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超短編小説

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紗枝

紗枝

去年の誕生日にプレゼントしてもらったアナログ時計は、すでに7時58分を指していた。

かじかむ手に「はーっ」と息をかけて擦り合わせつつ、待ち合わせの時間を遠に過ぎても来ない相手を待つ紗枝は、もう1時間近く2月の寒空の下で身体を震わせていた。

出かける前に見た天気予報に騙され、いつも巻いているマフラーを部屋に置いてきてしまい、玄関のドアを開けた瞬間の絶望感と言ったら、もう。

納期厳守の仕事をして

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紗織

紗織

そうか、今日は新月か。

やっと家の周りの雪が溶けたばかりのまだ肌寒いこの時節に、紗織はカラカラと窓を開け、お風呂上がりの熱った体を冷風にさらした。

いつもは、天高く登った三日月や満月がぼんやりと辺りを見回せる程度に照らすのだが、闇夜の今日は月明かりもなく、すぐそこにある庭先から聞こえる、自分の存在を私に教えるかのようにガサガサと葉を揺らしている野良猫の姿もまた、見ることは叶わなかった。

久し

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