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餘部橋梁物語 第23話 朗報は春風に乗って

みなさま、こんばんは。4日も開いてしまい申し訳ありません。

噂は早くに拡散したものの、一向に着工されない駅設置工事に、地元ではもはやあきらめムードが漂っていました。

実際には、工事が困難な冬場を避けてということなんですがそのようなことは地元は知るよしもありませんから・・・さて、さて。この物語はどこに進んでいくのでしょうか?

> 餘部橋梁の工事は、基本的には天気も安定する春以降に持ち越されることとなったのです。
> 餘部駅設置の設計書は、しばし、建築課の金庫で眠ることとなったのです。

日本海の冬は、冷たい風と雪、最近は温暖化の影響か雪もめっきり少なくなったといわれていますが、私の子供のころの記憶では、冬は大人でも膝くらいまで雪に埋まるほど平地でも降っていましたから、三方を山に囲まれて、かう一方を海という状況の餘部の集落では、それは雪と風が強いのは容易に想像できるのではないでしょうか。

それくらい、餘部の橋梁付近に吹く風は強かったのです。

村の人たちにも、餘部に駅ができるのは噂として知っていましたが、一向に始まらない工事に、気の早い人は、あの話はデマだったのではないか。

「こんな小さな集落に駅が出きるはずはない。国鉄はもっと大きな駅とかに力を入れなくてはいけないんだ。」

丸で、自分が国鉄の幹部でもあるかのように、振る舞う人も出てくる始末でした。しかし、国鉄本社も福知山鉄道管理局も忘れていたわけではありません。

餘部の駅を設置するためには、大規模な建設機械を導入できないこと、人力による設置が必要となるため、足場の悪い冬場を避けて3月以降に一気に工事を始めることなどが決定していたのでまったく杞憂ということになるのですが、そんなことは知らされていませんでした。

言い換えれば、それほど地元の期待が大きかったわけです。

そんな、冬の時代が過ぎて、風にも少し暖かさを感じられるようになってきた3月、餘部駅設置の動きがついに本格的に動き出しました。

福知山鉄道管理局では、金庫から設計図が取り出され、さらに詳細に.検討が進められることとなりました。

土地の買収はどうするのか、アプローチ部分はどうなるのか、そして具体的な工事はどうするのかということが検討されていきました。

土地については、山の一部を切り開く必要があることただし、幸いなことに、一部はレールその他の資材置き場として確保した場所が流用できることから、土地の買収はほとんど限定的であることが分かりました。

また、駅へのアプローチ部分は、地域の住民が今まで餘部橋梁を渡るさいに利用してきた山道をそのまま流用できそうなことも分かりました。

そこで、課題は重機を使えない整地をどうするかが問題となりました。

駅を設置するにあたり、仮設的なホームではなく恒久的な施設であることを本社から正式に通達されていますから木製の仮設のホームを作るわけにはいきません。

何度も、重機を入れられないか検討しましたが、どう考えても人力でする方が安く上がります。

「手間はかかるが、人力でいこう。」

「地元の業者を手配するために入札の準備を平行して進めてくれたまえ。」

建築課長は、次々と担当係長に指示を出していきます。

こうして。一つづつ餘部駅設置計画は進められていくのでした。

 そして、こちら餘部の集落では、春の風に少し甘い香りを運びながら、人々はまた巡る春にささやかな幸せを感じていました。

 ふと見上げる餘部橋梁には今日も汽車が走っていきます。

 「噂では、駅が出来ると言っていたが、あの話はどこに行ったんだろうなぁ。」

「やはり、噂は噂で、本当ではなかったんでしょう。」

 「そうだよな、駅が出来ると少し夢を持たせてもらったことを感謝すべきだよね。」

地元では、期待半分、諦め半分のムードが漂っていました。しかし、そんな沈滞したムードも吹き飛ばす知らせがあるルートから知らされたのです。

この続きは、また後ほど書き込みしたいと思います。

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