~変わっていくための1年~ サンフレッチェ広島2022シーズン総括

不安とワクワクとともに

 約4年間広島で戦った城福浩からミヒャエル・スキッベへと指揮官が変わる。以後のチームの下地になったペトロヴィッチ体制、黄金期を築いた森保体制はいずれも長期政権であり、城福体制では選手の過渡期と重なり主力クラスの選手が入れ替わったこともあり毎年異なる色と方針でサッカーをしていたが、成績は中位以上で安定。最後は見切りをつけられたような形で退任してしまったが、コロナ禍とも重なり難しさもある中で4シーズン近く監督業を務めあげた。
 
 要するに、私がサンフレッチェのファンとなって以降、「監督が変わる」ことをあまり経験していないのだ。そこで、長年指揮官として様々なチームでJリーグを戦ってきた城福から、よく知らないドイツ人へと監督交代。しかも、サッカー自体に明確な色がなかった前任者と異なり、「ゲーゲンプレス」をぶち上げ自分のスタイルを確立していそうな現職への変化だ。

 あまりに色が違う指揮官の登場に、選手や既存のスタッフが戸惑わないか。彼らが素直に取り組むことができるか。アグレッシブなプレッシングに明らかに適していないメンバーはどうなるのか。そして、ヨーロッパに比べ高温多湿な夏にもゲームを行い続ける日本という地に適した戦術なのかどうか。

 不安はたくさん。だが、明確なスタイルを持たない城福が指揮官のままでは先に良い景色が見えなかったのも事実。サンフレが持つリソースでJ1に残り続けるというミッションは達成してくれるだろうし、彼の下で若い選手は育ち、外国籍の選手も軒並み戦力にはなった。本当によくやってくれたが、近年シャーレを争う神奈川の2チーム、川崎とマリノスを先頭に著しいスピードでサッカーのレベルが向上しているJ1、そしてそもそもの現代サッカーのレベルアップに城福が十分にキャッチアップできているとは言えなかった。クラブ全体としてよりレベルアップするために、より多くの者を魅了するために、選手の所属先としての価値を向上させるために、指揮官の交代は必要であった。

 だから、当然ワクワクは止まらなかった。やり方がハマらず残留争いに巻き込まれるかもしれないし、そもそも実際にどんなコンセプトを持つフットボーラーなのかもわからなかったが、良い想像なんてどれだけしても何かが減るわけじゃない。特に長期的に見てであるが、チームのより良い未来が生まれる可能性は高くなったように思えた。

 不安とワクワク、懸念と期待。その両方を強く感じる、いつも以上に刺激的なオフシーズンを経て、2022シーズンの戦いは幕を開けた。

魅力的なチームに

 結果は3位。天皇杯は準優勝。そして、ルヴァンカップ初制覇だ。チームに初めてカップ戦タイトルがもたらされた。

 「決勝で勝てない」という、クラブが作り上げ背負う文化を打破したことの意味は計り知れないほど大きい。し、試合数にかなりの違いがあったとはいえ、終盤戦に差しかかる時期に川崎マリノスという2チームに割って入り2位となったことも。後半戦のこの2チームとの直接対決に敗れたことでリーグの優勝争いに本格参戦することはできないままシーズンを終えたが、サンフレの躍進は今季のJ1で最も大きなサプライズであったはずだ。素晴らしい結果を残し、数字上は魅力的なチームへと変貌を遂げた。

 この1年、ほとんどの試合で私は楽しませてもらったし、決して「勝てばよかろう」という方針でチームが作られていたわけではない。だが、内容に関わらず、勝てることがこんなにも楽しいと思うことができた1年にもなった。負けなしを続けて上位に躍り出た5月~6月や上位2チームを追いかけとにかく勝ちまくった夏場は、私のメンタル的な充実度も半端なかった。私生活が比較的多忙な中でJの試合をかなり多く観ることができたのも、サンフレの成績が良好だったことと無関係ではないはずだ。

 内容と関係なく、楽しませてくれた。本当に勝つだけではもちろんダメだけど、やはり勝利を待つサポーターはたくさんいるはずだ。

「チーム作り」プロセスが見える1年

 肝心のサッカーの内容の話。まず最初に、スキッベは戦術家というよりはモチベーターであると私は思う。あらゆる監督が両方の面を持ち合わせているのは当然であるが、戦術として明確なものを持ちそれをぶらさないわけでも、試合前や試合中にはっきりとわかるプランを選手に授け相手の対策をするわけでもない。

 おそらく、戦術的な決め事も他のチームに比べ多くはないはず。その代わり、選手たちの試合中のプレー選択は良くなったように思えるし、選手たちは自信をもって生き生きと、コーチングスタッフを信頼してプレーしているように思えた。シーズン再序盤ではチーム作りとして明確な色を提示し、極端とも思えるやり方を続けていたが、選手が適応してきて以降は多くは授けず、選手たち自身が判断し実行するプロセスを重視したアプローチを続け、それとは別に選手たちのモチベーションを高い位置でキープする。スキッベのこの1年の私たちの目に見えない仕事としてはこのようなものであったはずだ。

 序盤戦は「ゲーゲンプレス」の名に恥じない極端なハイラインハイプレスと、奪ったらゴールに向かい直線的にプレーすることを志向。しかし、プレスを剥がされひっくり返されたシーンが目立った柏戦での敗戦を機にややシフトチェンジし、ハイプレスも保持時の縦への意識も弱化。全部が全部いくのではなく、後ろの状況も見極めながらプレスにトライし、奪った後もボールを保持する意識をより強くし遅攻は増えた。直後に首位の鹿島相手に完勝しその後も結果が伴ったことで、こちらの路線で戦い方は確立された。

全方位的に「戦えるチーム」に

 まずは非保持から。弱まったといってもプレスの意識は強いままで、WBはプレス隊としての役割が大きくなり相手最終ラインにまで出ていく回数はかなり多い。ボランチの選手も人やスペースを捨てて前に出ていくし、プレスラインを越されればプレスバックをきちんと行うこともタスクの一つ。

 極端に高いわけではないがラインも高く保ち、数的同数になることも多い最終ラインでは3人のCBが人を捕まえる。彼らとGKは昨季までに比べより広い範囲をカバーする必要がある。

 押し込まれれば5バック的に振る舞うこともあるが、基本は目の前の選手に出ていくし、引きこもる時間はそこまで長くなかった。そして奪った後には縦に速く早くゴールに向かおうという姿勢が見られ、それがゴールに繋がるシーンも決して少なくなかった。

 保持では、ビルドアップの人同士の距離感は大きな変化だろう。3バックはそれぞれ広い範囲を受け持ち、両サイドのストッパーはかなり幅を取る。WBの位置は決して高くないが、彼らは流れてきたボールをダイレクトに前線に送り込んだり縦方向のアクションでボールを引き出したりすることをメインタスクとしたため、ビルドアップ隊とはまた別。ボランチがサリーして最終ラインに人が増えることも少なくなったので、より前に人数をかけられるようになった。

 比較的早い段階で縦方向のプレーを選択することは多かったが、先に述べた通り遅攻の選択もそれなりの頻度で行い、そうなると相手を押し込むことを選択。ボランチと3バックのパス交換やシャドーの選手の降りる動き、CFへの長いボールで押し込むことができれば、そこからの崩しはサイド中心。人を集めて少ないタッチ数でボールを手放しながら、大外やポケットに動き出して崩しを狙う。

 最終局面ではクロス中心だが、そのクロスの上げ手としても受け手としても多くの人数をかけることが図られた。サイズがある選手はほぼいないシャドーの選手に加え、逆サイドのWBにもフィニッシャーとして振る舞うことが要求され、ボックス内には多くの選手が入ってきた。クロスに限らずではあるが得点数は飛躍的に増加。リーグ3位の数字を記録し、得点を取りきれることは躍進の原動力となった。

 セットプレーについて。左右の良質なキッカー+3バックとCFに高さのある選手が起用されたことで、攻守両面で明確な強みとなったセットプレーで特別なことはやっていない。CFを務める助っ人がニア寄りのストーンとして役割を果たし屈強な3バックがマンマークでバトルする守備では、前線に選手を残すより失点しないことを優先。そして攻撃では、右利きとして満田、左利きとして野津田が主にキッカーを務めた。昨季までの主なキッカー、森島やハイネルに比べてボールの質にムラがないため期待感の持てるシーンは多かった。それと、森島がキッカーではなく中にいたこともセットプレーでは強みとなっただろう。何でもできて「サッカーが上手い」森島は、高さと強さはないが特殊な判断・選択が求められるセットプレー崩れのシーンで二次攻撃を続け、再びチャンスを生み出すことに貢献した。

 全体的な戦い方について。中盤では異常な過密日程下でも頑なにターンオーバーを拒み、その影響が見られた試合も散見されたが、基本は大きくパフォーマンスを落とすことはなかった。運良く少なめの人数で済んだ怪我人についてはこれからの状況も見なければいけないが、ハイプレス戦術を採用しながら短期的には過密日程を乗り切ったことの要因として、アウトオブプレーの時間の使い方があるだろう。クイックリスタートのシーンも目立ったが、逆にクイックを選択しない時にはゆっくりと時間を使ってプレーを再開。おそらくシーズン通して指示があったのだろう。だから、見た目の印象以上に休めているし、走行距離は実際大したものではない。また、ビルドアップで可変を行わないことも疲労軽減には繋がっているはず。セレッソや浦和は終盤に入るとビルドアップの精度が露骨に低下することもあり、ボールを持っている方が楽とはよく言うが、それでも走るのだからキツイものはキツイのだとわかる。

 あとは、後半の得点が多いほか交代選手が多く得点を取り、取りきれないまま試合を終えることが極端に少なくなった。正直ここに明確な理由を見出すことはできない。なぜか得点が取れるのだ。省エネ的にサッカーをできていることも理由の一つかもしれないし、メンタル的な部分も要因になっているかもしれない。

個人依存が強いチーム

 次に、それぞれのポジションに要求され選手がこなしたタスクについて。春は新卒選手とレンタルバックの選手以外の補強0だったが外国人選手がシーズン中に2名加入。入れ替わった選手の数自体は大したものではないし、主に採用されたシステムも前年までと変化はなかったが、それぞれのポジションにおけるタスクには小さくない変化が生じ、それに応じる形で主力メンバーも昨季とはかなり入れ替わった。

 まず、大半の試合で大迫が務めたGK。ラインが上がりその裏をカバーする仕事が増えたほか、ビルドアップ時の3バックの距離感が広がったことでそこに加わるシーンが増え、ゴールキックを大きく蹴らずにリスタートする回数の増加もあって繋ぎの部分での貢献も今までより大きいものが求められるように。大迫にとっては(少なくともJ1では)相対的に得意なタスクが増え、セービングなど他のところでも成長ぶりを見せたこともあり代えが効かない存在となった。

 続いて、主に荒木が務めたCBの中央。ハイラインの裏のカバーを怠らないほかハイプレス時には人を捕まえる、ロングボールのターゲットとのエアバトルといったタスクのほかに、ビルドアップに強く関わるシーンも今季は増えた。といっても可変はほぼしない3枚の中央ということもあり、運び出しや縦パスをつける選択を行うというよりは、近くの選手や両サイドCBに適切な質のパスをつける仕事がメイン。徐々に改善されつつあるとはいえ、荒木が運び出し、球出しを苦手としていることもこのタスクには影響を与えてそう。よりボールを運べて積極的にくさびを打ち込む住吉が入るとまた違った仕事をこなしていたため、ここは選手の特性に応じて変わってきそう。人選含めて来季の注目ポイントの一つだ。

 序盤には野上も務めたが、5月以降は佐々木と塩谷というJ屈指のクオリティを備える2人が君臨する両サイドCB。ハイラインを維持し3枚+GKで背後を適切に管理する、プレスがハマれば人を捕まえ自由にプレーさせないといった非保持時のタスクは中央と同じだが、保持時の役割は大きく異なる。ボランチの選手があまり降りてこない分、ビルドアップ時にボールを出す役割はこのポジションのメインタスクに。幅を取り、相手を見てのドリブルでの持ち出しやや近くの選手にパスをつけた後に裏に抜けたり並行ポジションを取ったりしてまたボールを受けようとする佐々木と、積極的に背後のスペースやCFの選手への中長距離のボールを提供する塩谷は、チームとしての前進のキーマンとして活躍。その他押し込んだ時には高い位置を取り、WBやシャドーの選手たちと連携してクロスorフィニッシュに絡むプレーも求められ、高水準でこなしていた。

 ここはかなり2人のクオリティに依存したタスクと言える。3バックというシステムではこの3人はある程度はCB的に振る舞うことが求められ、相手のアタッカーに対峙するだけの身体的・技術的スキルが必要である。そこをクリアした上でこれほど保持時の貢献度が高い選手はなかなかいない。例えば札幌は中盤が本職のボールタッチやキックの質が高い選手を3バックに配置することが多い。高嶺や田中、宮澤らはビルドアップで多大な貢献を見せ札幌のアタッキングなフットボールに欠かせない人材であるが、一方3バックを務めるDFとして相手のスピードあるアタッカーと対峙する、ボックス内で守備を行うといった状況では脆さを見せることが少なくない。Jレベルではトレードオフになりがちな2種類の能力を高水準で備える佐々木と塩谷は能力的にというよりタスク的に代えが効かず、2人ともベテランと言える年齢を迎えていることもあり目を背けるべきではない現実と言えよう。

 ボランチには、1アンカー採用時には野津田、ドイスボランチでは野津田+松本や川村が主に起用された。昨季までよりボランチのプレーエリアは前進したはず。ハイプレス要員の一人として高い位置まで出ていき人を捕まえる、プレスから逃げられた時やネガトラ時に広い範囲をカバーし攻撃の芽を摘むといった守備のタスクの重要度は高い。一方ビルドアップの時にはボランチを使った前進をチームとしてそこまで重要視しておらず、両サイドのCBやシャドーの2人のスキルで前進できていたこともありボランチの選手のこの部分での貢献はあまり求められなかった。その代わりというべきか、押し込んだ時にサイドでも中央でも前線に顔を出しフィニッシュに直接絡む仕事はしっかりこなすことが求められた。この部分で違いを見せた川村が終盤戦に重宝された理由もよくわかる。

 右は前半戦に藤井、後半戦には茶島や野上、左は東や柏が主に務めたWBは選手のキャラクターによってタスクも微妙に異なった。プレスの際には時に最前線まで出ていき相手を捕まえる、もしくはプレッシャーをかけ、撤退時には大外のレーンの最終ライン的な役割を担うという非保持の際のタスクはおおむね共通のもの。ビルドアップの際にはやや低い位置でボールを受け主に短いパスと動き出しで前進に寄与する東や茶島、野上、低い位置からダイレクトに前線へと送り込むパスで局面の打開を図る柏、裏への動き出してボールを呼び込む藤井といったように保持時には各選手の強みに応じた「使われ方」をしていたように映った。押し込んだ時にはクロッサーとなるだけでなく、逆サイドからのクロスを合わせるフィニッシャーとしての役割もきちんとこなすことが要求され、この部分はシーズンが進むにつれより顕著に。東の手術の影響もあるとはいえメンバーが固定されなかったことや、前半戦のキーマンであったにもかかわらずある時期を境にパタリと出番がなくなった藤井を見ても、様々なことが要求され様々な判断・スキルが必要であるポジションだとわかるだろう。

 シャドーは森島と満田というスーパーな2人の能力に依存したタスク。ビルドアップ時には降りたり縦に動き出して相手を伸ばしたりしながら間や裏でボールを受けて前進に寄与、サイドの人数をかけての崩しに関わりクロスのフィニッシャーとしての役割もこなし、中央の崩しではCFと関わりながらフィニッシュの機を伺う。非保持ではハイプレス隊として主に相手CBへのプレッシャーを担当し、プレスがかわされた時のプレスバック、空くことが多いボランチ脇のスペースのカバー、さらにボールを奪い返した時にはすぐにボールを受けてカウンター発動のキーマンとして振る舞うなど、多岐に渡るタスクをこの2人は難なくこなし続けチームを支えた。いろいろやりつつゴール数ではチームトップ2に名を連ねる2人の貢献度が突出しているのは言うまでもなく、ここも能力の高低というよりタスク的に個人依存が強いポジション。まだまだ若い彼らにはステップアップというCBの2人とは別の可能性があり、ここをどうするかも今後の課題となり得る。

 最後にCF。夏にチームを離れた永井やサントスが務めた序盤、ベンカリファとヴィエイラがポジションを奪い合った夏以降、終盤存在感を示したソティリウと、ここでも多くの選手が出番を得た。長いボールのターゲット、クロスのフィニッシャーといった基本的なタスクのほか、動き回ってボールを引き出したりシャドーやWBのためのスペースを提供したり、時にサイドにまで出ていき崩しにかかわったりと比較的広範囲でのプレーが目立った。非保持ではプレス隊を当然務めたが、機動力でシャドーやWBに劣る選手が多いことからGKへのプレッシャーやアンカーポジションの選手を消すことなど「そこにいる」ことが大事なタスクの方が比重が大きかった。その他セットプレーの守備では貴重な高さ要員としてストーンを務め、崩れからの二次攻撃含めここでも大きな存在感を示してくれた。

 基本的にはこのような感じ。1アンカー2トップというオプションシステムも持ちながら戦ったが、夏以降は1トップ2ボランチからスタートのシステムをほとんど変更しなくなった。サントスの移籍やアンカーの人選の問題、松本や川村の台頭、2シャドーの疲労といったところが理由として考えられるが、レンタル組を頭数に加えるとFWがどう考えても飽和しており、彼らを活かすためにも2人のストライカーを起用するシステムにはこれからもチャレンジしていきたいところだ。

ピッチ上での課題

1個人依存的なタスク

 何度も書いている通り。前述の通り、おそらくチームに決め事は少なくそもそも選手のキャラクター依存でやり方を決めているという部分もなくはないだろうが、それでも根幹の部分を選手個人に依存していることは、当該選手の不在時のダメージを大きくしてしまう。全ての試合を同じメンバーで戦うことは不可能で、今季はどのコンペティションでも選手を固定気味に戦いそれが上手くいったが、主力選手の疲労を考えてもチーム全体の成長を考えてもこのやり方を何年も続けるわけにはいかない。依存できる個人に依存することも大切だが、タスクの再現性を高める作業も必須だろう。

2勢いで何とかするプレスと人依存のビルドアップ

 どちらもやり方を決めるのではなく、「やりゃ何とかなるでしょ!」で試合に入ってる感が強い。要するに、体系化されていないのだ。プレスがハマらずどうしようもない試合ではどうしようもなく、そこからのプランも特にないためやり方を変えることもできずただ劣勢を強いられるという試合はいくつもあった。ホームマリノス戦やアウェイサガン戦のように相手に合わせてやり方を決めて試合に入ったこともあり、それで実際ある程度の成果を出しているのだから、誰が誰に、どこまで出ていくか、誰がどこに立ってどこまで相手を引っ張るか、誰に誰を見させるかなど、体系化・組織化する、決めるところを決めて試合に入ることも求められるだろう。サンフレが「こういうチーム」とわかって相手が試合に臨む来季、ここでも再現性の高さは求められるだろう。

3中央のリスクマネジメント

 動き回ってプレーすることで持ち味を出せる選手がボランチに多いことで、ボランチが本来管理すべき真ん中のリスクマネジメントはかなりなおざりになっている。荒木は機動力に欠け動き回る系のCFを自由にさせる傾向があり、このスペースをより上手く使われる原因の一つに。個人的には3バックがより前に出てリスク管理をすることが望ましいと思うが、その他にもアンカー的な選手を一人置きリスク管理させる、逆サイドのWBやSH、SBがボランチ的な予防的ポジショニングを取るなどやり方は色々あるはず。失点にまで至らずとも、一度のボールロストで毎回30mも後退させられていたらやってられない。ネガトラでの一次的・二次的対応の質を高めるための作業も行いたいところだ。

ピッチ外も成長、チームとして

 「現場」と呼ばれる選手とコーチングスタッフ、その他選手に直接かかわるスタッフ以外、言うなれば「ピッチ外」の貢献度も今季は高かった。特に印象的なのはINSIDE。試合直前から終了後までの選手やコーチングスタッフに密着する形での映像が毎試合YouTubeで公開され、恒例化した試合後の円陣含めファン・サポーターが一体として戦っていることを実感できる機会がもたらされた。その他グッズ制作なども例年以上に積極的に行われ、SNS等でのアナウンスもしっかりなされるようになったと思う。ホーム戦の平均観客動員数はギリギリのところで1万人という大台を突破、J1全体で見れば下位に位置する現実とは向き合わねばならないが、それでも昨季の状況やそもそものアクセスなどの問題を加味すれば十分に誇れる結果だろう。

 現場を支えるだけでなく、ともに戦うチームとして。メインのスポンサーが変わったFC東京は今季、ピッチ外で様々なチャレンジを行いチームの変革を印象付けた。数試合行われた国立ホームゲームはその一つで、派手な演出や地道な努力が5万人という観客数で実を結んだ。ピッチでの結果とこのようなピッチ外の努力は相乗効果を生み、ともにさらなる大きな結果を生み出すことになるはずだ。サポーターの振る舞い方含め、他チームのものも参考にしながら一体となってみんなで戦うチームを作ってほしい、作りたいところだ。

おわりに

 課題が見えつつも、監督就任1年目としては上出来すぎる今シーズン。しかし、この1年を次につなげなければ、ただ1年頑張ったサプライズチームだ。それで終わらせるにはあまりに惜しい、それだけのリソースが今のサンフレッチェにはあると思う。とりあえず来季はスキッベと戦うことが決まったが、もちろん彼がこれから先ずっと監督を務めるわけではない。スキッベはいなくなっても、今いる選手が誰もいなくなっても続いていくはずのこれから先のチームのために、変わっていくための転機としてこの1年が語られることはポジティブに作用するはずだ。この1年で得られたものも十分に精査し、来季以降の方針を適切に定め、明確な目標とコンセプトの下でとりあえず来季を戦いたい。

 非常に長すぎる文章となってしまいました!これだけ書くことがあるのは幸せなのですが!読んでいただきありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?