現在2018 11/26の状況ではその非中央集権的な管理は決してうまく行っているとはいえず、ハッシュ(取引)を元に争いが起こり、更には投機商品としてあまりにも酷い値動きをしている状況ですが・・・

さて置き、「決済の普及」において最も重要なものは「インフラコスト(ランニングコスト)が安価である」ということで、これを極限まで抑えることで、どんな収益率の会社や店舗でも受け入れを行えるということになります

そしてこれからはそのコストを抑え、且つ決済スピードが求められ、しかも盗難(ハッキング)にも強い通貨を追及していくことになるでしょう

新しい送金の仕組み

数年前から始まった内外為替一元化コンソーシアムという銀行を含む送金システムの検討会議では、リップル(XRP)という仮想通貨を介在して、国際送金を行うという実験が行われています

これまで銀行間で送金するにあたっても、送金の回線利用料、中間銀行手数料、自社処理費用と複数の組織が関わることで費用が大きくかかり、且つ送金までの日数もかなりかかっていたのですが、別の触媒通貨(トランスファーマネー)を介することで、数秒で送金ができてしまう仕組みがこれです

コスト的にも1/10程度に抑えられることからこういった送金方法が台頭するのは時間の問題ではありますが、当然現在の仕組みがなくなっては困る人たちもいるわけで、それがどう進んでいくかはそこに規制を作っていく政府次第な部分もあるのではと考えられます

個人的には安くて早くて安全ならそれが一番いいとも思いますが、そうはいかないというのが世の中なのです

さて、分かりやすく書いていこうと注意はしていたのですが、少し専門的な話も多く退屈になってしまいました

未来の決済

次は未来の話をしようと思います

有名なことばで「決済は手段であり目的ではない」という言葉があります

これは決済において重要なことはスムーズ且つ確実に決済が行えるということを言っているのですが、私はちょっと考えが違います

現代社会においてもはや「決済」がスムーズ且つ確実にできるということは当たり前になっており、「決済が目的となる世界がやってくる」と思っています

だってそうじゃないですか?

900円の買い物をしたとして、レジ横に「1000円以上購入の方には○○をプレゼント!」って書いていたら100円の商品を手に取ることがありますよね?

手段であればどの決済手段でも良いけど、楽天カードで決済したらポイント10倍!!!って書いていればポイントを目的として楽天カードを選択しますよね?

今はよく考えていないからなんとなくそうなっているものも、コンサル、マーケティングをする立場としてはその「なんとなく」や「どうせ買うならこっちで」というものをいかに自然に刷り込んでいくかがとても重要です

更には、極端な例ではありますが、AKB48みたいなアイドルの握手券みたいに、もはや商品以外が目的となることも頭に入れ、利用者の無意識までにも遡及していく仕組みが必要となってきます

決済…その先へ

では最終的に決済はどうなってしまうのでしょうか

私の考える決済の最終系は「決済をしない」というものです

決済をしないというのは何かというとAmazonGoや無人コンビニのように、事前に登録した口座から商品の代金が自動的に移動するという仕組み

しかも、人間は生きているだけでデータを生成しているので、例えば利用に関するデータを提供するという選択をすればそこにお金が生まれ口座に数値として溜まります

更に、健康に関するデータを提供するという承諾をした場合は、毎日何を食べどの程度の運動、睡眠を行っていたかなどのデータもお金となります

長生きしている人の健康状態のデータは売れるし、反対に病気になった人がどういった原因で病気になったかのデータも病気になりたくない人が欲しがるでしょう

そういったデータが決済データから自動的に蓄積され、そのデータが通貨となり決済に利用されます

当然に現金というものは支払いを行った瞬間に持ち主データがなくなってしまうことから一部のマニア以外からは好まれなくなってきます

全てが電磁的に情報として蓄積されることから、税金の支払いや福祉についても全て自動的に計算され提供されます

きっとこんな未来がやってくるのも時間の問題ではないでしょうか

最後に

今回は長々と決済について書いてみましたが、実は日本においては2020年のオリンピック・パラリンピックに向け数年間で劇的な変化が起こるとこは間違いありません

その激動の決済市場のなかで、様々な決済会社が台頭し、争い、また協力し、そして生き残りをかけてぶつかりあいます

実はこれまで決済というものに関わってきた身としては一つこの争いで勝ち抜く方法を見つけています

これからも多くの決済会社に絡んでいくことが多くあるが、その中でどこかの会社へ提案し、決済の新しい形を作ってみても面白いかなと思っています

ここ数年で激動の時代を迎える「決済市場」

これを読んだあなたは、是非なぜその方法で支払いを行っているかを今一度考えてみてもいいかもしれませんね


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