サンタの正体

 クリスマスの朝。起きると枕元にプレゼントが置いてある。不思議さも相まって、毎年狂喜乱舞していたのを思い出す。
 毎回その時が嬉しい気持ちのピーク。プレゼントを開けると、「あぁ……」と一気に嬉しさがしぼんでいた。
 プレゼントの中身は、キャラクターの筆箱、図鑑、偉人の伝記(一応漫画)などだった。必ず勉強と紐づいているのが、テンションの下がる要因だ。
「なぜサンタはオモチャをくれない」
 私は悩んだ。
 自分では抱えきれないので、父や母にも相談をした。
「なぜサンタさんはオモチャをくれないの?」
「良い子にしていればもらえるわよ」
 両親の答えは毎年これだ。
 納得がいかなかった。宿題はきちんとやっていたし、お手伝いも言われたら素直にやっていた。"良い子"の定義とは何なのだ。

 小学3年生になった。
「今年は絶対オモチャが欲しい!」と母に訴えたところ、サンタに手紙を書いてあげると約束してくれた。
 その日から毎日、「手紙送った?」と母に確認をした。
「まだ」
「送っておく」
「ちゃんと覚えている。忘れず送るから」
「……」
「送るって言ってるでしょうが!!!」
 最後、母ブチギレ。
 私は絶望した。完全に"良い子"から逸脱した行為を取ってしまった。母は当然手紙で報告をするだろう。「途中まで良かったのですが、先ほど良い子を逸脱しました」と。
 私は部屋で泣いた。

 しかし奇跡は起こる。
 その年のプレゼントは、なんとオモチャだった! クリスマスプレゼントで初めてのオモチャ! 飛び上がるほど私は嬉しがった。
 どういうオモチャかと言うと、その名も「宇宙ゴマ」(※実際は「地球ゴマ」と言うらしい。オモチャの名前が「宇宙ゴマ」だった)。

 ジャイロ効果の原理を応用した科学玩具。

 通常の独楽は、全体が回転しているため、回転を止めずに本体に触ることが難しい。だが地球ゴマは回転する円盤部分と軸が分かれているため、軸を傾けたり、綱渡りをさせたりなどが容易にできるようになっている。────Wikipedia引用

 よく分からないコマに、少しテンションが下がった。

 何故か父が、そのオモチャについて異様に詳しかった。私が遊んでいる横で、嬉しげにコマの説明をしてくれた。

 翌年のクリスマス、サンタは来なかった
「サンタさん来なかったぁぁあぁあぁぁぁ!」
 と駆け足で1階に降りて行ったら、母が「……き、今日だったっけ? そっか、来なかったの……。何でだろうね。サンタさん、忘れていたのかもね。明日来るんじゃない?」と言っていた。
 母の言った通り、1日遅れでプレゼントが来た。
 ここで私はサンタを疑うようになった。

 信じる心を失くしたせいか、小学5年生になるとサンタは完全に来なくなり、プレゼントは親が買ってくれるシステムとなった。希望を伝えやすくはなったものの、希望通りの物を買ってもらえないのはサンタの時と同じだった。

 その年の年末、従兄弟のセイジ兄ちゃんがウチに泊まりに来た。セイジ兄ちゃんは当時二十歳くらい。滋賀から埼玉まで、旅行がてら遊びに来たのだと言う。
 2、3日泊まり、セイジ兄ちゃんは大晦日に帰っていった。
 夜寝ようとすると、自分のベッドの枕の下に何かある。
 取り出してみると、何とエロ漫画雑誌だった。
(ふぉぉおおぉぉぉおぉぉぉぉぉ!)
 私は夢中で読んだ。
 そして翌年も、セイジ兄ちゃんが帰った後、同じように枕の下にエロ漫画雑誌が隠されていた。

 私は分かった。
 サンタの正体、たぶんセイジ兄ちゃん。

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