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余部橋梁物語 第21話 着工前の苦悩

みなさま、こんばんは本日も更新させていただきます。
よろしければお読みいただき、感想などいただければ幸いです。

> むめは、何度も頷きながら、よかったね、よかったね。と何度も繰り返すのでした。

さて、こちらは国鉄本社。

国鉄本社では、山陰本線餘部駅【停留所】設置に関する件は、本社工事ではなく管理局工事とすることとし、予算とともに福知山管理局に案件は移されることとなりました。これにより、着工に向けて一つ歩を進めることとなりました。

福知山鉄道管理局では、工事の追加として餘部駅設置工事を請け負うこととなりました。

こういった、予算とともに流れてくる工事の場合経費を他に流用できないため、受け取る管理局側としてはあまりうれしくない予算でした。

大雑把なくくりの、需品費とか、物品費などであれば、多少のどんぶり勘定も許されるのですが・・・、今回の経費には、「調査費」として処理することとして、示されていました。

「こまったなぁ、これじゃ他に流用できないよ。」

経理担当の係長が頭を掻きながら、困った困ったとぼやくのでした。

それを聞いていた、経理課長が。

 「それは、私もやまやまだが、仕方がないだろう。もう一度経理局にかけあって、配分を変更できないか頼んでみよう。それより、この件について施設部にこの工事に関する書類等を配布しておいてくれたまえ。」

 お役所の仕事は、根回しが大事、まず施設部と経理部で予算等の確認を行うこととなったのです。

関連する部署は、施設部建築課、保線課との間で調整が行われることとなったのです。

保線が関連するのは、駅工事は、場合によっては線路を支障する可能性があるためで、場合によっては線路の移設を伴うためでした。

結果的には、保線の影響は殆どなく、建築課の仕事が大半だったのですが、この調査で駅の設置が容易ではないことがわかってきたのです。

その一つが、線路の配置でした。

二つの山をつなぐ形で架けられた橋のため、駅を設置すべき場所が殆どないということでした。当然、これは最初からわかっていたことなのですが、現在住民が橋梁を渡るために使う山道の途中に駅を設けざるを得ないであろうと言う結論に達したのです。

しかし、そうなると大型機械を使っての土木工事が不可能と言う話となります。

しかし、工事の間列車を停止して基礎工事をするわけにも行かず、結果工事は長引くが人力のより作業することで基本方針は決定され、線路の支障も最小限で可能と言う結論に達しました。

そうなると、今度は忙しくなってくるのは、施設部建築課の面々です。

具体的な指示は、いまだ本社からは下りてきていませんが、客車列車は停車しないこと、駅員の配置はないこと、行き違い設備は設けないことなどが基本方針として決まっていましたので、ホーム有効長は2両編成の列車が停止できる長さと言うことで、2両半、約50mで計画することになりました。また、駅ホーム中間付近には、雨露をしのげる程度の小さな待合室を設けることとなりました。

駅自体は、費用対効果の観点から、ホームは石積み盛土によるホームで施工されることとなり、工事の青写真も完成。

季節は、すでに師走の声を聞く頃となっていました。

そこで、本格的な工事は春以降に行うこととなり、ひとまずは、青写真とともに金庫に保管されることとなったのです。

さて、このつ続きは明日にでもさせていただきます。

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