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白、黄色、青、そして赤

社会人になってからよく海に行くようになった。

未熟者ながら働き、そしてお金をいただくことができる。本当にありがたいことだなと常々思う。また、その中で生活に必要な分、未来のための貯金分を除いた分が自由に使うことのできるお金。自分を甘やかすためのお金になる。そのお金で大学生の頃よりもできることの幅が増えた。気に入ったお皿を買うこともできるし、ご褒美で美味しいチョコを買うこともできる。そして、行きたい場所にも行くことができる。

海に旅行に行くようになった。といってもやることは大抵一緒だ。ぼーっと眺めたり、浜辺を散歩したり、夕日を見たり、朝日を浴びたり。だから飽き性の私は出かける前に

「また海かあ。」

と少しマンネリ気分になったりもする。しかし、海についてしまうと海の持つ大きな引力にやられてしまいずっと眺めたくなってしまう。キラキラと光る水面。どこまでも続く水平線。時に激しく、時に優しくうねる波。その全部に私の頭の奥の方、脳みその奥の方がヤられてしまうのだ。

目が離せない。ずっと見ていたい。包まれる。暖かい。怖い。

携帯もいじらずにただ眺める。贅沢な時間。私は観察をする。太陽からの光を受けて乱反射する海の表面。その色はとても不思議だ。

白、黄色、青、そして赤の点がいくつもいくつも瞬いているように見える。

その光景を脳に刻み込もうと必死にその現象を分析する。中学で習った光の3原色、可視光線、プリズム、なぜ空は青いのか。確か印象派の画家のジョルジュ・スーラの点描画は黄色と赤と青でできていたっけなど。自分が持て得る限りの知識を使って目の前に広がっている光景を説明しようとした。そうすればいつでも私は思い出すことができると思って脳みそをフル回転させ、記録にも残そうとiPad のお絵かきアプリも立ち上げ必死にスケッチする。

描いて、消して、描いて、また消して、描いて。。。

少しずつ近づいていけるように、感動を残すことができるようにペンシルを走らせるが、理想とするものには近づいているような、遠のいているような不安を感じながらスケッチをしていく。

「これでいい。」

なんて確証もないまま、小さな決心をしては、挫折、また決心して出発したかと思えば後戻り。なんとか形になるように色を重ねていくがこれで本当にいいのかと頭が問いかけてくる。形にならないよりマシだろうと妥協する自分も出てくる。私はそんな自分があまり好きではない。少しでもそんな自分に抗おうと試行する。

描いて、消して、描いて、また消して、描いて。。。

そうしても理想と現実を埋めるスピードは秒速0.001mmくらいなんじゃないかってくらい遅い。いつか自分が描きたいものを描けるのだろうかと思いながらも空腹を感じて今回のスケッチはおしまい。

腹が減っては戦はできぬ。

また妥協の自分が出てきてしまった。でも秒速0.001mmでも進んで行けたらいつかたどりつける日が来るのではと自分を慰める。いつか、スーラのように生き生きとした光を描いたように、この光景を感動をのせて描くことができるのかな。イタリアに行きたいって目標も叶えることができるのかな。とりあえず今日はおやすみなさい。


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