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タニタ

~タニタの不健康な“お家騒動” 正反対の主張で争う、現社長と父・兄弟~

タニタは、1923年(大正12年)創業の大手計測器メーカーだ。もともとはOEMで金属加工を手掛けていたが、92年に世界初の「乗るだけで計測できる体脂肪計」と、94年に同じく世界初となる「家庭用体脂肪計付ヘルスメーター」を発売して以降、自社ブランドを確立した。現在は料理秤、タイマー、活動量計、歩数計、医療施設向け体組成計・体脂肪計などを製造・販売している。

2010年に発売した社食レシピ本「体脂肪計タニタの社員食堂」が累計485万部超のベストセラーとなり、レストラン「タニタ食堂」が全国各地にオープンするなど、「健康づくり」をサポートする企業としてイメージが向上。12年には日本マーケティング協会選出「第4回日本マーケティング大賞」を受賞している。

現社長と、父・兄・弟の間でお家騒動

同社はグループ社員数約1200人、連結売上高192億円(21年3月期)の大企業だが、株式は非上場で、株の約8割を谷田家と関係者で分け合って保有するファミリー企業である。

社長は代々谷田家が継いでおり、現社長の谷田千里氏は先代社長谷田大輔氏の次男だ。

現在、社長の千里氏と、千里氏が社長に就任した後の3年間に立て続いて退社した父・大輔氏、兄・富士氏、弟・昭吾氏との間でお家騒動が起きている。21年10月には週刊文春の報道もあった本件について、今回筆者が独自の取材を実施した。すると、タニタ側(=現社長・千里氏)の主張と、トラブルにより退社した兄の富士氏や内部告発者の主張には今もなお大きな乖離があることが判明した。

創業家のお家騒動 何が起きたのか?

千里氏の父・大輔氏は、08年の千里氏の社長就任と同時に同社の会長に退いたが、2年後にタニタを退社している。

理由は経営方針の転換によるものだ。千里氏が社長就任後、投資分野から資金を引上げたり、株を処理したり、「コスト低減による利益確保」という経営方針を転換したりと、大輔氏時代のやり方をことごとく否定するような行動をとった結果によるものといわれている。

同年には、タニタで新規事業開発などを担当していた弟の昭吾氏も退職。こちらも千里氏との関係悪化が理由といわれており、退職後に昭吾氏が独自に手掛けている研修・教育・出版事業においても、「タニタの名前を使うな」と千里氏から圧力が加えられたという。

そして長兄の富士氏は、タニタ子会社の社長としてフィットネス事業を手掛けていたが、千里氏より出勤停止処分が下り、千里氏の社長就任から3年後に退社している。

富士氏の処分の理由は、「富士氏の事業において、教育訓練のために労働局から助成金を約700万円受給していたが、実は訓練が行われていなかったことが発覚。結果的にタニタ社が助成金を全額返金することになった」というものだ。

この件について、あらためて富士氏に確認すると「計画段階では千里氏の同意のもとで進めていた話。労働局からは、スケジュール通りにいかなければ計画変更、書類の差し替えでOKとの見解があったが、不正受給で解任され、会社は知らなかったことにされてしまった」と振り返る。

その後、会社側は富士氏に対して損害賠償請求の訴訟を起こしている。

パワハラは「業績が下がってきたので、ピリッとさせるため」

社内からは千里氏のパワハラについても複数の被害者から声が上がっている。21年10月の週刊文春の記事では

「気に入らないことがあれば怒鳴り、椅子を蹴り上げる」
「社長はささいなことで怒る。日々罵声が飛ぶためストレスを感じ、全身蕁麻疹になったことも」
「トイレに行っていて、社長の電話に出られなかっただけで『なんで出ないんだ!』と叱責された」

といった証言が紹介されている。

また、前社長時代から20年以上同社に勤める古参社員に対しても、雇用形態を地域限定社員へと変更させてボーナスを減らしたり、海外拠点に赴任していた社員に対して「子会社の現地法人に就職するか、辞めるか。帰国しても本社に部署はない」と退職に追い込んだりするなどの被害が報告されている。

このうち、いくつかの事案では、労働委員会が不当労働行為救済申立て事件として調査を開始している。

この問題について週刊文春が千里氏に直接取材した際、千里氏は堂々とパワハラ加害を認めており、

「業績が下がってきたので、ピリッとさせるため、部長や取締役レベルの方には厳しく言いました。行動変容を期待して、自分は語気を荒らげたり、そういう手法は使います」
「基本的に(パワハラを)やめるつもりはありません。自分はそこそこ頭が回るので、何も言わずに首を切ることができます。それも、愛情をもって接した上でやっている」

と断言していた。

タニタへの事実確認の結果は

本件についてタニタ側に事実確認したところ、弟・昭吾氏の退職後の事業に対する圧力疑惑については

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