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フライトまでの待ち時間って緊張具合えげつない

 人間は「待つ」という行為をどこまで許容できるのでしょうか、僕は最近ディズニーにいった時に3時間ほど並びましたが、それは勿論一緒にいる人と喋りもするし、パーク側も飽きさせない工夫をしてくれています。そして、何より「だいたいこの時間になったら、アトラクションに乗れるだろうな」という検討も付いています。もっと厳密に「一人で」「途方もなく」僕は「待つ」という行為をした記憶がございません。
 少し前には『水曜日のダウンタウン』の企画で『「待て」と言われたら、さすがに人なら犬よりも長時間待てる説』の検証でオードリーの春日さんが6時間39分もロケバスの中で待ち続けるという狂気にも似た記録を打ち立てました。一人でほぼ何もする事がなく、1秒1秒自分の中に刻み込まれるように、待つ。普段何気なく過ごしている時間が「待つ」という行為になるだけで、苦痛となって襲ってくる。考えてみるとゾッとしてしまいます。
 そんな「待つ」ということに重きを置いた映画が『ターミナル』。この映画ですが、
 
 主人公ビクター・ナボルスキー氏は亡くなった父親との約束を果たすべく、ニューヨークへと旅立つが、出発した直後母国であるクラコウジアでクーデターが発生し、パスポートが無効化されビザも消滅。アメリカへ入国するために亡命・難民申請をすることもできず、かといって母国へ帰るわけにも行かない。そして、空港内での生活が始まる。というようなあらすじになっています。

 2004年に監督スティーブン・スピルバーグ、主演トム・ハンクスで公開された映画ですが、いつの時代になっても色褪せないであろう「粋」な演出がところどころに施されているために、いつ誰が見ようと楽しめる素敵な作品であると思っています。
 
 まず、主人公ビクター・ナボルスキーがとても魅力的。ビクターは初め、その置かれてる状況から、空港で働く職員の人たちに邪険な対応をされていたのですが、持ち前の真面目で、情に厚く、愛想のいい。しかし、不器用という誰からも愛される性格から、物語中盤である事件をビクターが解決するのですが、それをきっかけに職員たちもどんどん心を開いていき、空港内がどんどん変化していくという、一種成り上がり的なストーリーは見ていてとても爽快です。いい作品は、いい主人公から。そんな言葉をまさに体現する作品です。そんな言葉といっても、僕が今考えたのですが。百万回は使い古されていそうです。
 
 また、物語のオチの部分では、今まで空港内でビクターが続けてきた「待つ」という行為を、全て昇華してくれる出来事が起こるのですが、それも「待つ」ことなのです。「待つ」事を「待つ事」によって昇華させる。作品内でテーマとされていた事が、最終的には二面性を持ち、「待つ」事の奥深さを笑顔と共に感じさせられる。そんな作品となっています。
 
 この映画は、完全なフィクションという訳ではなく、イラン人の男性が16年間もフランスのシャルル・ド・ゴール空港で生活をしていたという事実を元に作られたそうです。皆さんはもし空港にずっと暮らさなければならなくなったら、どこの空港がいいですか? 僕は、絶対新千歳空港ですね。食べ物美味しいし、映画館もあるし、温泉まで完備されているという徹底ぶり。ビクターなんかトイレでシャワーしてましたからね。ここなら確実に暮らせますね。完全に勝ちです。ありがとうございました。

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